『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』シーズン1ネタバレ感想:圧巻の映像美を楽しむ物語序章
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Amazonオリジナルドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』を視聴しました。J・R・R・トールキンの小説『指輪物語』とその追補編をベースに製作されたドラマになります。が、ドラマオリジナルのキャラも結構出てきます。『指輪物語』と言えば現代ファンタジーの祖とも言える大作で、種族や地理や歴史や言語に至るまで緻密に設計された壮大な世界観に魅了されたファンが世界中にいます。残念ながら私は原作小説は履修していません。昔、図書館でちょっと読んだのですが挫折しました。私のようなニワカはwikiとか読んだだけでも頭がこんがらがってくるほど様々な独自用語や概念が出てきまして、永遠に理解できません。ドラマにも説明なくヴァラールだとかノルドールだとかマンウェだとか用語が出てきますが、それらの意味を検索すると、解説に知らない用語が新たに10個くらい出てきます(笑)。北欧神話の影響を受けているそうですが、トールキンの創作自体も神話と言えるほどです。
2001~2003年にはピーター・ジャクソン監督が『指輪物語』を映画化し、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作として高い支持を得ました。私はこの映画が大好きで、このドラマを見終えた時にまた映画版が見たくなって視聴しましたね。今でも色褪せない素晴らしい映画だと思います。また、2012~2014年には同監督が『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚にあたる『ホビットの冒険』を3部作で映画化しています。こちらは正直あまり覚えていません。
そしてこのドラマは『ホビットの冒険』『指輪物語』よりも1000年前の物語になります。『ホビットの冒険』『指輪物語』で描かれた出来事は第三紀と呼ばれる時代のことでしたが、『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』は第二紀の中つ国が舞台になっています。ピーター・ジャクソン監督の映画版でお馴染みの種族やキャラも出てきますし、新たな種族や地名なども出てくるので、映画を楽しんだ方は懐かしさとともに中つ国のより古い歴史を知れると思います。
映像美は当たり前ですが映画版よりも進化しています。ヌーメノールの美しさとか本当に圧巻でした。このクオリティで中つ国という美しい世界を堪能できるだけでも、ファンタジーファンなら見る価値はあると思います。ストーリー的にはシーズン1全体が物語の序章っぽく、不穏な兆しを各地のキャラクターを通して多角的に描いているため、いよいよ盛り上がって来た!というところで終わったように感じました。なので、シーズン2に期待しているところです。
あらすじ
宿敵モルゴスを討ち果たすため、西の果ての国ヴァリノールに住まうエルフたちは分かちの海を越えて中つ国へと渡った。何世紀にも続く激しい戦争の末、遂にモルゴスは敗れたが、中つ国は荒廃した。中つ国の各地に散らばった邪悪な種族オークは、モルゴスの最も忠実でずる賢い部下だった魔法使いサウロンの指揮下に入る。ノルドールのガラドリエルはサウロンに殺された兄の遺志を継いで上級王ギル=ガラドの北征軍を率い、サウロンを追い続けた。しかし、行方を掴めぬまま数世紀が過ぎ、次第にエルフたちは脅威は去ったのだと信じるようになった。
予告動画
登場人物&キャスト
以下、S1のネタバレしていきますのでご注意ください。映画『ロード・オブ・ザ・リング(以下LotR)』のネタバレも含まれます。
ガラドリエル
ノルドール族のエルフの伝説的な戦士。兄フィンロドをサウロンに殺され、サウロン討伐を心に誓いました。上級王ギル=ガラドの下で北方軍を率いてサウロンを捜し続けましたが見つけられず、長い年月が過ぎ、上級王も部下も脅威は去ったと考える中、唯一人執着しています。夫はケレボルン。演じているのはモーフィッド・クラーク。『LotR』ではロスローリエンの森の奥方として登場しました。映画では気高く高貴でミステリアスな感じでしたので、若かりし頃のガラドリエルがまさかこんな頑固一徹な武闘派だったとは思ってませんでした。
エルロンド
半エルフ(エルフと人間双方の血を引いている)のエルロンドと呼ばれる高官。父の名はエアレンディル、双子の兄にエルロスがいます。ガラドリエルやドゥリンとは昔からの友人で、上級王に仕えています。モルゴスが敗れた後、ヴァラールによって不死であるエルフの生か死すべき運命の人間の生かを選ばされ、エルフの生を選びました。一方、双子のエルロスは人間の生を選んでヌーメノールの初代国王となっています。『LotR』では裂け谷の領主として登場しました。演じているのはロバート・アラマヨ。ドラマ視聴中は気づきませんでしたが、『ゲーム・オブ・スローンズ』で若い頃のエダード・スタークを演じた俳優さんだったんですね。言われてみれば!
ギル=ガラド
中つ国におけるノルドールの上級王。ガラドリエルやエルロンドの王様で、リンドンというエルフの都を治めています。衰退を示すエルフの運命を案じています。演じているのはベンジャミン・ウォーカー。
ケレブリンボール
偉大なエルフの鍛冶師でエレギオンの領主。至宝シルマリルやパランティールを制作したフェアノールの孫です。荒廃した中つ国を美で覆いたい、真の力を生みたいという理想を持ち、上級王の命でエルロンドと共に仕事をすることになります。演じているのはチャールズ・エドワーズ。
アロンディル
かつてモルゴス側についた南方国の人間を監視するためオスティリスに駐留しているシルヴァン・エルフの一人。ドラマオリジナルキャラ。海に沈んだベレリアンドの生まれです。長年監視しているうちに人間を信じる気持ちが芽生え始め、ブロンウィンに想いを寄せています。演じているのはイスマエル・クルス・コルドバ。
ミーリエル
中つ国と至福の国アマンの間の大海にある島国ヌーメノールの摂政女王。ヌーメノールはエルフと共にモルゴスと戦った人間たちに褒美として与えられた国で、ミーリエルは病床に臥せった父王の代わりを務めています。かつてはエルフに友好的な国でしたが、現在はエルフを拒絶しています。パランティールによってヌーメノール滅亡の未来を見たミーリエルは、白い木の花が散る時にエルフの裁きを受けるという言い伝えを信じています。演じているのはシンシア・アダイ=ロビンソン。
エレンディル
ヌーメノールの海洋警備隊の船長。名前は「エルフの友」を意味しています。漂流していたガラドリエルとハルブランドを救助してヌーメノールへと連れてきました。『LotR』をご覧になっている方は彼の未来をご存知かもしれません。アラゴルンの先祖です。演じているのはロイド・オーウェン。
イシルドゥル
エレンディルの息子で海洋警備隊士官候補生。アナーリオンという弟とエアリエンという妹がいます。士官になることよりも西へ行きたがっており、また、名前を呼ぶ謎の声が時々聞こえています。『LotR』をご覧になっている方は彼の行く末もご存知でしょうね。アラゴルンの先祖です。演じているのはマックス・ボルドリー。
エアリエン
エレンディルの娘でイシルドゥルの妹。ドラマオリジナルキャラ。見習い建築士です。父や兄とは違い、反エルフの思想を支持しているようで、中つ国への遠征に反対しています。演じているのはエマ・ホーヴァス。
アル=ファラゾーン
ヌーメノールの執政。反エルフ思想で、民衆からは女王よりも支持を集めています。いずれはエルフとの立場逆転を狙っている様子。流れを読み、損得で立ち回る人間です。演じているのはトリスタン・グラヴェル。
ケメン
ファラゾーンの息子。エアリエンのことが気になっています。父に認められたがっていますが、父はケメンの言葉をあまり聞いてくれません。演じているのはレオン・ウェイダム。
ブロンウィン
南方国に住む人間の治療師。ドラマオリジナルキャラ。アロンディルから信頼され、想いを寄せられています。しかし、村人たちはエルフを良く思っていないので、彼女も表立ってアロンディルと交流はできません。オークに立ち向かうために村人たちを奮い立たせるリーダーとなります。演じているのはナザニン・ボニアディ。
テオ
ブロンウィンの息子。ドラマオリジナルキャラ。オーク達が探し求める”鍵”を偶然見つけ、それに魅入られています。演じているのはタイロエ・ムハフィディン。
ドゥリン王子
霧ふり山脈にあるドワーフの地下王国カザド=ドゥームの王子。エルロンドの親友ですが、長年音沙汰がなかったことでヘソを曲げています。しかし、エルフが滅びの運命にあると知ると父との対立を辞さない程、エルロンドとの友情を大切にしています。ちなみに、カザド=ドゥームは『LotR』ではモリアと呼ばれているところです。演じているのはオウェイン・アーサー。
ドゥリン3世
カザド=ドゥームの王。衰退の運命を辿るエルフを助けることを拒絶し、ミスリルの採掘も禁止してしまい、息子ドゥリンからは激しく反発されます。演じているのはピーター・マラン。
ディーサ
ドゥリン王子の妻。ドラマオリジナルキャラ。明るく逞しい女性で、頑固な夫を諫めたり宥めたりしています。彼女の歌声には不思議な力があります。演じているのはソフィア・ノムヴェテ。
エラノール・”ノーリ”・ブランディフット
集団で定期的に住処を移動する小さき種族であるハーフットの少女。ドラマオリジナルキャラ。外の世界を冒険することを夢見ている好奇心旺盛で恐れ知らずの女の子です。隕石とともにやってきたよそびとをこっそり匿い、交流を深めます。ちなみに、ハーフットは『LotR』に出てくるホビットの祖先です。演じているのはマルケラ・カヴェナー。
よそびと
隕石とともにハーフットの集落に落ちて来た初老の男。一切の記憶を無くしていますが、ノーリとは互いに助け合う仲に。最初は言葉もしゃべれずコミュニケーションもままなりませんでしたが、サウロンに仕えるためにやってきた3人組によってイスタリ(魔法使い)であることが判明すると、知力がグンとアップしました。演じているのはダニエル・ウェイマン。
アダル
オークたちから尊父と呼ばれる”ウルク”。かつてモルゴスに攫われ、拷問の末に心身を捻じ曲げられた、モリヨンドル(闇の息子たちの意)と呼ばれる最初にオークとなったエルフの一人です。オークたちを「子供」と呼び、彼らにも命や家を持つ価値があると信じています。アダルは野心のために多くの「子供」たちを犠牲にしたサウロンを許せず、「俺がサウロンを殺した」と述べています。演じているのはジョゼフ・マウル。
ハルブランド
南方国の人間。海で漂流していたところ、ガラドリエルと出会います。その後エレンディルに救助され、ヌーメノールへ連れていかれました。ガラドリエルに南方国の王の血筋であることに気づかれ、闇の脅威が迫る南方国を救うために共に戦うよう請われます。ケレブリンボールにヒントを与えれるほど鍛冶に精通しています。演じているのはチャーリー・ヴィッカース。
ネタバレ感想
宿敵の正体と、指輪の創造
原作を知らず『LotR』を鑑賞した身からすると冥王と言えばサウロンのことでしたが、初代冥王とも言える存在がサウロンの上位に存在していたんですね。それがモルゴスでした。『LotR』において最大の敵だった冥王サウロンですが、彼は本来はモルゴスの最も強大な部下でした。しかし、モルゴスはドラマ開始時にナレ死を迎え、サウロンとその配下に入ったオークたちは数世紀に渡って姿を消してしまいました。闇の勢力はどこかに潜んでいると信じるガラドリエルは、兄の仇であるサウロンを恐るべき執念深さで追い続けるのですが見つけられず、極北の地でようやくその痕跡だけは発見したものの、上級王の帰還命令や部下たちの反発によりそれ以上の追跡は叶いませんでした。何十年どころか何世紀も姿を見なければ死んだのだろうと思うのも自然なことです。いくら不死のエルフだからって何世紀も燃え盛るような復讐の火を絶やさずにいられるガラドリエルは、ある意味心を闇に支配されているように見えますね。部下にも無茶を強いて離反されてましたし、彼女の直感は正しくとも、強硬なやり方の犠牲になった者もたくさんいたわけです。
上級王は戦いの終わりを宣言して兵を引き揚げさせるのですが、まさにそのタイミングで、闇に潜んでいたオーク達は人間が住む南方国で活動を開始しました。不死の国ヴァリノールへ行く船に乗せられたガラドリエルですが、どうしても戦いをやめることができない彼女は、船から飛び降りて中つ国へ泳いで戻ることにします。そこで、同じく海を漂流していたハルブランドと名乗る南方国の人間と出会ったのです。ハルブランドが身に着けている紋章が南方国の王族の印であることを知ったガラドリエルは、王として共に南方国を救いに行くよう言います。南方国はモルゴスとの戦いにおいてモルゴス側についた国です。つまり、ハルブランドは先の大戦でエルフたちと戦って敗北した人間の血筋ということです。
ガラドリエルとハルブランドは紆余曲折を経ながらもヌーメノール女王率いる軍と共に、オークに襲撃されている南方国を救いに向かいました。南方国の危機を救ったかのように見えましたが、オークの首領であるアダルは”鍵”を見つけており、それを始動させると山が大噴火を起こして南方国は火と灰に包まれてしまいました。あの火山こそが『LotR』でフロドたちが指輪を葬るために目指した滅びの山で、南方国はモルドールだったのですね。物語が繋がっていったのが非常に面白かったです。空が灰で覆われたため昼間でも太陽の光が届かずオーク達が活動できる国ができたということですね。
噴火時に負傷したハルブランドはエルフの治療を受けるためエルフの鍛冶師の国であるエレギオンへ連れられ、そこで名工ケレブリンボールと出会いました。ミスリルの扱いに悩んでいたケレブリンボールに、ハルブランドは”贈り物”として合金に関する助言を与えます。ハルブランドの助言を受け、ケレブリンボールは少量のミスリルから肉体を超える力を有する3つの指輪を鍛造することに成功しました。エルフの持つ3つの指輪はこういう経緯で創られたのですね。『LotR』を見ただけの私は、てっきりヴァラールのような上位の存在から与えられたものかと思っていたのですが、自分達で鍛造したんですね。
一方、ガラドリエルはケレブリンボールが口にした「肉体を超える力」という言葉を不審に思います。ハルブランドとの会話からその言葉を口にしたことを察したガラドリエルは、同じ言葉をアダルから聞いていました。「サウロンは肉体を超える力を創造しようとしていた」ことを。ガラドリエルが南方国の王家の血脈を調べると、それが1000年前に既に途絶えていることが判明しました。ガラドリエルが南方国の王だと思い込んでいたハルブランドの正体こそが、サウロンだったのです。追い求めていた宿敵は隣にいて、ガラドリエルは彼に利する行動を取っていたのでした。
ハルブランドは王家の印を死体から取ったと言っただけで、自分から王であるとは一度も言っていません。ガラドリエルがそう思い込んだだけです。一見、ガラドリエルが乗り気でないハルブランドを巻き込んでいっているように見えましたが、実はハルブランド、否、サウロンの目論見にガラドリエルが乗せられていたのです。私にはサウロンがどこまで見通して糸を引いていたのかわからないのですが、シーズン1での目的は指輪の鍛造だったのだろうと思います。ヌーメノールで鍛冶に執着していたのもそれに関連していたのだと思うし、噴火で怪我したのも恐らくエレギオンへ行くためでしょうし、ケレブリンボールには”贈り物”と称してわざと助言を与えていますからね。ガラドリエルの短剣を最初から気にしていたのは、あれが素材として必要だったからでしょうか。それとも、あれを素材にしたかったのでしょうか。本当は自身で指輪を鍛造して手にすることが目的だったのか、エルフに鍛造させて持たせることが目的だったのかはよくわかりません。溶鉱炉の中にミスリルを入れたシーン、完全に『LotR』のサウロンの目になっていてゾクリとしました。あの演出からもサウロンの目的が達成された感じが出てますから、エルフの手に渡ったとしてもサウロンの計画通りな気はします。
サウロンの目的は、傷つき荒れ果てた中つ国を癒すことなのです。そのために「肉体を超える力」の創造が必要でした。それが指輪です。そして、ケレブリンボールも「中つ国を癒したい」と言っていました。彼がサウロンに付け入られてるのは間違いないでしょう。ただ、利用されているから「中つ国を癒したい」と言い出したのか、目的が同じだったから利用されたのかはわかりません。ガラドリエルはサウロンの誘惑をはねのけていましたが、完全に拒絶できているかは怪しいところです。自分が助けた者の正体がサウロンだったことを他に明かしていませんし。そして、サウロンがなぜガラドリエルと手を組もうとしたのか、なぜ彼女が必要だったのかもよくわかりません。ガラドリエルがいてくれれば光でいられるみたいなことを言ってましたけども。とにかく、サウロンには人の心に入り込んで幻覚を見せ、行動や思考を操作する力があるのかもしれません。
しかし、ハルブランドの正体にはとても驚きました。私は全く気付いてなかったからです。シーズン最終話になって急にフラグが立ったように感じたくらい予想外だったので面白かったです。
アダルという存在
南方国に現れたオーク達の首領アダルは、モルゴスに捕らわれ拷問されて別の生き物へと歪められた元エルフ、最初に作られたオークの一人でした。オークと呼ばれるのが嫌らしく、自らは”ウルク”と呼んでいます。アダルはサウロンの手下でしたが、サウロンが「肉体を超える力」の創造に執着するあまり、アダルが我が子として愛するオーク達をその実験の犠牲にしたものですから、ブチギレてサウロンを殺してしまったそうです。反逆ですね。
アダルはオークにも家を持つ価値があると言います。権利があるということでしょう。彼はオークが普通に暮らせる国をつくりたいのです。モルドールがそのための場所です。『LotR』ではオークは悪しき存在として揺るがなかったように感じますが、ドラマでは完全な悪という描き方はしないのかもしれません。命は等しいものですから、アダルやオークの生まれた経緯や彼らの悲劇性や悲哀の描き方によってはガラドリエル達が絶対正義の存在ではなくなります。アダルがどんな物語を見せてくれるのか楽しみです。
しかし、ハルブランドの姿のサウロンが「俺を覚えているか」と問うてもアダルはわかっていないようでしたから、あれはサウロンの本来の姿ではないのでしょう。あるいは、いくつも姿があるとか、自在に変えられるとか、そんな感じでしょうか。『LotR』ではただの巨大な目でしたしね。アダルはサウロンが生きていることを知れば、サウロンと敵対する勢力になるのでしょうか。サウロンはアダルに対して怒りを見せていましたから、アダルからモルドールを奪う形になるのかな?
滅びの運命にある者たち
ドラマ内には滅びの運命にある者がいくつか出てきましたね。まず一つが、中つ国のエルフたちです。彼らは不死ですが、闇の勢力が隆盛していることが関係してるのか、滅びの運命にあります。彼らが生き延びる道はふたつ。中つ国を去ってヴァリノールへ行くか、ドワーフたちが発見したミスリルを手に入れるか。ミスリルにはヴァリノールの光が宿っているから救われるんだそうです。
親友であるエルロンドからその事実は知ったドワーフの王子ドゥリンはミスリルを差し出そうとするのですが、頑固で偏屈な父王はエルフを見捨て、ミスリル採掘も禁止してしまいました。最終的にエルロンドがドゥリンからもらったひとかけらのミスリルから指輪の鍛造に成功したのでエルフは滅びの運命から助かるっぽいですが、エルフとドワーフは仲が良くないという背景があるにしろ、ドワーフ王の頑固で石頭っぷりは見てるこっちもイラつきましたね。おかげでドゥリンとエルロンドの友情が輝きましたし、ドゥーサがボロクソに言ってくれたので留飲も下がりましたが。『LotR』のレゴラスとギムリの関係も良かったですし、エルフとドワーフのツンデレな友情が好きです。いがみ合っている種族同士の対立を超えて成立する絆は熱い。
さて、エルフを滅びの運命から救う鍵を握っていたのがドワーフでしたが、実は彼らにも滅びの危機があります。霧ふり山脈の地の底でバルログが目覚めているシーンがありました。カザド=ドゥームはモリアという呼び名で『LotR』にも出てくるのですが、そこでは美しかった地下帝国は見る影もなく廃墟と化していました。栄華を誇ったドワーフたちに大きな災厄が降りかかるのは決まっているので、ドゥリンたちがどうなってしまうのか気になるところです。ドラマがどこまで描くのかわかりませんが。ドワーフ王がミスリル採掘を禁止したのは、災いを感じ取っていたからなのかもしれませんね。
さらに滅びの運命にあるのは、ヌーメノールです。パランティールがその滅亡を映していました。かつてはエルフと友好的な国でしたが、未来を見た王は滅亡を回避するためにエルフとの関係をより厳格にしようとしたため反乱が起き、それを鎮めるためにミーリエルは反エルフ的な施策をとることになったのです。ミーリエルはガラドリエルに協力しない選択をしながらも、白の木の花が散るという凶兆を見たため、翻意してガラドリエルと共に中つ国を救いに向かいますが、噴火の際に視力を失ってしまいました。果たして彼女の決断はヌーメノールを滅びの運命から救っているのか向かわせているのか、どちらなんでしょう。南方国がオークに襲われ、中つ国の他のどの国も助けない中(それがどうかと思うが)、真っ先に海を渡って救援に来たのはかっこよかった。視力を失っても戦意は失わず、必ず中つ国に戻ると宣言したのも胸が熱くなりました。ミーリエルではなく、反エルフを掲げて打算的に動くアル=ファラゾーンがヌーメノールを滅びに導きそうな気がします。
よそびととは何者なのか
ひとところに定住せず、集団で住処を移動しながら生きる小さな種族ハーフットの少女・ノーリの元に降って来た謎の初老の男。こいつがサウロンか?と思わせながらも、善人であるような描写も随所で見られ、サウロンか?ガンダルフか?と揺れ動いた視聴者も多くいるのではないでしょうか。最終的にサウロンではなくイスタリ(魔法使い)であることが判明しますが、名前はまだわかりません。
私は、ガンダルフかなぁと思っているのですが、最初に中つ国に上陸したイスタリはサルマンらしいので、サルマンかもしれません。『LotR』や『ホビットの冒険』でガンダルフはホビットと只ならぬ縁があるのではないかと思わせるほど親しくしていましたから、それがハーフットのノーリとの縁に由来するものだったら素敵だなぁと思うので、ガンダルフ説を推したくなるんですけどね。
それにしても、イスタリってのは最初から老人の姿なんですね。どこか別のところで生まれて成長して老人になって中つ国に遣わされてるってこと?
今更蒸し返す黒人エルフ問題
配信から既に何ヶ月も経って年まで明けてるのですが、賛否分かれた黒人エルフ問題に言及しておきたいと思います。私は原作のファンではありませんが、『LotR』では登場人物がほとんど白人(に私には見える)でしたし、北欧神話などがベースですし、現代のように様々な人種が交わる前の世界観を描いているファンタジーですから、今まで私が築いてきた指輪物語のイメージとはそぐわなかったというのが率直な意見です。そして、私にとってそのイメージ破壊は心地よいものではなく、かと言って拒絶する程ではありませんが、「時代の流れか」ぐらいの消極的な受け入れです。一部の思想を投影させすぎてることへの反発心があるのと、例えば日本を舞台にした日本神話ベースの物語に多様な人種が登場するかのような違和感を覚えるからです。念のため付け加えますが、『LotR』と比べるとドラマは本当に人種が多様だったので、黒人エルフの存在だけがイメージを壊したとは思わないです。
あまり前向きに受け入れなかったとはいえ、黒人エルフなんて出すな!などという極端な否定は全く支持しません。ただ、黒人エルフに否定的意見を言う人に「差別主義者」などのレッテルを雑に貼る人たちに心底辟易しています。こういう人たちが無理。否定的な反応を示している人たちの大半は、自分たちが持っていた指輪物語のイメージと違うだとか、原作の設定を無視しているとか、そういう理由からでしょう。彼らは高身長細身の白人ドワーフが出てきても拒否反応を示すはず。
トールキンの研究されているという方が、シルヴァン・エルフに黒人がいてもおかしくはない(原作の設定と矛盾しない)、という旨の説明をSNSでされていました。(トールキンが黒人エルフを想定していたとは思わないけれど、とも申し添えてありましたが。)私はそれを見て、自分の中でわりと納得がいきました。雑なレッテル貼りをやめて、一次ソースの根拠付きできちんと説明することが正しい対応でしょう。逆に言えば、原作をちゃんと読み込んでいないのに、指輪物語に黒人エルフの存在なんてあり得ないなどと決めつけて反対する論も雑だったのです。ドラマ制作にはトールキン財団も協力していますし、原作をリスペクトしていないという論で反対するのは筋が悪そう。自分の慣れ親しんだトールキンの世界観と合わなくて受け入れられないぐらいしか言えないのではないかな。そして、個人が持つ作品へのイメージって長年の愛着とかもあるわけですから、合わなくて受け入れられないことは悪いことではないし差別に起因するものでもないです。
私は、白人だらけの『LotR』でも種族や違いを超えて理解し合って尊重することの大切さを十分に伝えていると思いますし、登場人物の人種やら性別やらが偏っていようと指輪物語の本質は描けるし共感することも可能だと思っています。とは言え、今作のように人種を多様にすることでより多くの俳優さんに大作の出演機会が増えることも大切ですし、『LotR』の頃よりも多様性を尊重するようになったのはひとつの進歩でしょう。一方で、じゃあ当然アジア系のエルフも出てこないとおかしいだろうと私は思いますし、そもそもトールキンの設定が差別的なのでは?という別の疑問も感じてしまいました。黒人がエルフを演じれないのは差別とするなら、低身長で醜くてずんぐりむっくりした人がエルフを演じれないのも差別になるのでは。雑に差別のレッテルを貼る人たちは、トールキンの差別的な設定自体には反対しないんですかね。
最後に
作品としてつまらないわけではないのですが、なんというか、進みが遅くて退屈に感じた部分は結構ありました。続きが見たくてワクワクする!という体験が少なかったかな。サウロンの正体が判明するところが一番盛り上がりましたね。
今後、ドワーフに7つの指輪、人間に9つの指輪、そしてサウロンの一つの指輪ができるんですかね。