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『パラサイト 半地下の家族』ネタバレ感想:スクリーン最前列の苦痛も凌駕する、目が離せない面白さ

パラサイト 半地下の家族

ブログを始めようと思い立ち、記念すべき(?)最初のレビューになるのはこちら、『パラサイト 半地下の家族』です。
わたしが本作を鑑賞したのはお正月頃で、韓国映画初のパルムドール受賞・アカデミー賞ノミネートが話題になっていた頃です。住んでる田舎のイオンの映画館では上映しておらず、上映予定にも載っていなかったので、丁度お正月で帰省した時に地元の映画館で鑑賞しました。ちょっと映画館について愚痴らせてください。最前列の真ん中の数席しか空いてなかったので、仕方なくその座席券を買ったのですが、これがもう想像以上に見えない。最前列は初体験かどうか覚えてないんですけど、こんなに見えない位置に座席作っちゃだめじゃないですか!?予告中、映画館の設計に対して怒りで腸が煮えくり返ってました。これで同じ料金って頭おかしいのでは!プレミアシートとかいって、いい場所の席は高くしてるのに。首も目玉も痛くておかしくなりそう。スクリーンの上のほうなんて見えませんもん。左右の端の方も首の向きを変えないと認識できない。2020年にもなってこんなクソみたいな設計のままでいいの!?どの位置からでも快適に見えるようにしてくれい!こんなの疲れるし、つまらなかったら寝ちゃうぞ!って思ってたけど…
結果、面白くて一瞬たりとも寝ませんでした。
ただ、とにかく疲れたし、役者さんの顔を認識するのさえ一苦労でした。最前列なんかで見るものじゃありませんね。

映画館の愚痴が長くなってしまいました。未見の方は事前情報やネタバレを見ずに鑑賞した方が絶対に楽しいのでここから先は立ち入り禁止ですよ~!

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本ページの情報は2022年7月時点のものです。現在は配信終了している場合もありますので、最新の配信状況は各動画配信サービスの公式サイトにてご確認ください。

あらすじ

半地下物件に住む貧困のキム家は、父ギテク、母チュンスク、息子ギウ、娘ギジョンの全員が無職状態。宅配ピザの箱を組み立てる内職に勤しみながら日銭を稼いでいたある日、ギウの友人ミニョクが訪ねて来る。名門大学に通うミニョクは、留学する間教え子ダヘの家庭教師を代わりにしてくれないかと頼み込む。高台に住む富豪パク家へと面接に向かったギウは、ダヘとその母親ヨンギョの信頼を得、無事家庭教師として雇われることに。ヨンギョ夫人は息子ダソンの美術教師も探している事を知り、ギウはある計画を思いつく…。

作品情報&予告動画

原題기생충
監督ポン・ジュノ
脚本 ポン・ジュノ&ハン・ジンウォン
音楽チョン・ジェイル
撮影ホン・ギョンピョ
編集ヤン・ジンモ
出演者 ソン・ガンホ
イ・ソンギュン

ネタバレ感想

登場人物を整理しておきます。
■半地下に住むキム一家
ギテク(父):失業続きの楽天家
チュンスク(母):元ハンマー投げのメダリスト
ギウ(息子):大学受験に何度も失敗
ギジョン(娘):美大を目指してるが専門学校に通うお金がない
■高台に住むパク一家
ドンイク(父):IT企業の社長
ヨンギョ(母):若くて美人で騙されやすい
ダヘ(娘):大学受験の勉強中
ダソン(息子):幼く落ち着きがない
ムングァン:パク家に住み込みで働く家政婦

韓国の貧困層である半地下家族、キム一家

わたしは半地下という物件があることを知りませんでした。映画が始まった時点で、誰かの家の地下に勝手に住み着いてるのかと思いました。タイトルがパラサイトですし…。日本ではあまり聞かないと思いますが、韓国では「半地下」は「貧困の象徴」であるようです。その名の通り半分地下にある物件で、窓からは少し地上が見えます。この半地下の家のトイレ、個室になってないどころか扉もなくて丸出しでびっくりしました。なぜこんな位置に便器が、って不思議だったんですけど排水管の位置的にトイレが高い場所に来るようですね。しかし、扉もなくオープンである必要はあるんでしょうか(笑)。

窓を開けていると、突然路上で白い煙が撒かれます。消毒を散布しているんですって。韓国では路上に消毒撒くの?便所コオロギが退治できるかもと敢えて窓を開けておくキム一家。もくもくと侵入してきた白い煙は体に悪そうです。組み立てたピザの箱にも消毒薬がついてそうで、衛生的に大丈夫なのか気になります。

ホームレスではないけれどもギリギリの生活。「半地下」は、半分地下で半分地上。それはキム一家がおかれた状況でもあるのです。

ギウの友人ミニョク

物語が動くきっかけとなったのがギウの友人、ミニョクです。ミニョクは有名大学に通う大学生。手土産に水石を持って久しぶりにギウの家族を訪ねてきました。ミニョクが留学する間、教え子ダヘの家庭教師をギウに頼むわけですが、これによってギウは富豪との繋がりを得ます。

ミニョクはダヘに好意を寄せていてそれをギウに伝えているわけですが、ギウはあっさりミニョクを裏切って、ダヘに手を出してしまう。最初わたしは「おいおいギウよ、あっさり友人を裏切るのかい?富豪を紹介してくれた恩人ぞ?」と思いました。けど、ミニョクが大学の友人ではなくギウに家庭教師を頼んだのは、「ダヘがこいつに惚れることはないだろう。こいつなら安心だ」という見下しがあったのではないでしょうか。勿論彼が意識的にそういう計算をしていたかはわかりませんが、一見好青年ぽいミニョクをそういった差別心を孕んでいるキャラクターとして描くことで、韓国の格差問題を投影しているのかもしれません。半地下一家に金持ちの道楽みたいな水石を持ってきたことだって嫌みったらしくも思えますしね。母チュンスクは「食べ物がよかった」と言っていました。今のところ貧困ではないわたしだって菓子折りの方が嬉しいですよ。

ミニョクに憧れや劣等感を抱いていたであろうギウにとって、ミニョクが好意を抱いている女の子が自分を好いてくれているということは、唯一の優越感になったことでしょう。ギウはダヘを本当に好いてはいないと思います。ミニョクが好きな女の子だから、だったと思う。物語の後半、危機に直面するギウが「ミニョクならどうする?」と考える場面があります。あそこで名前を出してきたのは意外でしたが、それほどギウにとってミニョクは憧れであり、正しさであり、ヒーローだったのでしょうか。留学から戻ってきたらどうするつもりだったのでしょう?

絵に描いたような富裕層、パク一家に入り込むキム一家

仕事がめっちゃできる夫に若くて美人な妻、二人の子供に家政婦がいる暮らし。ミニョクがギウに紹介したパク家はまさに富豪一家です。この映画では高低・階段・カメラワーク等を用いて巧みに格差を表現しているので、そこに注目すると良さそうです!高台に住む金持ちと半地下の貧乏人も対比になってますよね。ちなみにわたしは全く意識していなかったので、次見るときは注目しておきたいです…。

富豪パク家では母親ヨンギョのキャラクターが良い味を出してると思います。彼女はお世辞にも有能な人間とは言えませんが、美貌と愛嬌のおかげで憎めないしルー大柴みたいな英語交じりの会話はコミカルでした。彼女はいわゆる「トロフィーワイフ」(この言葉は好きではありませんが…)で、キム家の妻が「メダリスト」という設定と対になってるんでしょうね。

ギウはうまくヨンギョ夫人の信頼とダヘの恋心を掴みとって家庭教師に就任しますが、なんとそこから妹・父・母も絵の家庭教師・運転手・家政婦として次々に富豪一家に雇われていきます。元々いた運転手と家政婦を謀略により解雇させ、全くの他人として家族を紹介して入り込んでいったのです。パク家が付け入れられすぎではありますが、キム家は実は有能なんじゃないですかね。任された仕事は皆問題なくこなしてるみたいですし。特に娘のギジョンは偽造文書なんかも作成できるし、出鱈目なことを言葉巧みに尤もらしく言って相手を信じ込ませることもできて世渡り力は高そうです。まあ、能力があるだけでは貧困から脱せないから格差社会になるんでしょうね。。兎にも角にもこうしてパラサイトが完成し、わたしは「なるほどねー!」とタイトルに納得したのでした。

元家政婦が地下に忘れてきたもの

富豪パク家にパラサイトした半地下キム家は、パク家が息子ダソンの誕生日にキャンプに出掛けた隙に、留守になった豪邸で勝手に飲み食いをし騒ぎ始めます。調子乗り出したよ、これはやりすぎって思いましたね。大雨が降りだしたその夜に、前任の家政婦ムングァンが訪問してきたことで事態が一変します。家政婦が地下に忘れてきたものとは一体何なのか、わたしには予想もできませんでした。パク夫妻も存在を知らないという隠し扉を開け(開け方がすごい!)、地下へ続く階段を下りた先の部屋にはひとりの男がいます。なんとムングァンの夫です。富豪の邸宅の地下には別の人間が既にパラサイトしていたのです。しかも、この豪邸がパク一家より前の持ち主の時からパラサイトしているんですよ。地上の家族、半地下の家族、そして完全地下の家族。2つの家族の物語だと思っていたら中盤になって3つ目の家族の存在が明らかになり、前段で「なるほど、これでパラサイトか~」なんて納得していたわたしは展開にゾワっとしました。パク社長が言っていた「あの家政婦は2人分食べる」というのは、地下に家政婦の夫がいることの伏線だったのです。「よく食べそうだもんな」ぐらいにしか思ってなかったですよ。

大雨

ギテク達が家族である証拠の動画を手にして脅しをかけるムングァン夫妻ですが、パク一家から豪雨でキャンプできないから戻ってくるという電話が入ります。飲み食いして騒いでる時に、「ここで一家が帰ってきたらあんたたちはうちのゴキブリみたいにサーッていなくなるんだよ」なんてことを上機嫌でチュンスクが言っていたと思いますが、これは当然伏線でしたね。家にいるはずがないギテクたちはゴキブリの如くソファやベッドの下などへ隠れるしかないのです。こんな大雨なんだからキャンプできなくて帰ってくるかもって、普通思いませんか?そういう用心がないのがダメなところでしょうね。

帰ってきたパク夫妻はギテクについて話し出します。パク社長はギテクの「におい」が一線を越えていると言う。「臭い」については別項目で書きますが、ギテクの顔つきはここから目に見えて違ってきます。いちゃついて胸をまさぐってくるパク社長にヨンギョ夫人が言い放った「時計回りで」は笑いました。名言です。

富豪の家から脱出したギテク、ギウ、ギジョンは激しい雨の中、長い階段を下って下って自分たちの半地下へと逃げ帰ります。3人同様に、大量に降った雨も高い所から低い所へと落ちているのがよくわかりますし、高台の豪邸と半地下にはどれぐらいの高低差があるのか、そして格差があるのかが視覚的によくわかるシーンです。

黒い水をゴボゴボと吐き出す汚い便器に座って、諦めたかのように煙草を吸い始めるギジョン。ついさっきまで豪邸のバスタブで優雅に入浴していたのと対照的です。あの長い階段を下って現実に戻らされた感じがあります。水没した半地下からギウが持ち出したのは、ミニョクからもらった水石だけでした。彼は水石について「僕にひっついて離れない」と語っています。どういうことかわたしにはイマイチわからず、ギウはちょっとおかしくなっているように思えました。キム家は大雨で大変な目に遭ったのですが、雨が上がった翌日にパク家は友人を招待して息子の誕生パーティを開くと浮かれていました。「大雨でキャンプがダメになったおかげ」と、雨を喜んだのです。低層がどんなことになってるのか知りもしない、無関心っぷりが全開になったシーンでしたね。

衝撃的な結末

パーティの買い出しに向かうヨンギョ夫人を後部座席に乗せギテクが車を運転していると、ヨンギョ夫人が鼻をスンと啜りました。そしておもむろに車の窓を開けます。「におい」の指摘を聞いてしまったギテクの表情は明らかに強張っています。

裕福そうな友人たちが次々とパク家に集まってきました。ダヘの部屋の窓からそんな人々を見ながら、ギウは「僕はここに合ってるのか」と問います。父ギテクは、計画を立てると計画になかったことが起きて困ることになるから計画を立てるなと言っていました。けれど、あの人たちは計画外なことが起きても自然で無理をしていない。予定になかったパーティに突然呼ばれても自然な人たちなのです。ギウたちはどうでしたか?予定にない訪問者に振り回されて滅茶苦茶になりましたね。

ギウがバッグにいれた水石を持って地下へ降りると、母チュンスクに蹴落されたムングァンが息絶えていました。ギウはムングァンの夫と揉み合った末、持ってきた水石で頭部を殴打されます。男は地上への階段を上って台所の包丁を持って庭に出ると、ダソンにケーキを渡そうとしていたギジョンを刺しました。その地下の男の臭いにパク社長は思わず鼻をつまみ、それを見ていたギテクはパク社長を刺し殺してしまいます。そのままギテクは逃走し、地下の男に刺されたギジョンは死亡、頭を殴られて死んだかと思われたギウは生き残ったものの後遺症が残り、母親と半地下暮らしに逆戻りしていました。

ギウはパク一家のいなくなった豪邸を見下ろせる山へと登り、夜、家の中で灯りが点滅するのを目撃します。モールス信号になっていることに気づいて解読した彼は、あの地下に父ギテクがいることを確信し、計画を立てるのです。成功してお金持ちになって僕があの家を買うから、あなたはただ、その日がきたらあの地下から階段を上ってくるだけでいいですよ、と。地下の階段を上ったギテクはリビングの大きな窓から差し込む光に目を細め、金持ちになったギウはそんな父を迎える。けれどその光景はギウの妄想で、現実にいるのはあの半地下なのでした。

秀逸なラストでついついガッツリ内容書いてしまいましたが、本当に衝撃的で、切なくて、やるせない結末でした。這い上がれない…這い上がれないんですよ。逆戻りどころかギテクは最下層に転落しましたからね。

感想まとめ

全体的にはブラックコメディぽいのですが、描いているのは重い社会問題、人間ドラマやミステリーの要素もあり、どれかひとつのジャンルで括れない作品ですね。中盤からの怒涛の展開には圧倒されました。結末はしんどくて簡単には埋まらない格差を痛感させられます。地下の男の存在が明らかになってからの怒涛の展開は人によってはショッキングな描写で、前半のコメディさからは予想しない流れでした。

わたし、ギテクが言っていた「計画をたてない」っていう気持ち、ちょっとわかるんですよね。無計画で楽天的な点、似てるのかもしれない。ダメですね(笑)予定にないパーティに当日呼ばれたりしたらめっちゃ困るタイプの人間です。

富豪パク一家は決して悪人ではなかったことが、余計に後味を悪くしました。「におい」のことは確かに残酷だし、大雨で下層が大変なことになってることを知りもせずパーティ開いては色々こき使われたことは、ギテクからしたら憎たらしいことでしょう。でも臭いのことは不躾に指摘されたわけじゃないし、むしろギテクが勝手に留守宅に上がり込んで馬鹿騒ぎしてなければ聞かずに済んだことです。どこかで大変な目に遭ってる人がいたとしても息子の誕生パーティをやるのも当たり前です。キム家が貧困なのはパク家のせいではありません。パク家が搾取しているわけでも虐げてるわけでもない。貧困層に対する無関心や、下に見ている意識は勿論あったでしょうけど。でも留守中に人んちに上がって勝手に飲み食いする人間に敬意なんて持てますか?そもそもパク社長とギテクは雇用関係にあるので上下が生まれるのはある程度仕方ないことです。そしてギテク自身も地下室の男を下に見ていたと思います。

地下の男が半地下の娘を殺し、半地下の男が地上の男を殺す。それぞれひとつ上の階層の人間を攻撃対象にしていて、面白い構図になってますね。地下の男は最上層の社長を「リスペクト」していましたからね。富豪の下で半地下と地下が争って、富豪も巻き添えを食らうけど大きな痛手を負うのはやはり下々の方で、富豪は大黒柱を喪っても恐らく貧困に堕ちることはないでしょう。最後、ギウの計画が成功するのがただの妄想であってよかったと思います。一瞬まんまと「あっさり成功しちゃったの?」って思っちゃっいましたが。悲しいけれど、たぶん彼の計画が成功することはないでしょう。わたしキム家に厳しい?もちろん格差は解消してほしいと思うけど、キム家のやり方が成功するのは納得できないのです。もちろん彼らも本当に悪というわけではなく(そして善でもない)、彼らが地上に這い上がるには真っ当な方法では難しいのでしょう。貧困に喘いでいたらチャンスが巡ってきたので、ちょっと調子に乗りすぎて失敗して状況は前より悪くなってしまったという感じですよね。完全な善と悪がないので、100%の同情を寄せることはできず、それは自業自得よという冷たい感情に向き合わされて、しんどい気持ちになりました。

考察

におい

この映画において重要なポイントは「におい」です。最初に「におい」に気づいたのはパク社長の息子ダソンだったと思います。ギテクとチュンスクから「同じにおい」がすると言っていました。パク社長は「一線を越えるものが嫌い」です。ギテクの「におい」が一線を越えてしまっていると言っていました。ギテクがパク社長に対して殺人へと至らしめる怒りを抱いたきっかけはこの「におい」への言及です。そしてパク社長が地下の男の「におい」に鼻を摘まんだのを見て、下に見ていた男と自分はパク社長にとっては同じだと悟り、人に対する敬意のなさへの怒りで衝動的に殺してしまったのでしょう。パク社長が取った行動は、ギテクにとって一線を越えていたのです。殺人の免罪にはなりませんが、人のにおいに対してあからさまに鼻を摘まむというのはやはり無礼で侮辱的です。「におい」って繊細な問題です。軽率に指摘したり、鼻を摘まむという行為は人の尊厳を傷つけてしまいます。でもね、地下の男にパク社長が刺されて倒れると、すぐさまハエがたかったんですよね。(社長でしたよね?地下の男でしたか?)ハエからすると、金持ちも貧乏人も同じにおいってことなのでしょうか?

※先日地上波で放送されたのを見たら、ハエがたかってたのは地下の男でした!(2021.01.12)

ちなみに、ポン・ジュノ監督はインタビューで「におい」についてこのように答えてます。

この映画では、互いの“臭い”を近距離で嗅ぐことができる状態になっています。パク社長のセリフに“度を越す”というものがあります。彼には『ここから先は入ってくれるな』という“ライン”がある。パク社長にとって、貧しい世界は『見たくないもの』『自分には関係のないもの』なんです。本作では(“ライン”を越えて)“臭い”が入ってきたことによって、悲劇がもたらされるんです
引用元:『ポン・ジュノ「パラサイト 半地下の家族」に込めた“寄生”の真意 「殺人の追憶」の“結末”にも言及』- 映画.com

また、パク社長が殺されたことについてはこのように語ってました。

この展開のキーとなるのは、パク社長の人間性だ。それぞれの領域を遵守し“度を越した行為”を忌避する一方で、彼はキムの体臭を「度を越した臭いだ。“地下室”の臭いとも言える」と陰口を叩いていた。キムの刃が届く前、パク社長はムングァンの夫が放つ“地下の臭い”に顔を歪め、人目をはばからず鼻をつまんでいた。「あの時だけはパク社長が度を越してしまったんです。(クライマックスでは)“人に対する礼儀”が崩壊した瞬間をとらえています」というポン監督。
引用元:『【閲覧注意の本編レビュー】笑いに次ぐ笑い、驚がくに次ぐ驚がく…アカデミー賞有力の強烈すぎる一作 あのシーンの意味って何なの? ポン・ジュノ監督に直接聞いてきた』- 映画.com

怒りが爆発したギテクの心情もわかりますが、パク社長はギテクの目の前で「におい」に言及したわけではなく、本人を前に嫌悪を表したこともないと思うんですよね。一応そこは礼儀を重んじていたはず(ヨンギョ夫人の態度が怪しい場面は記憶してますが)。勝手に地下に住み着きパーティに乱入して凶器を振り回した地下の男相手に礼儀を欠いてしまったわけで、そのような相手に礼儀を保つのも無理な話ではある。

ダソン

わたしにとってダソンはとても謎な存在でした。姉には「フリをしてるだけ」と言われていましたが、あれが何を意味しているのかよくわからないのです。
ダソンは昔、誕生日の夜中にこっそり冷蔵庫のケーキを食べていたら地下からおばけが出てくるのを見てしまったと言う。地下から出てきたおばけとは、食べ物を取りに来たムングァンの夫です。ダソンが描いた絵を見たギウが「チンパンジー?」と聞くと、ヨンギョ夫人が「自画像」と答える笑えるシーンですが、あれは自画像ではなく地下に住む男の絵だったのです。チンパンジーと評された男が、最後地下から出る時にはバナナを食べていましたね。つまりあの絵は伏線だったのです。しかもダソンの絵は、ギジョンが殺される未来を暗示しているという説もあるようです。ちょっとどんな絵だったか見直したい。
あと、ダソンは地下の男が電球でモールス信号を送っていたのに気づき「たすけて」と解読していたのに、親に知らせるなどの行動を取らなかったのも不思議です。

インディアン

映画中、度々インディアンが登場します。ダソンがインディアン姿をしたり、おもちゃの弓矢を射ったり、インディアンのテントを張ったり。誕生パーティではパク社長とギテクがインディアンに扮します。インディアンは侵略される先住民のメタファーなのでしょうか。ダソンはパク一家のにおいが皆同じなことに気づき、モールス信号にも気づきました。無自覚に侵入者の存在を示していたのです。

でも最後にギテクもインディアンに扮したことが気になります。パク一家は確かに侵入者に脅かされましたが、社会的にみると圧倒的強者であり迫害されたインディアン側ではありません。また、ヨンギョ夫人は執拗に英語を使っていて、やはりインディアンというよりは入植者側のように思えます。むしろ、結果的に地下へとおいやられたギテクこそがインディアンだったのでしょうか。「ダソンはフリをしている」と言われていました。わたしは意味がわからないと言ったけど、「インディアンのフリをしている(本当のインディアンは違う=ギテクこそがインディアン)」ということなのでしょうか。そうすると、インディアンは差別や迫害のメタファーでもあるのかもしれません。

水石

水石とは、ざっくり言うと室内で鑑賞するための石です。ギウはもらった水石を喜ぶが、母親は「食べ物がよかった」とぼやきました。そりゃそうです。今日食べるものにも困るような貧困家庭に価値のわからない石を土産に持ってくるとはどういうことなのか。てっきり売るのかと思ったけどギウはやけに大事にしており、水害に遭った後には「僕にひっついてくる」と言っていました。この水石は人によって色々解釈できる面白い要素だと思います。ギウ自身が水石を「象徴的だ」と言っているように、運、希望、運命などの象徴なのでしょう。水石を手に入れてから家族の運気は上昇し、ギウは水石に執着し、水石が階段から落下するように家族の運命も転落していきました。最終的に水石は川に戻り、ギウとチュンスクは半地下に戻り、ギテクは完地下に堕ち、それぞれあるべき場所へ帰って行ったのです。

犠牲となったもの

悲劇によって亡くなったのはギジョンとパク社長でした。なぜギジョンが犠牲となったのでしょうか。ギジョンは恐らくキム家で一番有能な人物でした。パク一家の留守中に勝手にお風呂に入っていたギジョンに、ギウが「違和感がない」と言っていたと思います。キム家の中で最も成功を収める可能性のあった人物が犠牲となってしまったのです。パク家も最も有能で稼ぎ頭であるパク社長が犠牲となってしまったので、両家ともに一番ダメージの大きい人を喪ってしまったんですよね…。地下組に至ってはどちらも生き残れませんでした…。

最後に

パラサイトにはたくさんの伏線、多義的なメタファーがあります。人によって色々な解釈も可能で、繰り返し鑑賞するのが楽しいタイプの作品です。わたしもまだ1回見ただけなので、解説や考察などを踏まえてまた鑑賞してみたいと思います。今度は快適な環境で!!

■追記(2/11)
第92回アカデミー賞において下記を受賞しましたね!おめでとうございます。
作品賞
監督賞(ポン・ジュノ)
脚本賞(ポン・ジュノ、ハン・ジヌォン)
国際長編映画賞
外国語の作品が作品賞を獲るのは史上初です。アカデミー賞は保守的とよく聞くので、作品賞は難しいんじゃないかなあと思っていましたが獲れましたね!これは本当にすごいことです。とても面白い作品なので納得の受賞です。本当に本当におめでとうございます!

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