『ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー』全9話ネタバレ感想:洋館を舞台にしたラブストーリー
Netflixドラマ『ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー』を視聴しました。2020年に配信されたマイク・フラナガン監督のドラマで、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』の続編です。続編と言っても、お話に繋がりはありません。ですが、キャストは結構被っています。でも全く違う役です。前作は家族愛がテーマでしたが、今作は恋愛的な愛がテーマでした。んー、正直言って私はヒルハウスの方が圧倒的に楽しめましたね。今作はホラーとしては前作以上に怖くないし、なんだかよくわからない点が多かったです。決して、つまらないわけではないですが。
原作はヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』です。視聴前は『ブライマナー』って何だろうって思っていて、見れば『ブライ』はすぐ地名だと分かるのですが、『マナー』が最後まで謎で、見終わった後に辞書で調べました。”manor”は「領主の館」とか「荘園」という意味なんですね。
前作『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』の感想記事はこちら。
あらすじ
2007年、北カリフォルニア。結婚式前夜のリハーサルディナーに出席した女性が、その夜、花嫁たちにとある幽霊話を始める。1987年、アメリカ人の若い女性教師がロンドンへやって来た。名前はダニエル・クレイトン。ダニはヘンリー・ウィングレーブに雇われ、彼の幼い甥マイルズと姪フローラの世話係としてエセックス州ブライの古い館で住み込みで働くことになった。郊外にある美しい場所だったが、ダニはそこで恐ろしい超常現象を目の当たりにする。
予告動画
登場人物&キャスト
ダニエル・クレイトン
通称ダニ。過去のトラウマから逃れるためにイギリスにやってきたアメリカ人の教師。ヘンリーに雇われ、住み込みの教師としてブライの館で働くことになります。演じているのはヴィクトリア・ぺドレッティ。ヒルハウスではネリー役を演じていました。
ピーター・クイント
ヘンリーの秘書。ダニが雇われるよりも前に横領で失踪しています。演じているのはオリヴァー・ジャクソン=コーエン。ヒルハウスではルーク役を演じていました。君はこっちでも盗みやってるんかい!って思わずツッコミました(笑)。いやしかし、役柄はこちらの方が似合ってるように感じます。
ジェイミー・テイラー
町から通ってきている館の庭師。ダニと惹かれ合う仲になります。演じているのはアメリア・イヴ。ちょっとハスキーな声とクールでセクシーなルックスにときめきました。
ハナ・グロース
住み込みの家政婦。館の管理も任されています。演じているのはタニア・ミラー。
オーウェン・シャルマ
町から通ってきている館の料理人。認知症の母親の世話をしています。演じているのはラフル・コーリ。
レベッカ・ジェセル
ダニの前任者。ダニが着任する一年前に館で亡くなっています。ピーターとは恋仲でした。演じているのはタヒラ・シャリフ。
フローラ・ウィングレーブ
ドミニクとシャーロットの娘でヘンリーの姪。部屋には館を模した大きなドールハウスがあり、フローラは住人の人形を作っています。”Perfectly Splendid(カンペキに最高)”が口癖。演じているのはアメリー・ビー・スミス。
マイルズ・ウィングレーブ
フローラの兄。ちょっと変わり者で、寄宿学校を退学させられています。演じているのはベンジャミン・エヴァン・エインズワース。
ヘンリー・ウィングレーブ
フローラとマイルズの叔父。兄ドミニクとその妻シャーロットが外国で事故死して以降、館には近づかなくなり、フローラとマイルズの世話も使用人たちに任せきりです。演じているのはヘンリー・トーマス。ヒルハウスではヒュー役を演じていました。
ヴァイオラ・ウィロビー・ロイド
1世紀前の館の主。演じているのはケイト・シーゲル。ヒルハウスではテオドラ役を演じていました。
パーディタ・ウィロビー・ロイド
ヴァイオラの妹。演じているのはキャサリン・パーカー。
ストーリーテラー
ナレーター。結婚式前夜のリハーサルディナーでブライの館にまつわる幽霊話を始めた人です。演じているのはカーラ・グギノ。ヒルハウスではオリビア役を演じていました。
ネタバレ感想
館の超常現象と湖の貴婦人
ブライの館で住み込みでマイルズとフローラの世話をすることになったダニですが、その館では不思議なことが起こっていました。フローラが見えない誰かに話しかけていたり、ドールハウスの人形が勝手に動いていたり、深夜に謎の足跡で床が汚れていたり、マイルズが突然人が変わったように攻撃的になったり。マイルズとフローラは不気味な存在がブライの敷地にいることを知っている様子ですが、序盤は何が起きてるのかなかなか見えてこないので、少しじれったかったです。
徐々に明らかになりますが、館で死亡した人間の魂は永遠に館に囚われるという現象が起きていました。ピーターも、レベッカも、ハナも、もっと大昔に死んでいた人々もそうでした。そして、死んだ人間は記憶にしまい込まれ、何度も何度も記憶の中にある場面を繰り返すのです。
死者だけでなく、フローラも記憶にしまい込まれる体験をするようになります。理由がよくわからなかったけど、レベッカに憑依された時に現象が起きたのでしょうか。生前レベッカも、ピーターに憑依された時にそんな感じのことを言ってた気がします。そう、死者は生者に憑依することができるのです。マイルズが急にチャラいワルみたいな振る舞いをしていたのは、ピーターが憑依していたからです。でも、この憑依という力を使っていたのはほぼピーターで、他の霊はしてませんでしたね。お行儀がいい。ちなみに、館に囚われた魂はブライの敷地から出ることができないため、人に取り憑いて脱出することは不可能です。
魂が館に囚われるようになったのは、17世紀半ばに館の女主人となったヴァイオラの死が発端でした。美しいドレスや宝石、愛娘に囲まれた幸せな生活を送っていましたが、結核に罹ってからは惨めな隔離生活を強いられ、余命宣告を超えてしぶとく生き続けるも、妹パーディタに絞殺されてしまいます。成仏を拒むヴァイオラの魂は、娘のために遺したドレスや宝石をしまっておいた箱の中で生き続けます。起きて、歩き回って、眠ることを繰り返し、ひたすら娘が箱を開ける日を待ち続けました。娯楽もない単調な行動の繰り返しに囚われても成仏しないのは、恐るべき執念深さです。
何年も過ぎ、遂に箱が開けられたのですが、開けたのは生活に困窮したパーディタでした。怒ったヴァイオラはパーディタを殺します。箱の前で死んでいたパーディタを発見した夫は呪われた箱だと考え、娘とともに箱を湖に捨てて館を去ってしまいました。以来、”湖の貴婦人”となったヴァイオラは、夜な夜な湖から出ては娘を探して館を徘徊する怨霊と化し、館の住人を襲うようになります。そして、ヴァイオラの強い執念が生み出した重力によって、館で命を落とした人はヴァイオラ同様に館に囚われてしまうようになりました。時が経つと魂も記憶が薄れ、ヴァイオラは自分の名前や顔、娘のことさえも忘れてしまいます。館で死んで時が経った魂はみんな、のっぺらぼうのように顔がなくなっていったのでした。
ヒルハウスと違って、超常現象の原因が明らかになりました。起こってることはヒルハウスとも似てるんですよね。ヒルハウスで死んだ人の魂もあの館に囚われていましたから。『永遠の家』というワードも共通で出てきました。ところが、「記憶にしまい込まれる」という部分がちょっとややこしく且つ冗長に感じてしまったのと、幽霊が怖くないため、ヒルハウスより退屈に感じてしまいました。のっぺらぼう、不気味ではありましたがそんな怖くない。一番ビクゥッてなったの、ハナの記憶の中の面接でオーウェンが急にカメラ目線で「マイルズ・ウィングレーブ!」って怒鳴ったシーンでした。
ハナはダニが館に来た時点で既に死んでいたというのは衝撃的で面白かったのですが、なぜハナだけはみんなに普通に見えていて物に触ったりもできるんだろうという疑問が消えず、若干消化不良感もあります。ハナ自身が死んでいることをなかなか認識できなかったせい?ハナが飲食しないシーンが度々出て来るのは何でだろうと思ってたのですが、死んでたからなんですね。
ゴーストストーリーではなくラブストーリー
結婚式のリハーサルディナー(アメリカではそんなものがあるのですね)に出席した初老の女性が、談話する皆に「私も幽霊話を知ってる」と言って、古い話を始めるのがこの物語の冒頭でした。なぜ結婚式前夜に不穏な幽霊話なんてするの…という気はしますが、その理由は最終話になって明らかになります。ストーリーテラーの女性は、ダニの恋人だったジェイミーでした。新婦はフローラで、マイルズやヘンリーやオーウェンもいて。成長するにつれてブライでの記憶を忘れてしまったフローラとマイルズに、あの地で起きたことを語っていたのです。最終話まで見てから1話目を見返すと意味がわかるシーンが色々とありますね。今作も非常によく伏線回収されていると思います。
ジェイミーの話を聞き終わったフローラが言いますが、この話はゴーストストーリーではなくラブストーリーでした。ダニとジェイミーの愛が切なくて、最終話はグッと来ました。ダニはフローラを助けるために、”湖の貴婦人”を受け入れる言葉を咄嗟に口にしました。ピーター達がマイルズ達に憑依しようとした時の言葉を聞いていたから言えたんでしょうね。受け入れたらどうなるかなんてわかってなかったはずですが、結末を思うと、身を挺して他人の子を助けたわけです。
その身に”湖の貴婦人”を受け入れたダニは最終的に貴婦人に連れて行かれてしまうのですが、自分も一緒に行くと言ってくれたジェイミーを拒み、誰も道連れにしない選択をしました。一緒にいようとしてくれたジェイミーの愛も深いし、独りを選んだダニの愛も深いです。レベッカを道連れにしたピーターや、自分の子を探して徘徊した挙句他人の子を道連れにしたヴァイオレットを見た後だと、尚更ダニの愛の尊さが光りました。何十年も扉を開けて眠ることを習慣にしているジェイミーにも泣けます。眠るジェイミーの肩には、ダニの手が添えられていました。ダニの魂はジェイミーのそばにあるのですよね。ジェイミーが忘れなければ、ダニは消えません。フローラたちにもダニのことを思い出して欲しくて、ジェイミーは語り聞かせたのかなぁ。
ハナとオーウェンの愛も美しかった。ダニ&ジェイミーとハナ&オーウェンの引き立て役みたいなピーター&レベッカの泥沼愛やヘンリー&シャーロットの不倫愛もありましたネ。間違いなくこれは愛の物語です。
私の理解力の低さが仇に
私がヒルハウスよりもブライマナーが面白く感じられなかったのって、悲しいことに理解力の低さも原因なんですよね。ピーターとレベッカがマイルズとフローラで何をしようとしてたのかよくわからなかったんです。2人を悪用しようとしてるのはわかるのですが、目的がわからなかった。
そもそも、何故ピーターがレベッカのことを殺したのかもよくわからなかったの…。「これでずっと一緒にいられる」みたいな甘言でレベッカを言い包めて憑依し、湖に入って、死の間際にレベッカから離れて行ったんですよね?わざと離れたわけじゃなくて、自分の醜く腐敗した死体を見てられなくなった感じなのでしょうか。一応、ピーターは独りが寂しいからレベッカを道連れにしたんかなぁと解釈してるけど、違いますかね?
で、「憑依して道連れにする」という行動を見てたせいで、ピーターとレベッカはマイルズとフローラのことも憑依して湖で殺すのか?と思ってしまったのです。レベッカを道連れにしたのは寂しいからでまあ納得できるけど、幼い子供たちを殺す動機はさっぱり理解できないから、チンプンカンになってしまって。
見終わってから頭を整理して、別に殺そうとしてたわけじゃないのかなと思い直したりしました。マイルズとフローラが受け入れてくれたら、ピーターとレベッカは永遠に2人に憑依できると考えたわけですよね。そうやってずっと一緒にいる計画だった。憑依されたマイルズとフローラの意識は夢(記憶)の中に閉じ込められるけど、そこなら死んだママに会えるからお互いハッピー!みたいな騙し方で。
ところがレベッカ自身は計画に反対で、フローラに憑依したフリして実は憑依してませんでした。裏切ったクソ野郎と一緒にいたくもないですもんね。なのに、”湖の貴婦人”にフローラが連れて行かれるのを助けようとせず、フローラに受け入れるよう促してたから、益々わけわかんなくなっちゃいました。自分が憑依して大暴れして貴婦人から逃げ出す算段だったとか…????ほんとにピーターとレベッカのことが理解できてない!(笑)
それにしてもピーターは酷い男でした。レベッカのこともそうだけど、マイルズに憑依してハナを殺すのも酷すぎる。マイルズの体で何してくれてんの…。彼がここまで歪な人間になったのも毒親による虐待という原因があってのことでしたが、だからって許されることではないですね。
最後に
私にはよくわからなかった部分はありましたが、伏線が繋がる面白さや胸にグッとくる切ないストーリーは楽しめました。ホーンティングシリーズはこれで終了ですかね?いつか第3弾も制作してくれたらなぁ。フラナガン監督のホラーは、ホラー要素よりもメッセージ性が強く泣ける作品が多いですね。