『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン1全10話ネタバレ感想:ドラゴンの一族・ターガリエン家の衰退を描く物語の始まり
私の最も好きな海外ドラマである『ゲーム・オブ・スローンズ』のスピンオフ作品がドラマ化される話が出て以来ずっと楽しみに待っていましたが、七王国を支配していた頃のターガリエン家に焦点を当てた『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が遂に放送されました。『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作小説である『氷と炎の歌』より約200年前の出来事を描いた『双竜の舞踏』というお話がベースになっています。ちなみに私は原作小説は履修してません。
一話ずつ記事を書こうか放送後にまとめて記事を書こうか悩んだのですが、長らく体調が優れず毎週記事をアップすることが困難だと感じたため、まとめる形にしました。記事書くのはとても遅くなりましたが、ちゃんと放送は毎週楽しみましたよ(笑)。ただ、正直なところ、まだ『ゲーム・オブ・スローンズ(以下ゲースロ)』並みの熱量は持ててません。推しと言えるキャラが今のところいないんですよね。2話でOP曲が流れた時はゲースロを追っていた時の興奮を思い出してゾクゾクしましたけど!
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あらすじ
舞台はエイゴン1世の征服から100年後、そして、狂王エイリスの娘デナーリス・ターガリエンの誕生より約170年前のウェスタロス。ターガリエン王朝の最盛期を築いた老王ジェヘアリーズの後継者を選ぶため、ハレンホールで大評議会が開かれた。最終的には王の最年長の孫であるレイニス・ターガリエンと、彼女の従弟で最年長の男子であるヴィセーリス・ターガリエンで検討がなされ、男子であるヴィセーリスが選ばれた。ヴィセーリス1世の即位から9年、ヴィセーリスの娘レイニラ・ターガリエンは、男子の誕生を望む父や、子を産むことが王土に仕えることだと説く母に反発していた。
予告動画
登場人物&キャスト
以下、S1のネタバレしていきますのでご注意ください。ゲースロのネタバレも含まれます。
ゲースロも人物把握で相当苦戦しましたが、今作もやはり大変ですね。同じ名前多すぎ問題が起きてるし、似た名前も多すぎ問題まで起きてます。そういう文化なんでしょうけど、同じ名前つけすぎ(笑)。ヴィセーリスとかジョフリーとか聞くとどうしてもゲースロのキャラと紐づいちゃうし、レーナ、レーナー、レイナとか全部一緒では?って大混乱ですよ。その上、幼少期と成年期があるため大半の子供たちの顔は途中で変わってしまって名前と顔が一致しません。難易度高いです。登場人物が多いので、公式サイトのを基に相関図を用意しました。拡大しても見にくくてすみません。シーズン2でさらに人が増えたらもう入りきらない…。あと、レーナとレーナーの位置をミスりましたね。レーナーは兄だと思ってたら弟でした。
レイニラ・ターガリエン
ヴィセーリス1世国王とエイマ・アリンの娘。ターガリエンは伝統的に男子に王位を継がせてきましたが、父から王位継承者に指名されました。奔放ですが意志の強いお姫様で、家父長的な価値観や制度に利用されることを嫌悪しています。レーナー・ヴェラリオンと互いの自由を認めることを前提に結婚し、ジェセアリーズ、ルケアリーズ、ジョフリーの3人を産みますが、実際は彼らは愛人だったハーウィン・ストロングとの落とし子になります。継承権をより強固にするため、レーナーと別れて叔父であるデイモン・ターガリエンと結婚。デイモンとの間にエイゴン、ヴィセーリス、ヴィセーニアを産みますが、ヴィセーニアは死産となりました。騎乗するドラゴンはシアラックス。幼少期を演じているのはミリー・オールコック、成年期を演じているのはエマ・ダーシー。
ヴィセーリス・ターガリエン1世
第5代七王国国王で、先王ジェヘアリーズの孫。世継ぎとなる息子の誕生を願うあまり妻エイマをも死なせてしまい、横暴な弟デイモンではなく娘のレイニラを後継者に指名しました。後に娘の親友であったアリセント・ハイタワーと再婚し、エイゴン2世、ヘレイナ、エイモンド、デイロンをもうけます。男児を授かった後も後継者はレイニラであることを譲りませんでした。エイゴン征服王が乗った”黒い恐怖”ことバレリオンに騎乗していましたが、死亡しています。演じているのはパディ・コンシダイン。
デイモン・ターガリエン
ヴィセーリスの弟で王都の守り人(シティ・ウォッチ)の指揮官。武芸に優れるが野心が強く、残虐性を見せる問題児。ヴィセーリスも彼の扱いに手を焼いています。レイア・ロイスと結婚していましたが子はなく、邪魔な存在だったために殺害します。その後、レーナ・ヴェラリオンと再婚し、ベイラとレイナをもうけました。レーナの死後に姪であるレイニラと再々婚。エイゴン征服王の姉であり妻であるヴィセーニアが振るったヴァリリア鋼の剣”ダーク・シスター/暗黒の姉妹”を所有しています。騎乗するドラゴンはカラクセス。演じているのはマット・スミス。なぜか時々ウッチャンに見えて仕方なかったです…。私だけでしょうか。
アリセント・ハイタワー
ヴィセーリスの2番目の妻で、レイニラとは幼馴染。家や家族に忠実で、王の手である父オットー・ハイタワーの期待に応えてヴィセーリスと結婚しますが、そのせいでレイニラとの友情は壊れてしまいました。2人の悪化した関係は、彼女たちの子供たちにも波及してしまっています。ヴィセーリスが死の間際に零したうわ言を誤解して長男エイゴンが王位継承者に指名されたと思い込み、エイゴンを支持する翠装派と共に強引にエイゴンの即位式を執り行いました。初めは立場や役割のために色々と我慢していましたが、レイニラと対立が深まるにつれ、抑えていた感情や野心を表すようになります。幼少期を演じているのはエミリー・キャリー、成年期を演じているのはオリヴィア・クック。
オットー・ハイタワー
アリセントの父で、王の手。野心家。妻を亡くしたヴィセーリスにアリセントを近づけ、結婚させることに成功しました。2人の間にエイゴンが誕生してからは、レイニラではなく孫であるエイゴンの即位を企みます。ヴィセーリスの信頼を失って一度王の手を解任されますが、後に復帰。兄のホーバートはハイタワー家の当主でオールド・タウンの領主。演じているのはリス・エヴァンス。
レイニス・ターガリエン
ジェヘアリーズの最年長の孫でヴィセーリスの従姉。ヴィセーリスと後継者の座を争いましたが、女性であることを理由に支持されず、”戴冠せざりし女王”と呼ばれています。夫はコアリーズ・ヴェラリオンで、レーナ、レーナーという2人の子供がいます。騎乗するドラゴンはメレイズ。演じているのはイヴ・ベスト。
コアリーズ・ヴェラリオン
ターガリエン家同様に古代ヴァリリアの血を引くヴェラリオン家の当主で、ドラゴンストーンの西にあるドリフトマークという島の領主。”潮の主”或いは”海蛇”とも呼ばれています。世界最大の海軍を有しており、ウェスタロス一裕福な男です。レイニスが戴冠できなかったことを長年不服に思っていました。息子レーナーとレイニラの子供たちが本当はレーナーの子ではないことを承知の上で、ヴェラリオンの姓を有するジェセアリーズがいずれ即位することを願っています。ヴィセーリスとは度々意見を異にしていますが、忠誠心は無くしていません。演じているのはスティーヴ・トゥーサント。
ヴェイモンド・ヴェラリオン
コアリーズの弟で海軍指揮官。兄とは違い、ドリフトマークの後継者であるルケアリーズにヴェラリオンの血が流れていないことを不満に思っており、落とし子であると侮辱したことで反逆と見做されデイモンに処刑されました。演じているのはウィル・ジョンソン。
レーナ・ヴェラリオン
レイニスとコアリーズの長女で、デイモン・ターガリエンの妻。ベイラとレイナという2人の娘がいます。ヴァーガーに騎竜していましたが、3人目の出産時に自らヴァーガーの炎に焼かれ死亡しました。幼少期を演じているのはサバンナ・ステイン、成年期を演じているのはナンナ・ブロンデル。
レーナー・ヴェラリオン
レイニスとコアリーズの長男、レーナの弟で、レイニラ・ターガリエンの夫。同性愛者です。レイニラと夫婦としての営みはありません。ジェセアリーズ、ルケアリーズ、ジョフリーは本当の息子ではありませんが、父親の役割を担っています。レイニラとジェセアリーズの王位継承権をより強固にするため、レイニラがデイモンと再婚することを認め、代わりにレーナーは死を偽装して愛人とウェスタロスから逃亡しました。騎乗するドラゴンはシースモーク。幼少期を演じているのはテオ・ネイト、成年期を演じているのはジョン・マクミラン。
ジェセアリーズ・ヴェラリオン
レイニラとレーナーの長男。通称ジェイス。従姉妹のベイラ・ターガリエンと婚約しています。レイニラが女王となれば王位継承順位一位となり、ジェセアリーズが即位する際には母の姓であるターガリエンを継ぐ約束となっています。騎乗するドラゴンはヴァーマックス。幼少期を演じているのはレオ・ハート、成年期を演じているのはハリー・コレット。
ルケアリーズ・ヴェラリオン
レイニラとレーナーの次男。通称ルーク。従姉妹のレイナ・ターガリエンと婚約しています。ドリフトマークの後継者ですが、落とし子疑惑をかけられています。祖父ヴィセーリスが死去し、翠装派がエイゴン・ターガリエン2世を即位させたため、同盟を求めた母レイニラの使者としてバラシオン家のストームズエンドに赴いたところ、エイモンド・ターガリエンが騎乗したドラゴンに殺されてしまいました。騎乗するドラゴンはアラックス。幼少期を演じているのはハーヴェイ・サドラー、成年期を演じているのはエリオット・グリホールト。
エイゴン・ターガリエン2世
ヴィセーリスとアリセントの長男で、レイニラの異母弟。酒や女遊びに溺れており、王位を巡る争いにも無関心でしたが、母アリセントや祖父オットーの画策により、父の死後に即位しました。妹のヘレイナと近親婚をしていて、ジェヘアリーズとジェヘイラという子がいます。蚤の溜まり場には落とし子もいます。騎乗するドラゴンはサンファイア。幼少期を演じているのはタイ・テナント、成年期を演じているのはトム・グリン=カーニー。
ヘレイナ・ターガリエン
ヴィセーリスとアリセントの長女、エイゴンの妹であり、妻。不思議ちゃんで予言めいたことをよく言います。騎乗するドラゴンはドリームファイア。幼少期を演じているのはイヴィー・アレン、成年期を演じているのはフィア・サバン。
エイモンド・ターガリエン
ヴィセーリスとアリセントの次男で、エイゴンとヘレイナの弟。兄よりも野心的で、血の気の多い残忍な戦士です。レーナ・ヴェラリオンの竜だったヴァーガーを、彼女の死後に横取りして騎乗しています。幼少期にジェセアリーズとルケアリーズと揉めて左目を失って以来彼らとは確執があり、バラシオン家に結婚の申し出を行った帰りに、使者として来ていたルケアリーズを手違いで殺してしまいました。幼少期を演じているのはレオ・アシュトン、成年期を演じているのはユアン・ミッチェル。
ライオネル・ストロング
ハレンホールの領主で小評議会の法相。オットーが失脚した際には王の手に任命されました。息子のハーウィンがレイニラと不貞関係にあったことの責任を取って辞職を申し出ましたが、ヴィセーリスが引き止めました。私欲ではなく名誉や王土の利を重んじたアドバイスができる人間です。次男ラリスの謀略により、ハーウィン共々ハレンホールで焼死しました。演じているのはギャビン・スポーク。
ハーウィン・ストロング
ライオネルの長男で、”骨砕き”の異名を持つ七王国最強の騎士。表向きはジェセアリーズ、ルケアリーズ、ジョフリーの3人はレイニラとレーナーの息子だとされていますが、実際はレイニラとハーウィンの子で、世間もそのことには気づいていて落とし子の噂が絶えません。シティ・ウォッチの指揮官でしたがレイニラとの関係を疑われたことで解任され、ハレンホールに退いたところで父と共に焼死しました。演じているのはライアン・コア。
ラリス・ストロング
ライオネルの次男で、ハーウィンの弟。足が不自由。狡猾で無慈悲な男ですが、ひ弱そうな見かけのおかげで彼の本性に気付いている人はあまりいません。情報収集能力に長けていることを活かしてアリセントに近づき、彼女の相談役となります。情報と引き換えにアリセントから性的な見返りを得て自慰するような変態。アリセントの望みを叶えるため、父と兄を火事に見せかけて殺害しました。演じているのはマシュー・ニーダム。
クリストン・コール
ブラックヘイブン領主ドンダリオン家の家宰を務めるコール家の息子で、レイニラに登用された王の楯(キングズ・ガード)の騎士。ドーン人。戦いに優れ、槍試合でデイモンを負かす程の腕前です。少女期のレイニラと愛人関係になりましたが、彼女に結婚の意志がないと知るや態度が急変。レイニラとレーナーの結婚式で騒ぎを起こし、やけくそで自害しようとしたところをアリセントに制止されました。以来、アリセントの守護者となります。エイゴン2世が即位した際、王の楯総帥に任命されました。演じているのはファビアン・フランケル。
ハロルド・ウェスタリング
王の楯の騎士。ヴィセーリスとレイニラに忠誠を誓っており、ライアム・レッドワインの死後に総帥に任命されました。翠の評議会ではヴィセーリスとレイニラへの忠義を貫き、オットーの命に背きました。演じているのはグレアム・マクタヴィッシュ。
アリック・カーギル
王の楯の優れた剣士。エリックとは双子。エイゴン2世を支持する翠装派。演じているのはルーク・ティッテンソー。
エリック・カーギル
王の楯の優れた剣士。アリックとは双子。エイゴン2世の王としての資質に疑問に感じ、黒装派に転向。王都を離れてレイニラに忠誠を誓いました。演じているのはエリオット・ティッテンソー。
ネタバレ感想
物語の背景
今作は、ゲースロで描かれた玉座を巡る抗争より約200年前のターガリエン家の物語になります。
ターガリエン家の先祖は、ウェスタロスより狭い海を挟んだ東側の大陸・エッソスで栄えた古代ヴァリリアの出身になります。そして、ドラゴンと心を通わせ騎竜することができる一族です。また、炎耐性があったり予知夢のようなものを見る不思議な力も有しています。
彼らの故郷である古代ヴァリリアは高い文明と軍事力を有していましたが<破滅>によって滅び去り、<破滅>から逃れたターガリエン家はウェスタロス沖のドラゴンストーンへと移住しました。その後、エイゴン・ターガリエン1世が、妻であり姉妹でもあるヴィセーニアとレイニスと共に、三頭のドラゴンと軍を率いてウェスタロスを征服し、七王国を支配するようになったわけです。
そして、エイゴンの征服から100年後に、このドラマが描くターガリエン家のゴタゴタが起こるわけですね。ゲースロの時代にはドラゴンは既に絶滅したとされていたわけですが、その200年前に当たる今作ではターガリエンは多くのドラゴンを有していて、最盛を誇っていました。そして、ターガリエンはドラゴンの血を保つために近親婚を繰り返し、王位は年長の男子優先で継承させてきました。
ですが、権力には争いがつきもの。第1話開始時にあったように、ターガリエンは王位継承を巡る身内同士の争いでその力を失っていくことになるのでしょう。
そしてもちろん、ターガリエン家の他にも数多くの家が物語には登場し、ゲースロで慣れ親しんだ名家も各々の思惑の元ガッツリ絡んできます。バラシオンとかラニスターとか、ゲースロファンにはお馴染みですね。スタークも名前は出てきましたけど、今後登場するのでしょうか。
しかし、ハウス・オブ・ザ・ドラゴンのターガリエンと最も密接な関係を築いている家は、ゲースロには登場しなかったヴェラリオンという家になります。ヴェラリオン家はターガリエン家と同じく古代ヴァリリアの血を引く古き名家で、両家はエイゴン1世がウェスタロスを征服する前から婚姻を繰り返していたほど関係が深いです。ヴェラリオンはドラゴンライダーではありませんが、強力な艦隊を擁して海を支配している一族です。
ヴェラリオン家が黒人なのはポリコレかという気持ちにはなりますが、おかげで多少人物把握が楽です。ターガリエンもヴェラリオンも色白金髪だったらいよいよ混乱していたことでしょう。ただ一方で、アジア系を疎外された白々しさを感じてしまうのと、昔からヴェラリオンと結婚してるんだから、ターガリエンの肌色も黒が多くなってるのでは?という気がしてしまいます。エイゴン征服王(とその姉妹)の母親もヴェラリオンの人間ですよ。ゲースロではバラシオン家は必ず黒髪だとされていますし、人種というか家の特徴が強く確実に遺伝するような世界ですから、なんかちょっと疑問に思ってしまいました。まあ、ファンタジーですし、すごく気になって受け入れられないとかいうことではないですが。
家父長制の下で戦い、争う女たち
ゲースロも男尊女卑な世界観でしたが、今作は一層それが強烈になっていますね。正直見ていて食傷気味になるぐらい、女は大変だ!酷い目に遭っている!軽んじられている!のオンパレードでした。特に出産のシーンが怖かった。貴族の女性は世継ぎを産むことが役目とされるので、出産シーンが何度か出てくるんですよね。医学が発達していない頃の出産はほんと命がけだったんでしょうけど、その命がけっぷりの描写がえげつないので、昔の女性は凄いなぁという畏敬の念とともに何とも言えないゾッとするような気持ちを覚えました。
そんな世界でヴィセーリス・ターガリエン1世の娘であるレイニラ・ターガリエン王女は、男尊女卑や家父長制の呪いに藻掻いてるんですよね。伯従母であるレイニス・ターガリエンが女性であることを理由に王位を継げず、父は世継ぎに男児を望み続け、母には「あなたもすぐに国のために子を産む」と言われるのです。父に有力貴族との縁談を勝手に組まされることにも強く反抗し、力を得るための道具のように扱われることに激怒していました。まー、嫌ですわな。レイニラは、ゲースロのアリアと重なる部分があると思います。アリアもネッドに「貴族と結婚して子を産むんだ」みたいなことを言われ、「そんなの私じゃない」というようなことを言ってましたもんね。
アリセント・ハイタワーもまた、家父長制の下で戦う女性の一人です。レイニラとは親友でしたが、ヴィセーリスと再婚したことで疎遠になりました。レイニラからすれば、親友だった子が何十歳も年の離れた自分の父親と結婚したのですから、今まで通り仲良くとはいかないでしょう。ヴィセーリスがレーナとの結婚を選んでいれば、このドロドロ劇も起きなかったかもしれませんね。ヴィセーリスとレーナとではより一層の犯罪臭がしますが。
アリセントは自ら望んでヴィセーリスと結婚したわけではありません。父親であり王の手であるオットー・ハイタワーが、妻を亡くしたばかりのヴィセーリスを慰めて取り入るように仕向けたのです。アリセントは自分を利用する父親に反抗することはせず、彼の野望のために粛々と動いたのです。それが自分の務めで、ハイタワー家の繁栄のためだと理解しているからでしょう。納得していたとは思いません。自分の気持ちを殺して言葉を飲み込んでいたんだと思います。”ターガリエンの王女としての務め”に強く反発を見せるレイニラとは対照的な女性です。
レイニラはヴィセーリスに正式に継承者に指名された後も、叔父であるデイモン・ターガリエンと娼館に入って親密にしているところを目撃されたり、王の楯であるクリストン・コールと肉体関係を持ったりと、王女らしからぬ奔放な振る舞いをしていました。アリセントは、レイニラが純潔を疑われた際に彼女の弁明を信じましたが、実はクリストンと性交渉を持っていたことを知り、レイニラに対して明確に対立や不快感を示すようになります。それは、貴族の女性が婚前交渉をすることが許されない価値観に基づくものでもあったでしょうし、レイニラに嘘をつかれて裏切られたことに対する怒りもあったでしょうし、同時に、自由に振る舞っているレイニラに強烈な嫉妬を覚えたからだと感じました。自分は色々飲み込んで我慢して”務め”を果たしているのに、王の娘であるレイニラは我侭で自分勝手だと思わずにいられなかったでしょうね。
アリセントとヴィセーリスの夜の営みのシーンは、無表情で抱かれるアリセントの心中を考えさせる凄いシーンでした。まだ若い娘と年老いた男との性交シーンを入れることで視聴者にその気持ち悪さを感じさせる意図があったんでしょうけど、効果抜群でしたね。アリセントはヴィセーリスが死を迎えるまで彼を支え続け、家族としての情は持っていたかもしれませんが、絶対にヴィセーリスに恋愛はしていませんでした。アリセントだってセックスは好きな人としたかっただろうし、素敵な男性とそういうことをする夢も見たと思います。一方でレイニラは、クリストンに恋をしてたわけではないですが、少なくとも体を重ねてもいいと自分が判断した相手であり、若くハンサムで剣の腕前もある(一見)魅力的な男性とそういうことをしたわけです。アリセントがレイニラに対して嫉妬や怒りを覚えてもおかしくないと思います。
城に閉じ込められて世継ぎを産まされる人生なんて幸せじゃないと、レイニラがアリセントに言ってしまうシーンがありましたが、アリセント本人が不幸に感じていたとしても、他人に自分の生き方を不幸だと言われるのは惨めだし傲慢に感じるでしょう。不幸だと言われてしまうと、そうじゃなくても自分て不幸なのかなって思い始めてしまいますよね。私なら、レイニラの友達でいるのはしんどいなって感じてしまう。レイニラがデイモンに連れられて城の外をお忍びで駆け回り、娼館で性交は女性にとっても悦びであると教えられる中、アリセントは城の中でヴィセーリスの老体の手入れをし、何の悦びも感じられない夜伽を求められているのが、二人の対比になっていました。私はここ、従順な女性は不幸だと思わせるような、嫌な見せ方だと思いました。
そして二人にとって最大の確執となったのは、レイニラが後継者に指名された後にヴィセーリスとアリセントの間にエイゴン(男)が誕生したことです。ヴィセーリスは望んでいた男児が生まれた後でもレイニラが次期女王であることを揺るがせませんでしたが、女王を認めたくない派閥と自分の血筋を王に据えたいオットーらが、なんとかエイゴンを次期国王にしようと画策し始めるわけです。
エイモンドがルケアリーズによって失明させられた時、激怒したアリセントがナイフでレイニラ達に襲い掛かりますが、彼女の我慢していた本音が溢れ出して苦しかったです。エイモンドが失明した事件は明らかにエイモンドに非があると思うので、アリセントがルケアリーズの目を要求するのは正直おこがましいですが、ヴィセーリスがレイニラの問題に目を瞑ってばかりいるから不満と怒りが爆発してしまったのでしょう。レイニラはレイニラで問題がありますが、ヴィセーリスのレイニラやアリセントに対する向き合い方もかなり問題アリですよね。そのせいで、レイニラとアリセントは余計に対立を深めていったと思います。
アリセントの知らないところで、オットーはエイゴンを支持する翠装派を小評議会のメンバーに入れ、玉座簒奪の根回しを進めていました。王妃であるアリセントを除け者にして父親があれこれ手を回しているのも、バリバリ家父長的なアレですよね。アリセントも自分を駒扱いする父親にだんだん抵抗するようになってきました。そして、ヴィセーリスの死後に翠装派がエイゴンの戴冠式を強引に執り行ったことで、いよいよ黒装派と翠装派の戦争へと突入しかけています。
アリセントはヴィセーリスただ一人に身を捧げ、病に侵されて腐りゆく老夫の介護も誰よりも献身的に行っていました。一方でレイニラは結婚した身でありながら夫以外の男の子をもうけ、望んだ相手であるデイモンと再婚し、父親の崩れた相貌のことも知らず醜聞から逃れるために王都から離れた地で過ごしていたわけです。アリセントからしたら、レイニラよりも自分の方がずっと王と王土に尽くしているのに、それでも自分との子であるエイゴンではなくレイニラを世継ぎに据え続けられたら、腹立たしくも思うでしょう。ヴィセーリスは問題から目を逸らし続けていましたし、アリセントはずっと葛藤や不満を抱えていましたね。そんな中で、ヴィセーリスが死の直前に零したエイゴンに関するうわ言は、夫がようやく自分を認めてくれた、夫も本心では自分との子を王にしたかったのだ、そんな風に彼女の心に響いたのではないでしょうか。
ちなみに、ヴィセーリスがうわ言で口にした『氷と炎の歌』の『エイゴン』とは、アリセントとの息子エイゴンのことではなく、ゲースロに登場するジョン・スノウのことですね。アリセントがエイゴンを勘違いするのも仕方ないことです。同じ名前つけまくることの最悪の弊害よ。
今のところ、私はレイニラをあまり好意的に見れないです。女性に対する不当な扱いや抑圧や蔑視には私も嫌気がさしますが、レイニラは貴族で王家の人間ですから、課される役目は当然あると思うんですよね。結婚が政治的な意味を持つのなんて貴族にとっては男も女も同じです。それが嫌なら自分の権力と富を捨てるなり王制の在り方を変えるなりするべきだと思いますが、彼女は嫌だ嫌だと言うだけで自分が持つ特権も立場も少しも手放そうとはしないんですもん。強いというよりは、幼稚に見えてしまいました。貴族の男がよその女と遊びまくって落とし子作ってもお咎めなしなのは確かに不平等で、女だけ汚れ者扱いされるのは許し難いですが、だから女もよそで好き勝手遊んでやるってなると、それはそれで不幸な子や権力闘争が増えるだけです。感情的に欲望のまま反発するだけでは解決にならない気がしてしまいました。
また、レーナー・ヴェラリオンと互いに自由を認めて結婚したのはいいですが、生まれる子にヴェラリオン要素が絶対に出ない相手と子供を作ったのも無責任に思えてしまいました。落とし子疑惑がついて回る子供たちが可哀想。
そして、レイニス・ターガリエンも家父長制の犠牲となった女性の一人ですね。女性であることを理由に諸侯に支持されず、ヴィセーリスよりも年長だったのに王位を継げませんでした。レイニラと名前が似ていてややこしいですが、彼女はレイニラほど感情的で短慮ではなく、冷静で聡明な女性かと思っていました。しかし、エイゴンの戴冠式で民に大きな被害が出る形で王都を脱出したのはちょっとモヤッとしました。ここで民に犠牲を出してしまったら、民目線では結局彼女は王に相応しい人間じゃなかったと見えてしまうからです。ヴィセーリスが争いを好まず平和を保っていたのに対して、レイニラが暴力的で争いを呼び込むやり方をしては、やはり女では国や民を守れないと言われかねないじゃないですか。仕方ない状況だったにせよ、ここで民に被害を出したのは乱暴だったなぁと思ってしまいました。今後もし、このことが民に何のわだかまりもない感じだったら、ちょっと不思議に思っちゃうかも。
正直、ずっと見ていると”家父長制の下で可哀想に描かれる女性”に疲れてしまいましたね。この物語で男性が男性だという理由で酷い扱いを受ける描写は少なかったと思うのですが、こういう世界では男性にも理不尽な圧力や責任が生じているはずなのに、それがあんまり見えない。女性ばかりが可哀想というのは、何か違うかな。男性だって『家のため』『男だから』という役割を背負わされ、権力のために利用され、自由を奪われているはずですからね。自らは望んでいないのに王にさせられたエイゴン2世やルケアリーズなんかが男性の不自由さや抑圧を表せそうですが、エイゴンは人間性がクズだしルークはもう退場しちゃいましたから、期待できない。それに、本当に悲惨なのは不衛生で貧しい庶民のほうだろうし、美しく着飾った貴族のお姫様が裕福な生活を満喫しながら「自由がない」って駄々こねても…って思ってしまいました。
しかし、このドラマの男性陣はロクなのいませんでしたね(笑)。戦と政治謀略の話にばかり熱心で、自分や家族の問題からは逃げている描写が目立ちました。こんなクソみたいな男しかいない世界なら、女もクソでしょう。
ターガリエンの狂気
ターガリエンは近親交配によって狂気の傾向があるとされています。ゲースロに「ターガリエンが生まれるたび、神々が硬貨を投げ、民が固唾を飲む」という台詞が出てきますが、これは、狂気と偉大さはコインの裏表であり、誕生したターガリエンが狂人か賢人か、民は神々のコイントスを見守っているということです。
ヴィセーリス・ターガリエンは夫・父親としては失格なところが多いですし、弱腰で偉大なことを成し遂げてもいませんが、平安王と言われる通り王土の安寧を第一とした穏健な王だったと思います。向き合い方は不誠実でしたが、家族、特にレイニラのことをとても愛していたのも伝わりました。一方で、彼の弟であるデイモン・ターガリエンは野心が強く好戦的で、他人の気持ちや痛みを慮ることのできない傲慢な人物です。いかにもターガリエンの狂気さを秘めたキャラだと思いますね。
デイモンは兄ヴィセーリスと対立する場面が多かったですが、どういう感情を抱いていたんでしょうか。彼は鉄の玉座を欲していましたし、兄のことを王に相応しい人間だとは思ってませんでしたが、玉座を兄から奪う気はなさそうでしたし、私には彼なりに兄のことを愛していたように見えました。そして、兄から認められたがってるようにも見えました。ヴィセーリスがオットー・ハイタワーのような腹黒野心家を信頼して傀儡気味になってることには相当腹が立ってそうでしたね。また、ヴィセーリスから『氷と炎の歌』のことを聞かされていなかったことも、デイモンのプライドをかなり傷つけたのではないでしょうか。デイモンを世継ぎにすることを少しも考慮しなかったように受け取れますもんね。
デイモンはレイニラのことはどう思ってるんでしょうか。私は、愛してないと思います。ただ利用してるだけにしか見えません。自分の野望の邪魔になったら容赦なく切り捨てるでしょう。首絞めてたし。怖い。子供たちのことも、愛しているようには感じませんでした。レイナは無視されてるって言ってましたよね…。今のところデイモンは、すごく危険で怒りに満ちた孤独なキャラクターに見えます。ゲースロのデナーリスのことを思うと、怒りと孤独はターガリエンの狂気に拍車をかけるような気がするんですよね。デイモンには信じられる相手や自分の気持ちをさらけ出せる相手がいなさそうですから、そのうちとんでもないことをしでかしそうです。とにかく力を誇示したがるし、恐怖で人を支配しようとしますから、デイモンが王になったら高確率で狂王ルートだと思います。
一方で、レイニラはデイモンに少女の頃から好意を寄せていたように見えました。それが深いものかどうかはわかりませんが。彼女が反抗的だったり奔放だったりするのも、デイモンの影響があるんじゃないでしょうか。レイニラは、狂気と偉大さ、どちらを持つキャラクターだと思いますか?デイモンよりは理性的に振る舞っていますし、対立しても流血を避けようとする冷静さを見せていますが、私は狂気寄りの人間だと思っています。彼女は王土の安定のことも民のことも、役割を全うしている周囲の人間のことも、自分の欲より優先して考えるようには見えないからです。王の器には思えない。ルケアリーズが死んでしまった怒りで、理性も冷静さも失われたかもしれません。
もう一人狂気の色を見せているのは、ヴィセーリスとアリセントの次男エイモンド・ターガリエンです。顔が凶悪。イキってヒャッハーしてる感じはゲースロのジョフリーみがありますね。ルケアリーズを煽ったあげく誤って殺してしまったことは、黒装派と翠装派の全面戦争の火蓋を切った感があります。あっさり退場しそうな小物感も否めないですが、ヘレイナが言う”隠れた獣”ってエイモンドのことなんでしょうか。違うかな、誰の(何の)ことなんだろう。
ターガリエンではありませんが、ラリス・ストロングとクリストン・コールもだいぶ頭おかしいと思います。
最後に
伝統的に女王を認めないというのは、女性天皇を認めない日本の状況と重なる部分がありますね。異なるのは、このドラマでは民衆が女王を望んでいないのに対し、現在の日本では多くの人が女性天皇を支持していることです。こんな強烈な男尊女卑の文化を描くドラマと同じような伝統が現代の日本で続いてるというのは、ちょっと恥ずかしいですね。
ゲースロだとドラゴンを用いた戦いは物語が進まないと楽しめないのですが、今作だと最初からダイナミックなドラゴンを楽しむことができるのが魅力の一つですね。シーズン1はターガリエン衰退となる出来事の始まりを描いている部分ですから、これからどんどん事態は悪い方へと進んでいくのでしょう。両陣営がドラゴンを用いた地獄のような戦いが起き、ターガリエンが持つ狂気さや権力欲が描かれるのかと思うと楽しみではありますが、応援したり心を寄せることができるキャラが欲しい(笑)。ゲースロには選びきれない程好きなキャラがいたのにな。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』まだこれからですかね。
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