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『ミッドサマー』ネタバレ感想:美しい田舎で開催される狂気の夏至祭

映画『ミッドサマー』

Netflixで配信開始された映画『ミッドサマー』を視聴しました。話題だったので映画館で見たかったのですが、私の地域の映画館では上映していなかったのが悔しくて、ネタバレも何も見ずに待っていました。通常版とディレクターズカット版の両方が配信されていて、どちらも視聴しました。両方見て違いを確認したとかではなく、ディレクターズカット版を見ようと思ってたのに視聴ランキングに上がってたやつをよく確認せずに視聴し終えたら通常版だったので、後からディレクターズカット版を視聴し直しただけです…。

監督・脚本は『へレディタリー/継承』で一躍脚光を浴びたアリ・アスターです。『ヘレディタリー/継承』は面白かったし怖かったですが私にとって理解しやすいとは言えない作品でして、『ミッドサマー』もそんな感じでした。

原題の『Midsommar』はスウェーデン語で夏至祭を意味しています。

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本ページの情報は2022年7月時点のものです。現在は配信終了している場合もありますので、最新の配信状況は各動画配信サービスの公式サイトにてご確認ください。

あらすじ

冬。大学生のダニーは、双極性障害の妹が両親を道連れに一酸化炭素中毒で心中を図り、家族を失ってしまう。恋人であるクリスチャンを頼るものの、クリスチャンにとって精神的に不安定なダニーは重荷になっていた。
夏になり、スウェーデンからの留学生であるペレに招待され、ダニー、クリスチャン、マーク、ジョシュの4人は、ペレの故郷であるスウェーデンのホルガ村で開かれる夏至祭を訪れた。太陽の沈まない美しい自然の中で開催される”90年に一度の祝祭”だが、次第に不穏な空気が漂い始める…。

作品情報&予告動画

原題Midsommar
監督アリ・アスター
脚本アリ・アスター
音楽ボビー・クーリック
撮影パヴェウ・ポゴジェルスキ
編集ルシアン・ジョンストン
出演者フローレンス・ピュー
ジャック・レイナー
ウィリアム・ジャクソン・ハーパー
ヴィルヘルム・ブロングレン
ウィル・ポールター

ネタバレ感想

田舎のコミューンの伝統的な祭を舞台にしたホラー

ダニー達はペレに招待されてスウェーデンのヘルシングランド地方にあるホルガ村の夏至祭に参加することになるのですが、それはとんでもないお祭りでした。心霊系ではなく、人が怖い系のホラーですね。

ホルガ村というのは架空の村で、もちろんこの映画に登場する夏至祭の内容もフィクションですが、アリ・アスターは夏至祭や伝統について入念にリサーチし、それを反映させているそうです。ルーン文字や北欧神話なんかも出てきますね。どうでもいいですが、私はこの映画を見ていて『進撃の巨人』に北欧神話要素があったことに初めて気づきました。

ホルガ村は自然しかない奥地の田舎で、小さなコミューンです。ペレはこの小さな共同体の皆を家族だと言っています。夏至祭の時期は白夜になり、広大な原っぱみたいなところに木造の神殿とか宿舎を建ててお祭りの広場っぽくしてるんですけど、めっちゃ牧歌的で長閑な景色です。緑に囲まれ、美しい花々で彩られ、村人は白い衣装に身を包み、宿舎は民族的な可愛いアートがいっぱいあしらわれていて、カントリーっぽい雰囲気が好きな人はテンションが上がりそうな場所ですよね。私は女の子達の衣装や花冠の可愛らしさにきゅんってなりました。着てみたい。

夜の来ない、光と自然溢れる場所でホルガ村の夏至祭は行われるわけです。およそホラーとは無縁そうな雰囲気なんですが、それが逆にじわじわと不気味さを帯びてきました。日本の田舎を舞台にした怪しい祭りのホラーなら大概暗い夜の出来事を想像すると思うのですけど、『ミッドサマー』は明るいんです。ホラーにありがちな暗くてよく見えない問題も起きません。

お祭りの内容自体は斬新なものではなく、怖い設定を盛り込んだ感じだなと思いました。人身御供や性交の儀式ですね。言語もわからない異文化のお祭りなので最初からそこはかとない不気味さがあるんですが、アッテストゥパンという儀式が始まってから「これはヤバイ祭りだ」ということが明確になります。アッテストゥパンとは72歳を迎えた老人が絶壁から身投げするという儀式でした。スウェーデンでは高齢者が儀式的な自殺をしたとされる絶壁にアッテストゥパンという名前がつけられているようです。北欧って高齢者の延命治療をあまりしないって聞くので、個人的には劇中のこの儀式にそういう文化的背景を感じました。日本にも姥捨て山がありましたけど。

アッテストゥパンを目撃した後、ペレの友人イングマールが外部から連れて来たサイモンとコニー、そしてマークとジョシュが次々と姿を消します。ダニーはドラッグが入ったジュースを飲まされてメイポール・ダンスに参加させられ、クリスチャンも妙なジュースを飲まされてペレの妹マヤとの性交の儀式に参加させられました。ダンスに勝ち残ったダニーはメイクイーンとなるのですが、マヤと性交するクリスチャンを目撃してしまい、慟哭します。祭りはクライマックスを迎え、外部の人間であるクリスチャン、マーク、ジョシュ、サイモン、コニー、アッテストゥパンで死んだダンとイルヴァ、村民のイングマールとウルフの合計9人が生贄として神殿に捧げられ、焼かれました。

ホルガ村は輪廻転生を信じており、この夏至祭は新たな命を授かるための儀式だったというわけです。アッテストゥパンも、人身御供も、クリスチャンとマヤの性交も、輪廻転生の思想から来ているんですね。死んだ命は新たな命となってまたホルガに巡って来ると信じているんです。そんなわざわざ殺さなくたって、自然にまかせて死んでいった命がまた新たな命になるって考えればよくない?って感じですが、ホルガの人々にとっては昔から続くお祭りであり風習なのです。田舎の小さな村なのに子供の数が多そうなのは、無理矢理命のサイクルを作り出してるからなんですかね。

めちゃくちゃグロい

アッテストゥパンで死んだ2人の無残な姿は衝撃的でしたね。顔がぐちゃぐちゃ。おじいちゃんは落下で死ねなくて、ハンマーで頭を叩き潰されるというのも凄まじかったです。明るい中でアップで映してくるし、グロさが凄まじかった。

また、サイモンが鶏小屋に吊るされていたシーンもヤバかったですね。裂かれた背中から肺を取り出して翼みたいに広げられて吊るされてたヤツ。あんな状態で生きてられるとは思えないんですけど、肺が動いてたのでまだ生きてるってことですよね。あれは血のワシと呼ばれる儀式的な処刑法だそうです。以下、wikiから引用です。

血のワシは後期スカルド詩に語られる儀式的な処刑法。サガで語られる二つの例によれば、犠牲者(どちらの例でも王族だった)をうつ伏せに寝かせ、刃物で肋骨を脊椎から切り離し、生きたまま肺を体外に引きずりだして翼のように広げるのだという。この処刑法が文学上の作り事なのか、それとも原文の誤訳に過ぎないのか、あるいは現実の歴史において行われていたものなのか、未だに議論の決着はついていない。ただし、キリスト教化以前のスカンジナビア半島において何らかの生贄の儀式が行われていたのは事実である。
出典:血のワシ – フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

実際に行われてたのかフィクションなのかはわからないということですね。”実際にはできない”とは書いてないということは、可能なんですかね、生きたまま肺を体外に引きずり出して翼みたいに広げるってことが…こわあああい!!!

マークが殺されるところは出てこないのですが、聖典ルビ・ラダーをこっそり写真に撮ってたジョシュの前に現れたのはマークの顔の皮を被った別の人間だったので、マークは顔の皮を剝がされて死んだということです。これも相当グロイですね。イングマールが子供達の遊びを『愚か者の皮剥ぎ』と呼んでいましたが、神木におしっこした愚か者のマークはこの遊びになぞらえて殺されたんでしょうね。最後に神殿に安置された時、マークは変な帽子を被らされてました。

残虐なグロとはまた違うかもしれませんが、クリスチャンがマヤの陰毛入りパイと経血入りジュースを口にしていたのは心底オエエッてなりました。気持ち悪すぎる。ラブストーリーの絵を見た時から気持ち悪いなと思ってましたが、何をしてる絵なのかはっきりわからなくて、最初おしっこ入れてるのかと思ってました。いや、おしっこでも気持ち悪いんですが。

新たな家族を手に入れたダニー

この映画は冒頭で家族を失ったダニーがホルガという新たな家族を手に入れる物語なんですよね。家族を失ったダニーは恋人のクリスチャンを拠り所にするのですが、残念ながらクリスチャンは人を支えられるような器を持った人間ではありません。ダニーのことを重荷に感じており、一年前から別れたがっているのに後悔するのが嫌でズルズル関係を続けている男です。ダニーもクリスチャンの気持ちには勘付いていて、それでも彼女には支えが必要だし他に頼る人がいないため手離すことができないんですよね。

映画を見ていればクリスチャンの人間性がどんどん明らかになるんですけど、ダニーの誕生日を忘れていたりジョシュの論文テーマを横取りしたり、なかなかクズな奴です。辛い経験で苦しんでいるダニーが頼れる男ではありません。そして、マヤとの性交を目撃してしまったことがトドメとなり、ダニーはクリスチャンを人身御供にすることを決定してしまうんですよね。クリスチャンはクスリを盛られて無理矢理マヤとさせられていた状況なわけですが、ダニーにとっては関係を終わらせる決め手になったんでしょう。

クリスチャンら生贄が捧げられた神殿が炎に包まれ、生きたまま焼かれるウルフが悲鳴を上げると、神殿の外にいた村民たちが狂ったように叫び悶え始めます。ダニーも泣きながら逃げるような動きをしますが、壮大で清々しいBGMをバックに最後には笑みを浮かべます。洗脳が完了したように見えました。クリスチャンとマヤの性交を目撃した時ダニーは泣き喚き、村の女性達はダニーに同調するように一緒に喚きましたよね。あのシーン、出産する一人の女性を大勢の女性が周りで励ましてるみたいな、そんな一体感がありました。あの瞬間、もうダニーはこの共同体に取り込まれているし、同調してくれるこの人達をダニーは受け入れるんだと思いました。それに、生贄を選んでしまった時点でダニーはこの共同体の仲間入りしちゃってるんですよね。

メイクイーンになったダニーが色鮮やかな花冠をかぶり、植物に彩られた椅子に座って皆で食事をするシーンがありましたが、花や料理に出て来た肉が呼吸してるみたいに動いてるのが不気味でした。最後はまるで花に取り込まれてるみたいに全身花まみれになっていましたよね、ダニー。クリスチャンは酷い男だったけど、新たに手に入れた家族はもっとヤバイもんだと思います。

大祝祭とペレに関する謎

『ミッドサマー』の公式サイトや祭りの開会式らしき挨拶では”90年に一度の大祝祭”だと謳われています。ですが、歴代メイクイーンの写真が飾られていることから察するに夏至祭はもっと頻繁に開かれてるように思えるし(カラー写真がいくつもありますよね?)、72歳になった老人は全員アッテストゥパンされるみたいだし、一体どの部分が90年に一度なのかよくわかりませんでした。

人身御供の儀式が90年に一度なのかなとも思いましたが、ペレは両親のことを炎の中で死んだと言っていて、この儀式で生贄にされたことを匂わせてますよね?ペレの両親の死が90年前なわけないので、そうするとこの人身御供の儀式も別に90年に一度というわけではなさそう。ペレの両親が生贄にされたとすればですけどね。このあたりが謎でした。

次にペレについてですが、ペレは人身御供にするためにクリスチャン、マーク、ジョシュを祭りに招待したわけですが、ダニーを祭りに誘ったのはクリスチャンでしたよね。ダニーが参加することになったのはペレにとって予定外なことだったはずです。こんな儀式を目撃した外部の人間を外へ帰せるわけないので、ペレにとって招かれざる客となるダニーは洗脳してしまうか殺すしか伝統を守る道はないはず。幸運にもダニーは家族を悲惨な形で失ったばかりで、支えを必要としていました。弱っている人につけ入って洗脳するのは宗教勧誘の手口ですから、ダニーは洗脳しやすい状態だったわけです。ダニーが参加することになった時点で彼女がメイクイーンになるよう計画を立て、好意を寄せているふりをして優しく接し、彼女をコミューンに引き込んだとも考えられますよね。ダニーを洗脳してクリスチャンを生贄に選ばせることはペレの筋書き通りだったのかもしれません。実際のところはわかりませんので謎ですけど。本当にペレはダニーに好意を持ってたのか、ダニーがメイクイーンになったのは偶然なのか、気になります。

異教・異文化を認めるという難しさ

大概の人にとってホルガ村は頭のおかしい狂ったカルト集団ですよね。最後のトランス状態に入ったみたいな描写とか、まさにカルトっぽい。でもホルガ村の人間にとってこの祭りは長く続く伝統であり風習なんです。72歳でアッテストゥパンされることも人身御供に選出されることも受け入れ、喜びを口にしています。私は信じている宗教とかないので彼らの気持ちは全く理解できないし、本当に心から喜びを感じてるの?なんて疑問すら抱きますが、世界には自爆テロを遂行できる人がいるんですから、信仰のために命を捧げることができる人は普通に存在するんですよね。

異教徒が信じて繋いできたものを、文化や価値観の違う人間が否定することは色々な問題を孕みます。ホルガ村は同意のない外部の人間を巻き込んでいる時点で許されるわけがなく、カルト扱いされて否定されるのも当たり前なのですが、もしも彼らが内部だけで祝祭を完結させていたらどうでしょう。あれらの儀式は許されますかね?関係のない誰かが否定して潰してしまってもいいものなんですかね?

自分に影響のない遠い世界で存在してる分には好きにしてくれ程度には思うでしょうけど、身近に存在して自分の大切な人が洗脳されでもしたらそうも言ってられなくなるかもしれません。いくら小さなコミューンの中と言えど、受け入れられない人間も絶対に出てくるはずで、現代の価値観からするとそういう人に無理強いすることもダメなはずです。信仰者が増えて勢力を得られても怖いですよね。

多様性の尊重が声高に叫ばれるようになった現代で、私たちはホルガ村のように全く違う価値観の中で生きる人達をどこまで受け入れることができるでしょう。欧米をはじめとする先進国に普及している価値観こそが正しくて、それを基準に他の文化を受け入れるか断罪するかを決めるというのも傲慢ではありますね。

最後に

音楽の不気味さも良かったですね。オープニングの物悲しくどことなく不気味な歌声から唐突に爆音で電話が鳴った時はめちゃ怖かったですし、家族を失ったダニーの慟哭と不穏な旋律が絡み合ってタイトルが出るところも凄く良くて、不穏な出だしとしては最高でした。

2回見るとキャラの運命を示唆している伏線なんかにも気づけて面白いんですが、個人的には全体的にちょっと冗長だなと感じました。「この祭りやべー!」ってなるのがアッテストゥパンですが、そこに至るまで一時間くらい経過してますし、不安感や薬物の影響による心理描写が丁寧な分そこからも長い。ハラハラドキドキするような緊張感のある展開が続くというわけではないので、ちょいちょい集中力が切れてしまいました。

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