『ナルコス』シーズン1全10話ネタバレ感想:面白すぎる!実在した麻薬王との戦い
Netflixドラマ『ナルコス』シーズン1を全話視聴しました。2015年に配信開始されてからずっと気になっていたドラマだったので、もっと早く見れば良かったと後悔しました。めちゃくちゃ面白かったです!!
シーズン1ではコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルとアメリカ・コロンビア政府との戦いを描いています。事実から着想を得たフィクションという位置付けですが、実在の人物・組織・事件などが多数出て来て、何が事実で何が虚構なのか私には全くわからないです。ドラマ中、実際の映像や写真なども随所に使用されています。
シーズン3で完結しており、現在『ナルコス:メキシコ編』がシーズン2まで配信されています。既に完結してるしネタバレ踏みたくないので、記事書かずに全部ぶっ通しで視聴したいところでしたが、ちゃんと残しておきます。
原題は『NARCOS』です。”narco”はスラングで「麻薬」「麻薬捜査官」「麻薬密売人」などの意味があります。
あらすじ
1970年代後半から1980年代初頭のコロンビア。酒や大麻の密輸で荒稼ぎしていたパブロ・エスコバルはチリ人のコカイン製造者と手を組み、マイアミへの密輸ルートを確立。莫大な資産を築く。コロンビアから大量のコカインが流れ込むにつれ、マイアミの治安はどんどん悪くなった。やがて、大量の金がアメリカからコロンビアに流れていることに気づいたアメリカ政府はこれを問題視し始める。アメリカの麻薬取締局(DEA)の捜査官であるスティーブ・マーフィーとハビエル・ペーニャは、コロンビア政府や軍と協力しながら麻薬王となったエスコバルを追う。
予告動画
登場人物&キャスト
複数の麻薬組織に加え、アメリカ政府側やコロンビア政府側や軍人やら、いろんな立場の人間が多数出て来て関係把握が中々大変です。一部の主要人物のみ紹介します。
スティーブ・マーフィー
1980年代に入って世界市場を急速に支配したコカインの掌握をめぐり、あらゆる勢力が衝突する様子を実話に基づきリアルに描く。9月2日より全10話一挙配信。#ナルコス pic.twitter.com/3Bf1cyYzEw
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) August 15, 2015
DEAの捜査官で物語の語り手。マイアミで麻薬捜査をしていましたが、コロンビアからの麻薬流入を阻止するべく現地へ派遣されます。てっきりドラマで創作されたキャラだと思っていたのですが、実在の人物だそうです。演じているのはボイド・ホルブルック。甘いフェイスにヒゲが可愛らしいイケメンです。
ハビエル・ペーニャ
悪党を捕えるためなら悪事もやむなしだ。/ハビエル・ペーニャ #ナルコス #Narcos pic.twitter.com/NxRHJAudoI
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) October 12, 2015
DEAの捜査官でマーフィーの相棒。スペイン語が堪能です。私はしばらく、現地の警察官だと思ってました(笑)。女好きです。ペーニャも実在の人物です。演じているのはペドロ・パスカル。ゲースロのオベリン・マーテルですね!彼が出演してるということで、このドラマを見たいと思っていました。
パブロ・エスコバル
人生は見かけよりも複雑だと密売人<ナルコス>の世界から学んだ。
―しかし、現実は想像を超えていた。#ナルコス pic.twitter.com/MloqygEcLs
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) September 25, 2015
「史上最も凶悪非情な野心に満ちた麻薬王の一人」として悪名を轟かせたコロンビアの麻薬王。コロンビア最大の麻薬密売組織である『メデジン・カルテル』の創設者で、フォーブス誌の世界長者番付で7位に掲載されたことがあります。麻薬密売人でありながら一時は大統領の座をも狙ってました。極悪非道な人間ですが母や妻子への愛は深いです。演じているのはヴァグネル・モウラ。
グスタボ・ガビリア
エスコバルのいとこで右腕。直情的なエスコバルに対して冷静で、メデジン・カルテルのブレーン的な存在でした。エスコバルとの絆は深く、エスコバルが最も信頼している男です。演じているのはフアン・パブロ・ラバ。
オラシオ・カリージョ
Losing isn’t an option. #Narcos pic.twitter.com/TRdDrScEUN
— Narcos (@NarcosNetflix) November 11, 2015
コロンビア軍の大佐でエスコバルを捕まえるために結成された特捜隊の隊長。エスコバルとの戦いで多くの部下を失っています。軍内部にはエスコバルに買収された人間も多く、上層部とは軋轢があるしで大変な役回りですが、マーフィーとペーニャが唯一信頼している軍人です。拷問も厭わない冷徹な面もあります。演じているのはモーリス・コンプト。
ゴンサロ・ロドリゲス・ガチャ
That’s what happens when you mix drinks. #Narcos pic.twitter.com/9kkKzvSaiv
— Narcos (@NarcosNetflix) November 8, 2015
コロンビアの麻薬密売人でメデジン・カルテルに参加する一人。テキーラと帽子を愛好しており、愛称は”メキシカン”。時にはパートナーをも殺害する凶暴で容赦のない男です。演じているのはルイス・ガスマン。
パチョ・エレラ
メデジン・カルテルのライバルであるカリ・カルテルの幹部。演じているのはアルベルト・アンマン。
ネタバレ感想
実在した麻薬王エスコバルを知る
『ナルコス』シーズン1は実在したコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルがコカインで麻薬王に上り詰め、麻薬戦争を引き起こし、実質彼の勝利となった「ラ・カテドラル」への収監とそこからの脱走までを描いています。なので、シーズン1ではまだ決着がついてないです。が、どこまでが事実か等が気になってwikiも見てしまいましたし、彼が今後どうなるかは大体把握しました。
カルテルとか麻薬戦争とか、言葉は聞いたことはあっても日本に生まれ育った私には全くピンと来なくて、ドラマを見るまで正直よくわかってなかったです。メキシコのリゾート地を旅行したことがあるのですが、メキシコの一部の地域はカルテル同士の抗争が激しくて治安が最悪だということで、ネットで情報収集した時にカルテルの残虐ぶりにヒエッとなったことがあるぐらいです。日本にいると遠い世界の出来事ですよね。エスコバルは有名な麻薬王ですが、私は全然知りませんでした。歴史のお勉強にもなるドラマです。
ドラマにおいてエスコバルは当然悪人として描かれていて、目的のためなら民間人ごと爆破テロしちゃうようなめちゃくちゃ恐ろしい人間なんですけど、すっごい魅力的なんです。イケメンだとかそういうことじゃないんです。悪人として魅力的というか。悪のカリスマ性や悪知恵が申し分なくあると同時に、世間的にはどうしたって認めてもらえないことへの圧倒的な承認欲求を見せるあたりにとても人間味を感じました。結末を知っていたとて、彼との戦いがどうなるか気になって仕方ないです。そう思えるのは、エスコバルが悪人として魅力的に描かれてるからです。
エスコバルはめちゃくちゃキレ者で、警察や治安局の人間の顔と名前を徹底的に覚え、家族構成まで把握し、脅しを混じえながら賄賂で彼らを買収し、良質なコカインをマイアミに密輸することで巨万の富を築きました。最初はアメリカ人のジャケットの裏に忍ばせたり、コロンビアの女性達にコカインの入った小袋を飲ませたりと少量ずつ流していたのですが、あれよあれよと量が増えて空輸ルートを開拓するに至ります。元CIAのバリー・シールも密輸人として出てきます。トム・クルーズ主演で『バリー・シール』という映画がありましたね。
一大麻薬消費国であるアメリカへの密輸により莫大な資産を築いたエスコバルは、なんと当時のGM(ゼネラルモーターズ)より稼いでいたそうです。資金洗浄のためにダミーのタクシー会社を持ってましたが、それでは辻褄が合わないぐらいに稼いでいたので、コロンビアの色んな土地に現金を埋めていました。
一方で、エスコバルは貧困層のために住宅や施設を作るなどの社会事業も行っていました。隠しきれない現金を直接庶民にばらまいたりもしています。麻薬密売人でありながら大統領の座を狙って議員選挙に出馬したエスコバルにとって、この事は追い風になります。当時のコロンビア一般市民には彼が麻薬密売人だとは広く知られてなかったため、庶民にとっては救世主でした。ここだけ見れば、善行ですよね。
それにしても、裏稼業の人間が大統領を目指すって、通常じゃ考えられないですよ。自分の国のトップが麻薬で財を築いた人間だったらどうします?やべー国どころじゃないです。グスタボも反対してたし、政界進出を目指してからエスコバルはどんどん暴走していくので、悪手でしたね。ただ、貧困層の支援をしていたのは政治パフォーマンスだけではない思いがあるように見えたし、支配者層である政治家に対して不満を漏らしてましたら、彼なりに国を憂う気持ちは確かにあったのかもしれません。
メデジン・カルテルの設立と政府との対立、泥沼の麻薬戦争へ
エスコバルはガチャ、オチョア兄弟などの有力密売人達とメデジンの地で会合を開き、メデジン・カルテルを結成します。私兵を集めて訓練し、武器を揃え、軍のような組織を作り上げます。資金があるぶん、軍よりも最新の装備を持ってることもあるわけです。
エスコバルは選挙に勝利しますが、エスコバルの逮捕写真を手に入れた法務大臣ララの追及によって早々に辞任する羽目になりました。麻薬組織と敢然と戦う姿勢を示したララは、エスコバルの指示によって暗殺されてしまいます。これによりコロンビア政府は対策を迫られ、アメリカとの犯罪人引渡し条約に合意するのです。これが密売人側の抵抗を激化させました。
なんと当時のコロンビアでは、密売人は服役中でもセックスや娯楽三昧だったそうです。買収すれば減刑もできたみたいで、全く刑罰として機能してなかったと言わざるをえません。アメリカに引き渡されたら狭い独房で地獄の日々を送ることになるので、密売人にとってはクソくらえな条約だったのです。コロンビアの刑務所事情には呆れますが、それだけ売人に買収されまくってるってことですよね。引渡し条約に頼るより自国の状況をどうにかするべきでしょうが、どうにもならないからこんな有様なんでしょうね…。
エスコバルは大統領候補の暗殺、航空機爆破テロ、有力者達の誘拐など、手段を選ばぬ過激なやり方で政府との対立を深め、泥沼の麻薬戦争へと突入していきました。エスコバルのやり方を疑問視するカルテルのメンバーも出るし、グスタボでさえも時に苦言を呈していましたが、エスコバルは自分を信奉している人間でさえも目的達成のためなら容赦なく殺す独裁的な人間ですから、徹底的に争う姿勢は崩せませんでした。
政治家であるだけで命を狙われるなんて、今の私の生活からは考えられない治安の悪さです。大統領の家族というだけで安全のために国を離れないといけないんですから、家族も気が気じゃないでしょう。政治家が命がけの職業になる世界です。もちろん、罪のない一般市民も巻き添えになりました。
爆弾テロに怯える生活を強いられる市民も政治家も次第に疲弊していき、交渉のテーブルにはつかない姿勢を取っていた政府も、結局はエスコバルの出した要求を呑む形で彼を「ラ・カテドラル」と呼ばれる豪華な刑務所に収監することになります。エスコバル自身が建てたホテルみたいな刑務所で、サッカー場までついてます。実質、コロンビア政府はテロに屈したんです。これ以上の犠牲に耐えられないという気持ちはわかりますが、テロに屈するというのは政治的にはよろしくありません。でも、自分の国が同じ状況になった時、屈してはならないって言い続けられる自信はないですね…。
エスコバルを追う2人のDEA捜査官
『ブレイキング・バッド』を見た時に初めて、アメリカには麻薬取締局(DEA)という組織があることを知りましたが、まさか国外でも活動しているとは知りませんでした。アメリカの組織ってすごい色々あるし不思議ですね。
ドラマの主人公はマーフィーで、マーフィーもペーニャもカッコ良いんですが、いかんせん魅力的なキャラが多くて、DEA2人の影がちょっと薄いように思いました。
やはりエスコバルの圧倒的な存在感が飛びぬけてるし、悪人側だけどグスタボには共感しやすさがありました。エスコバルの妻も、あまり前面には出てきませんがボスの女って感じの覚悟と度胸があってカッコイイです。コロンビア政府側にもカリージョやララ法務大臣、サンドバル副大臣などの応援したくなるキャラがいます。コロンビアの政治家、若いイケメンが多くて羨ましい(実際は知りませんが)。
エスコバルとの戦いに関わり始めてから、マーフィーの精神が非常に昂ってきているのが気になりますね。自分が車を追突させた側なのに抗議する一般市民に銃を突きつけたり、密売人達を一層するために罪のない一般人を巻き添えにしたりと、だいぶ攻撃的になってきてます。戦争ですから、兵士に起きるような反応がマーフィーにも起きてるっぽいですよね。
一方で、ペーニャは慣れてそうです。ペーニャはコロンビアに長くいるんですかね。ペーニャの活躍がもっと見たい。
ところで、パチョにマーフィーの情報を流したのはCIAの人なんですか?
決して善vs悪ではない
コロンビア政府&アメリカ政府vs麻薬カルテルの戦いですが、決して善vs悪の戦いではないんですよね。
まず、政府側がクリーンで正々堂々とした善というわけではありませんから。ドラマでも言われてましたが悪党はルールを守らないから強いので、エスコバル相手に政府側だって1から10までルールを順守したりはしません。マーフィーが一般市民に犠牲を出したことや、セサル大統領がサンドバル副大臣の命を利用したことを見れば、彼らが潔白な正義とは言えないでしょう。
コロンビア政府とアメリカ政府も、正義のために連携し合ってる関係ではありません。コロンビア政府としては国の威信のためにアメリカの介入は極力阻止したがっています。それぞれの思惑や利害があるんですよね。
そして、多くの人間にとって多大な犠牲を出したエスコバル側が悪であることは揺るがないですが、彼らには彼らの正義がありました。マーフィーも「善悪は立場によって変わる」ことを密売人の世界から学んだとナレーションで言っています。実際、市民にまで攻撃の手が及ぶようになるまでは、貧困層にとっては腐敗した政治家よりエスコバルの方が善だったでしょうね。
エスコバルは違法な商売で成り上がった人間ですが、コロンビアの腐敗した政治家達も違法行為をしてることなんて想像に難くないし、「ラ・カテドラル」への突入でセサル大統領はサンドバル副大臣を利用するという汚い手も使いました。議員となったエスコバルを辞職に追い込んだララ法務大臣も、後に恥じるとは言え悪事に目をつぶって献金を受けてるんです。軍や警察にも金に目が眩んで買収された人間がたくさんいるし、買収されていないカリージョも拷問や私刑のようなことをしています。
エスコバルから見れば、お前らだって汚いことをやってるじゃないかという気持ちでしょう。支配者層の人間なら悪事を働こうが世間的に認められる地位の椅子に居座ることを許されるのに、GMよりも稼ぐ能力があって貧困層の支援もした自分は裁かれるというのは理不尽に感じたかもしれません。それが政治家達への憎悪を肥大させ、戦争への暴走となったように見えました。
最後に
シーズン2もめちゃくちゃ楽しみです。カリ・カルテルも動きを見せそうですね。
麻薬カルテルもヤバいですけど、コロンビアの腐敗っぷりもヤバいですよね。政治家にも軍にも警察にも入国管理局にも買収されてる人がいて、もう滅茶苦茶です。
これ、シーズン2でエスコバルとは決着がつきそうな気がするんですけど、シーズン3までエスコバルの話は続くんでしょうか。