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Netflix『ビリー・ミリガン:24の人格を持つ男』ネタバレ感想:多重人格で知られる男のドキュメンタリー

『ビリー・ミリガン:24の人格を持つ男』

Netflixのリミテッドシリーズ『ビリー・ミリガン:24の人格を持つ男』シーズン1全4話を視聴しました。ドキュメンタリー作品ですね。ドキュメンタリー作品って感想や考察をあんまり書けないですけど、面白くてつい見ちゃいます。

予告動画

ネタバレ感想

ビリー・ミリガンってどういう人?

ビリー・ミリガンは1977年のアメリカ・オハイオ州で起きた3件の連続レイプ事件及び強盗の犯人として逮捕・起訴されたのですが、「多重人格障害」だと診断されて無罪となったことで有名になりました。多重人格障害は当時の名称で、現在は「解離性同一症」と呼ばれています。ここでも「解離性同一症」と記していきます。

ダニエル・キイスの『24人のビリー・ミリガン』という本によって、日本でもビリー・ミリガンのことは広く知られるようになりました。私は本を読んだことはないのですが、ビリー・ミリガンは解離性同一症の人だということは知っています。解離性同一症と聞くと真っ先に彼の名前を思い浮かべるくらいには、そのイメージが強くついてますね。そして、解離性同一症になんとなく危険なイメージがつきまとっているのは彼の事件の影響のような気がします。

解離性同一症は、トラウマになるような極度の恐怖やストレスを体験することが原因で引き起こされる精神障害です。特に、幼少期に激しい虐待などを受けていた人に多いと言われています。虐待児が別人格を作り出し、苦しみや痛みをその別人格に引き受けさせる、というようなことをよく聞きますよね。

ビリーも、母親の再婚相手であるチャーマーから酷い虐待を受けていました。最早拷問と言えるような内容で、ビリーの兄妹の証言を聞いているだけで酷い怒りが込み上げてくるほど、胸糞悪かったです。しかも、近所の人間もチャーマーの暴力や虐待には気づいてたみたいで、ビリーの幼少期の友人が「私があの時警察に通報していれば…」なんて後悔を口にしていました。家族外の子供にもそんなトラウマ植え付けてるような暴力クソ男の元で健全に育つわけもなく、ビリーは自分の中に別の人格があることを知らないまま成長し、大人になってから連続レイプ・強盗事件を起こしました。

ビリーの弁護人達がビリーの異常に気付き、精神鑑定を経て解離性同一症であると診断され、彼の中には10の人格があることが判明します。犯行に関わったのは主人格のビリーではありませんでした。そして、後にさらに増えたのか新たに発見されたのかよくわからなかったのですが、最終的には24もの人格があると結論付けられました。ビリーの別人格達は性別も年齢も様々で、性格は勿論、話し方や声のトーン、座り方もそれぞれ違っていました。それだけでなく、英語のアクセントが異なる人格や、アラビア語などの他言語を理解する人格もあり、IQテストの結果は知的障害レベルから天才レベルまで日によって異なったそうです。また、ビリーはかなり絵が上手でしたが、人格によって絵のタッチなども様々でした。

人格によってアクセントが変わったり他言語を理解したり、さらにはIQテストの結果まで変わるとなると、脳の働きが人格によって異なってるように思えますよね。不思議すぎて何が起こってるのかさっぱりわかりません。人格って何なんでしょう。

精神障害を理由に無罪となったことで当然賛否が巻き起こりました。その後も、本を出版したことを非難されたり、劣悪な精神病院での生活を余儀なくされた後に脱走したりと、騒ぎに事欠かない人生を歩み、2014年に59歳で癌で死去しました。1977年のレイプ事件以外にも度々事件を起こしており、2件の殺人をも起こしている可能性があるらしいのですが、まだDNA鑑定がない時代で決定的な証拠はなく、犯人と断定はできないようです。

病か、詐欺か

ビリーの事件は世間の注目を集め、大勢の精神科医や心理学者達がビリーの診断や治療に関わりました。当時は今より未解明の部分が多かったでしょうし、正確な診断は難しかったと思います。ビリーは本当に解離性同一症なのか?本当はただ演技しているだけで狡猾な詐欺師なのではないか?などと考える人も多くいたみたいです。作中のインタビューには当時関わった医者や心理士、弁護士・検察・警察官、家族・友人、記者など大勢が出てくるのですが、彼らの中にもビリーの病気を疑っているような発言をする人がいます。精神医学の専門家であってもです。ビリーの人格がセラピストの治療過程でどんどん増えて行ったこと、ビリーが他の患者に言語の翻訳を依頼していたこと、事件が話題になってからアメリカで解離性同一症が急増したことなど、疑うに足る理由は確かにありました。

私は最初、ビリーを同情的に見ていました。義父チャーマーが極悪すぎたので精神が病むのも当然だと思ったし、被害者のことを考えるなら有罪にすべきだと思うものの主人格以外が起こした犯罪の責任を負わされることが正しいことなのかわかりませんでした。
でも、話が進むにつれて専門家もビリーに対する疑念を口にし始め、ビリーにはソシオパスの特徴があったような発言も出てきます。そして、ビリーは姪に自分がしてきた悪事を自覚していたような発言をしていたみたいです。インタビューに登場する人達がビリーのことを「賢くて創造的で人を操ろうとする人間」と表現し、私も少しずつ解離性同一症のフリをしていた詐欺師なのかもという疑念を意識し始めました。

とは言え、見終わった後の所感としては、ビリーは本当に解離性同一症だったのだろうとは思います。IQが変わるだとか、アクセントや絵のタッチが異なるだとか、いくら賢かったとしてもボロを出さないように複数の人格を使い分けてみせるなんて無理があると思うんです。ただ、事件を切っ掛けに世間の注目の的となったこと、解離性同一症だったことで罪を免れたこと、多数の医者の元を回されたり劣悪な精神病院に置かれたりしたことなどが影響し合い、病気を自覚した後は「フリをする」行動も取り始めたのではないかなぁ。本当のところは全然わかりませんが。

ビリーには義父の暴力や社会の悪意に晒された可哀想な面はあるけれど、ビリーが起こした事件の被害者の立場からすると無罪放免となったのは到底許せないことですよね。ビリーが本当に病気だったかどうかとは別に、病気を理由に無罪となることの問題などは考えていかなければいけないと思いました。適切な治療を受けてまともな人間になれたのならまだ良かったものの、問題行動を繰り返してばかりいたのでは余計に被害者が救われません。

あと、このドキュメンタリーを見ていて気になったのは、まるで解離性同一症自体が嘘の病気と言っているようにとれる発言がちょいちょいあったことですね。精神医学教授の発言だったので「こんな病気自体を否定するような発言いいの?」って感じたんですが、解離性同一症が医原性であると考える専門家はいるようです。医者と患者が作り上げたものだという考え方です。未だに診断は難しいようですし、専門家でも考え方が異なるのはよくあることでしょうけど、DSM-Vに載ってる病気に対してこういう取り上げ方をするのは大丈夫なのだろうかというささやかな疑問が拭えませんでした。まあ、このドキュメンタリーにも度々出てきた『シビル』という女性の解離性同一症騒ぎが、医者と患者が捏造した可能性が高いという検証本が出されているらしいですし、病気の解明が進んでこの先どうなるかはわかりませんが。ただ、この病気に苦しんでいる人を傷つける発言なんじゃないかなぁと思った次第です。今や解離性同一症は医原性だという考え方が主流だとしたら私が勉強不足なだけです、すみません。

最後に

内容はとても興味深くて面白かったのですが、1話が1時間前後あるので結構見るのが大変でした。あと、大勢の関係者が出てインタビューに答えているのですが、誰が何の人だったか把握しきれなくて、「これ誰だっけ?」となるのがちょっと苦痛でした。初回登場時には名前と職業やビリーとの関係を出してくれるんですが、それ以降は出してくれなかったりするので。それと、もうちょっと色んな交代人格の映像が見たかったです。残ってないのなら仕方ないですけど、ほとんどアーサーしか見れなかったような。