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映画『記憶にございません!』ネタバレ感想:展開に説得力がなくていまひとつ面白さに欠ける

『記憶にございません!』

Amazonプライムで配信されていた映画『記憶にございません!』を鑑賞しました。三谷幸喜監督の作品ですね。三谷監督の『ザ・マジックアワー』や『THE 有頂天ホテル』が大好きなんですけれど、今回のはいまひとつだったかなぁと思いました。問題がぽんぽん解決していくんですけど、「コメディだとしてもさすがにどうなの?」って思う展開が多かったように思います。俳優陣はいつもながら豪勢で、個性的なキャラをとても魅力的に演じられていました。

あらすじ

黒田啓介は病院のベッドで目が覚めた。自分が何者なのかも思い出せないまま病院から抜け出し、パジャマ姿のまま街を逃げ歩く。定食屋に入ってテレビを見ると、そこには自分の姿が映っていた。演説中に聴衆から石を投げつけられ、病院に運ばれている内閣総理大臣。それが自分だった。しかも、国会でひどい答弁をしたり暴言を吐いたりと、やりたい放題の総理大臣だ。おかげ国民からは史上最悪のダメ総理と呼ばれている。SPに保護されて官邸に連れて行かれた黒田は、医者に「政治家になってからの記憶を失っている」と診断される。このことは秘書官である井坂、番場、野々宮の3名だけが知るトップシークレットとされた。政治のことはもちろん、妻や子供の名前さえ忘れてしまった黒田は、果たしてこの先も総理大臣を続けることができるのか――。

作品情報&予告動画

監督三谷幸喜
脚本三谷幸喜
音楽荻野清子
撮影山本英夫
編集上野聡一
出演者中井貴一
ディーン・フジオカ
石田ゆり子
小池栄子
斉藤由貴
吉田羊
木村佳乃
山口崇
草刈正雄
佐藤浩市

ネタバレ感想

記憶喪失になってダメ総理からできる総理へ

大工である南条(寺島進)から石を投げられて記憶喪失となった黒田啓介(中井貴一)は、幼少の頃の記憶はあるものの総理になってからの記憶をきれいさっぱり失ってしまいました。それどころか、人間性も変わって見えます。おどおどしていて、自信がなくて、でも周囲の人間に優しさを見せ、忖度などがない素直な気持ちを表現する少年のような人間になっていました。

秘書官である井坂(ディーン・フジオカ)、番場(小池栄子)、野々宮(迫田孝也)は黒田が記憶喪失になったことを周囲には秘密にすることにします。政権の実権は実質官房長官である鶴丸(草刈正雄)が握ってるので、恐らく彼に知られることを避けるためにトップシークレットとしたのでしょう。黒田は支持率が3%以下の嫌われ者だったので、秘書官達は黒田に対して期待も信頼もない状態でしたが、人が変わったようになってからは彼らの態度も変わってきます。黒田は投石した南条に「生まれ変わるチャンスをくれてありがとう」と礼を言い、政治についてイチから勉強し直し始めます。そんな黒田を、番場は総理として好意的に捉え始めます。記憶喪失前の黒田が水面下で進めていた『K2計画』(スーパー銭湯つきの第2の国会議事堂を建てる計画)を途中で取り止めたことで、黒田に全く期待していなかった井坂もやる気を出し始めます。来日したアメリカ大統領(木村佳乃)は、ゴルフでの忖度を拒否したり自国の農家を守るためにアメリカンチェリーの関税引き下げをきっぱり断った黒田にむしろ好感を示しました。

こんな感じで、記憶を失って好ましい人物へと変貌したことにより周囲の人間からの評価も変化し始め、国民にとって理想的な総理になっていくのです。とは言え、そう簡単に世論が好転することはなく、物語終盤でも支持率は微増したけどまだ底辺という結果で終わりました。そこだけやけに現実的です。それまでがトントン拍子に進み過ぎてるんですよね。コメディなのでテンポよく進むほうが良いとは思うのですが、テンポが良すぎてあまり登場人物の心情に共感できないんです…。「そんな簡単に人の気持ち変わる?」とか、「そんなあっさり計画中止にできる?」とか、不自然さが気になっちゃって笑えなくなっちゃいました。「政治ちょろすぎじゃない?」という感じも否めません。もちろん、面白い掛け合いもありましたけどね!

CMで「記憶にございません!」って大声で怒鳴り散らす中井貴一を見ていたので、中井貴一のクズ総理っぷりが楽しめるのかと期待していたのですが、冒頭から既に記憶喪失状態なのでクズっぷりが見れるのは定食屋のTVに映ったほんのちょっとのシーンだけでした。本編のほとんどはクズどころか純情で弱気で誠実な中井貴一。もうちょっと、人をイラつかせる総理を見たかったなぁと思った次第です。あの国会答弁での中井貴一の嫌な総理っぷり、すごい良かったしあれで面白そうっていう期待感持ったんですよね。

記憶喪失になって不倫夫から愛妻家へ

井坂は黒田への嫌がらせ目的で、黒田の妻・聡子(石田ゆり子)と不倫しちゃってました。黒田は黒田で、野党第二党党首の山西(吉田羊)と不倫してたんですが、記憶喪失後はいきなり妻一筋となり、山西には別れを切り出します。記憶喪失で妻の存在も忘れていたのに、なぜ急に妻への愛に目覚めたんでしょう…。元々聡子との関係は冷え切っていて、記憶喪失後も聡子に嫌がられて冷たくされてたんですよ。「タイプなんだ」っていう理由らしきことを言ってましたけど、流石にちょっとそれでゴリ押すには動機が弱すぎる気がしました。

聡子の方は、いきなり自分や息子(濱田龍臣)との距離を縮めようとしてくる黒田を不気味がっており、矢印は完全に井坂に向いていました。が、当てつけで聡子と不倫していた井坂は、黒田が真っ当な人間になるや聡子との関係を終わらせます。聡子と井坂の不倫を知った黒田は、辞表を提出した井坂を引き留め、国会中継のTVで聡子に愛の告白をしました。それを見ていた聡子、あっさり絆されます。簡単すぎる~(笑)。ディーン・フジオカに目が眩んで「井坂かっこいい♡」ってなりますけど、結構なクズですね。

実は思い出していた

最後の方で明らかになるのですが、実は黒田は途中で記憶を取り戻していました。しかし、その後も記憶がないフリをしていたのです。記憶を失ったことでしがらみから解放され、やり直すチャンスだったからです。

なるほど、それは全く気づきませんでした。

一体、いつ記憶を取り戻したんでしょう。恐らく、夜中のキッチンで寿賀さん(斉藤由貴)にフライパンで殴られた時でしょうね。そうじゃないとここのシーン、何の意味があるのかよくわからないですし。と言うことは、その後、財務大臣の森崎(小林隆)と「アレの件」について話している時の黒田は「アレ」が何なのかわかってるんですね。どうせ良くない話だろうと踏んで適当に中止にしたのかと思ってました。この森崎という人、いつも半袖半ズボンのスーツ着てるのには何か意味があるのでしょうか?映るだけでフフッと笑えましたが。

最後に

場面場面では笑えるんですけど、全体としては残念ながら面白くなかったです。うーん。コメディとして笑えるラインを超えたやりすぎ感のせいかなと思います。小池栄子がクイッと腰を突き出す動きとか、佐藤浩市のキャディーさんとか、有働由美子のアメリカンなニュースキャスターとかは面白かったです。有働さんはなんでアメリカぽかったんでしょう?(笑)

一昔前の三谷監督の作品は本当に面白いんですけど、近年の作品はいまいちパッとしないですね。

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