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映画『1917 命をかけた伝令』ネタバレ感想:死の匂いが感じられそうなほどの臨場感

映画『1917 命をかけた伝令』

Amazonプライムで配信されていた映画『1917 命をかけた伝令』を鑑賞しました。配信が始まった時から見たいな~と思ってたのですが、Netflixのドラマばかり見てたら先延ばしになってました。
この映画はなんと全編ワンカットに見えるように撮影されています。本当にワンカットで撮影されたわけではなく、ワンカットに見えるように繋いでいるのです。ところが私、普段映画を視聴する時にカットを全く気にしておらず、ワンカット風だという事前情報も入れておらず、その上度々一時停止して他のことをしたりしたために全くそのことに気づきませんでした。わりと事前情報なしで見ることが多いのですが、その度にこういうことを見逃しています。すみません…。なので、ワンカット風手法については何も感想がございませんので、ご了承下さい。

本作品は第77回ゴールデングローブ賞においてドラマ部門の作品賞と監督賞の2冠、第92回アカデミー賞において撮影賞、視覚効果賞、録音賞の3冠を獲得しています。

あらすじ

1917年4月6日の西部戦線。相対しているドイツ軍が後退したのは罠であることに気づいたイギリス陸軍のエリンモア将軍は、若き兵士であるトム・ブレイクとウィリアム・スコフィールドの2人を呼び出す。2人には、後退したドイツ軍を追って明朝突撃する予定のデヴォンシャー連隊のマッケンジー大佐に作戦中止の伝令を届ける任務が言い渡される。D連隊にはトムの兄もいた。1600人の命を救うため、2人は死地へと踏み入れる。

作品情報&予告動画

原題1917
監督サム・メンデス
脚本サム・メンデス
クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
音楽トーマス・ニューマン
撮影ロジャー・ディーキンス
編集リー・スミス
出演者ジョージ・マッケイ
ディーン=チャールズ・チャップマン
マーク・ストロング
アンドリュー・スコット
リチャード・マッデン
コリン・ファース
ベネディクト・カンバーバッチ

登場人物&キャスト

ウィリアム・スコフィールド

第一次世界大戦最大の会戦であるソンムの戦いを生き残りメダルをもらった若き上等兵。演じているのはジョージ・マッケイ。

トム・ブレイク

ウィリアムの友人で、同じく若き上等兵。ドイツ軍に突撃予定であるD連隊に兄が所属しています。演じているのはディーン=チャールズ・チャップマン。

スミス大尉

ウィリアムが道中で出会うC連隊の将校。演じているのはマーク・ストロング。

レスリー中尉

Y連隊所属の中尉。塹壕で前線を指揮しています。上層部の指令に反発的ですが、ウィリアム達が敵地へ渡る道筋を教えてくれます。演じているのはアンドリュー・スコット。

ジョセフ・ブレイク中尉

トムの兄でD連隊所属。演じているのはリチャード・マッデン。

エリンモア将軍

ウィリアム達に作戦中止の伝令を任じた将軍。演じているのはコリン・ファース。

マッケンジー大佐

D連隊所属の大佐。戦略的退却と知らずにドイツ軍を追い、攻撃を仕掛ける予定です。演じているのはベネディクト・カンバーバッチ。

ネタバレ感想

単純明快でわかりやすいストーリー

本映画のストーリーは、2人の若者が上官の命令を遠く離れた違う部隊に伝達する、という非常に単純明快なものです。それ以外に余計なことは関係してきません。戦争映画好きなんですけども、知識が乏しいので、難しくて何が起きてるのか理解できないことがあるのですが、この映画はそういうことが一切ありませんでした!小難しい作戦とか策略とかもありません。清々しいほどわかりやすくて良かったです。それと、キャスト欄に早々たる英国俳優さんの名前がありますが、多くの皆さん登場シーンは非常に短いです。主役の伝令兵以外、ほとんどクローズアップされないのです。戦争映画って、皆同じ軍服着てるし血や土で顔が汚れてたりして登場人物の顔の見分けがつかないことが往々にしてあるじゃないですか。この映画に関してはそんな心配は無用です。これが非常に快適でした。顔と名前の一致に手間取ってる間にストーリーがわからなくなるなんてこともありません。

スポットライトが当たるキャラクターが極めて少数であるためわかりやすいのは良かったですが、ゲースロファンとしてはリチャード・マッデンの出番がもっとほしかったですね。マッデンとディーン=チャールズ・チャップマンが兄弟役ってのには笑みが零れました。ロブとトメンが兄弟~!そしてマッデンのwikiにある写真、この映画と同じ年の写真のはずなのに別人に見えるんですけど(撮影はもっと前だろうけど)!これ本当にご本人?か、貫禄~!

過酷な戦地の臨場感がすごい

作戦中止の伝令をD連隊に届けるため、トムとウィリアムは自軍の前線からたった2人きりで出発し、敵地へと渡ることになります。空撮で敵陣を確認したエリンモア将軍からドイツ軍は戦略的退却をしているので攻撃はないと言われていますが、ウィリアム達にとっては真偽不明ですし、罠かもしれないし、援護もなしに敵地に渡るなんて正気の沙汰じゃないですよね。両陣営の塹壕の間にある鉄条網だらけの無人地帯を抜ける時の緊張感は凄まじかったです。もしもドイツ兵が残ってて見つかりでもしたら…って考えちゃう。兄を救いたいっていう目的があるトムが勇むのはわかりますけれど、上層部からのただの命令でしかないウィリアムがこの危険な任務に消極的になるのはもっともです。しかもウィリアムは、任務内容を知らなかったトムにたまたま選ばれただけですからね。

無人地帯には回収されていない死体がごろごろ転がっていて本当に地獄。人間だけじゃなくて、馬の死体とかもあるんです。ウィリアムが鉄条網で傷つけた掌を腐乱した死体の穴にぐちゃって突っ込んでしまうシーンがありましたが、気持ち悪いし感染症になっちゃいそうで恐ろしいです。土壁の中から白骨化しかけてる顔が飛び出してるのも怖かった。無人地帯のシーンは本当に死臭が漂ってきそうなほどのリアルな臨場感がありました。作り物の映像を見てるだけでいかに戦争が狂気であるかがわかります。

速き旅人は常に独り

任務を言い渡された時、ウィリアムはエリンモア将軍に「自分たちだけですか?」と尋ねます。その時に将軍から「”地獄または天国へ、速き旅人は常に独り(英:Down to Gehenna or up to the Throne, He travels the fastest who travels alone.)”」という台詞が返ってきます。これはイギリスの小説家・詩人であるラドヤード・キップリングの『The Story of the Gadsbys』という短編集からの引用です。人数が多くなれば多くなる程動きが遅くなるということを言わんとしてるのはわかりますが、2人で旅立とうとしてるのにこれ言われるのすごい不吉ですね…。そして嫌な言葉通り、ドイツの塹壕を抜けた先にあった廃屋で、墜落した戦闘機から助けたドイツ兵に刺されてトムは死んでしまいました。炎に包まれた敵兵を助けて、そいつに殺されてしまったのです。優しすぎたことが仇に!!私が「トムは何て優しい子なんだ…井戸の水きったな!」なんて思ってる間に刺されちゃいました…。失血するにつれてみるみる顔から血の気がなくなっていく様がリアルで、命が消えていくのを止められない無力感がありましたね。兵士として、トムの行動は軽率だったのでしょう。助けてくれた相手だろうと命を奪うのが戦争なんです。義理も倫理も通用しない。そうは言っても許せないし納得もできませんよね。ただでさえ困難な任務なのに独りになってしまったウィリアムですが、友の死を嘆く時間も弔う時間もなく、戦場での別れの無情さが辛かったです。

この映画、トムとウィリアムが木の下で休んでいるシーンから始まるんですが、最後はウィリアムが木の下に腰を下ろして目を閉じるシーンで終わるんですよね。最初と最後でウィリアムは似たような場所にいるのですが、その傍らにトムがいないのです。悲しい対比ですね。たった一日で、生死が分かれた2人なのです。

『1917』で描かれている戦争の背景

この映画の内容はフィクションです。ですが、背景となっている戦況は事実に基づいています。第一次世界大戦中、ドイツはベルギーを通過してフランスへの侵攻を行っていました。この、ドイツと英仏連合軍が対峙した戦線を西部戦線と言います。ドイツは短期決戦でフランスを攻め落とす予定でしたが、1914年9月に起きたマルヌの戦いで両軍は膠着状態に入り、長期間に渡る塹壕戦となりました。ウィリアムがメダルをもらったというソンムの戦いは1916年7月1日から11月19日まで展開された戦いで、英仏軍がドイツ軍に大攻勢をしかけたのです。ドイツはなんとか後退を最小限に抑えましたが、両軍とも被害は甚大で、合計で100万人以上の死者がでました。ちなみに、この戦いで初めて戦車が投入されたそうです。ドイツはソンムの戦いの後、連合軍より人的資源が劣る中でも防御がし易いように、ヒンデンブルク線と称される要塞群の建設を行います。そして、1917年2月9日から、ドイツ軍はヒンデンブルク線までの戦略的撤退を開始しました。このヒンデンブルク線までの戦略的撤退のことをアルベリッヒ作戦といいます。そしてこの撤退は、1917年4月5日に完了したのです。映画は後退が完了した翌日の4月6日から始まってるのです。ぶっちゃけ、この映画は背景となってる歴史的事実を知らなくても特に鑑賞に支障はない程わかりやすいですが、知っているとより細かい点に目が向けれるかもしれません。

また、ストーリーはフィクションですが、サム・メンデス監督の祖父であるアルフレッド・H・メンデスから聞いたエピソードを用いているとのことです。アルフレッド・H・メンデスは上等兵としてイギリス軍に従軍しており、伝令を務めていたそうです。

最後に

狂気に満ちた戦場に身を置いたら、自分だったら一体どうなってしまうんだろう。たった一人の仲間も失って、こんなにも孤独な任務を全うできるでしょうか。ウィリアムの精神状態はどうなっていたんでしょうね。最後、塹壕からひとり上がって走り始めたのはもう正気とは思えません。今にも切れそうな細い一本の糸でギリギリ保たれていたのでは、と感じました。フランスの町で女性と赤ちゃんに出会った時、もうここにいようって、私なら動けなくなってしまいそう。ウィリアムが前に進めたのは使命感からだったのか、それともトムのことが原動力だったのか。

フィクションにこんなこと言っても仕方ありませんが、将軍や上官は任務の説明が早いし一回きりしか言ってくれないし、メモとかもないし、私だったらすぐ「どこへ行くんだっけ?何が目印だっけ?」ってなりそう(笑)。しかも、見知らぬ土地でGoogleマップもなく目的地に辿り着けれる気がしません!