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映画『透明人間』ネタバレ感想:サプラァイズ…見えないけど存在を感じるサイコスリラー

『透明人間』

Amazonプライムで配信されていた映画『透明人間』を視聴しました。同名の小説が原作で、著者は『宇宙戦争』などで有名なH・G・ウェルズです。1933年にも映画化されており、今回私が視聴したのは現代風にアレンジされたリブート作品になります。

監督は『ソウ』や『インシディアス』などの脚本を手掛けたリー・ワネルが務めています。

透明人間と聞くとすぐに覗きだとか盗みだとか低俗な方向に考えてしまう私ですが、この透明人間の欲望は一人の女性に執拗に向けられていました。

あらすじ

深夜に目を覚ましたセシリアは、眠る恋人エイドリアンを起こさぬように荷物をまとめ、いくつもの監視カメラが設置された海辺の豪邸から脱出を図った。迎えに来させた妹の車に乗り込んだ時、追いかけて来たエイドリアンが車の窓ガラスを殴り割り、セシリアを連れ戻そうとしてくる。なんとか逃げ出したセシリアは警官の友人の元に身を寄せるが、後日、エイドリアンが自殺したとの報せが入った。

作品情報&予告動画

原題The Invisible Man
監督リー・ワネル
脚本リー・ワネル
製作ジェイソン・ブラム
カイリー・デュ・フレズネ
音楽ベンジャミン・ウォルフィッシュ
撮影ステファン・ダスキオ
編集アンディ・キャニー
出演者エリザベス・モス
オルディス・ホッジ
オリヴァー・ジャクソン=コーエン

ネタバレ感想

透明人間となった束縛彼氏につきまとわれる恐怖

主人公セシリアの恋人であるエイドリアンは光学研究の第一人者で超お金持ちなのですが、部屋中に監視カメラを設置していたり、セシリアの見た目から考え方に至るまで、全てを自分の思う通りに支配しようとしてくるDV束縛糞男でした。子供を欲しがっていたというエイドリアンに逆らってセシリアはこっそり避妊薬を飲んでいたと言っていますから、性暴力も振るわれていたのでしょう。

作中でエイドリアンはソシオパスだと表現されていました。サイコパスが先天的・遺伝的に反社会的な人格を持つ人なのに対して、ソシオパスは育った環境などの要因で後天的に反社会的な人格を持った人のことのようです。

そんな男との生活に耐えられなくなったセシリアは豪邸を逃げ出し、親切でめっちゃ強そうな警官の友人ジェームズと彼の娘シドニーが暮らす家に居候させてもらうことになります。

エイドリアンに見つかることに怯えて精神的に不安定な日々を過ごしていたある日、妹のエミリーからエイドリアンが自殺したことを知らされます。エイドリアンの兄・トムからもエイドリアンは死んだことを聞かされますが、セシリアは信じられませんでした。そして、居候しているジェームズの家で、セシリアはエイドリアンの気配を感じるようになります。気配だけでなく、姿がないのに足跡があったり、豪邸脱出時に失くした薬の瓶をジェームズ家で見つけたり、妹に勝手に酷いメールを送っていたりと、エイドリアンの仕業と思われる出来事が次々に起こりました。疑心暗鬼になったセシリアは、エイドリアンはまだ生きていて、光学研究の天才である彼は透明人間となって自分をストーカーしているのだと考えるようになるのです。

不可思議な現象が頻発したことで透明人間がいるとセシリアは訴えるようになるわけですが、ジェームズ達にはトラウマを抱えているセシリアが被害妄想に陥っているように見えるんですよね。だから、透明人間なんて話は当然信じてもらえません。私は途中まで、これセシリアの幻覚だったっていうオチもあり得るな、なんて疑心暗鬼でした。リブートだと知っていればそんなことないのかもしれませんが、本当に透明人間がいるのか、それともセシリアの幻覚なのか、その疑惑を誘う見せ方が非常に巧かったように思いました。

めちゃくちゃ支配的な男がストーカーになるっていうだけでも怖くて辛いんですが、透明人間だから周りに信じてもらえないっていうのが一番辛いですね。頭がちょっとおかしくなってる女扱いされちゃうんですもん。

結末

透明人間の仕業で孤立してしまったセシリアは、エイドリアンの豪邸で光学迷彩スーツを発見します。妹エミリーに助けを求めて会うのですが、エミリーは透明人間に喉をナイフで掻っ切られて殺害され、その場にいたセシリアが犯人になってしまいました。

エミリーが殺されたのはびっくりしたんですが、殺害が起きたのはレストランだったので、防犯カメラ見ればセシリアが殺ったわけではないことがわかりそうなものですが、すんなりセシリアが犯人になってしまいました。ナイフが完全に宙に浮いてエミリーの喉を裂き、手品みたいにセシリアの手にすぽっと収まるんですから、防犯カメラ見てくれ~って思わずにいられませんでしたね。ジェームズの家を追い出されるきっかけになったシドニー引っ叩き事件も、セシリアはシドニーを殴れる位置にいなかったじゃんって思うんですが、シドニーは怪訝に思う節もなくすぐにセシリアが殴ったと決めつけたのがちょっと不思議でした。2人きりだったから、セシリア以外にいないと思ったということでしょうけど。

セシリアは精神病院に入れられ、血液検査の結果妊娠していることも判明します。エイドリアンの兄トムは、エイドリアンはセシリアが避妊薬を飲んでいることを知って薬をすり替えたのだと言いました。そして、子供を産んでくれればこの状況から解放してやるという、エイドリアンからの伝言を告げます。トムは長年エイドリアンに支配され、手先になっていたのでした。

エイドリアンが子供を欲しがっていることを逆手に取り、セシリアは自殺を試みます。透明人間が阻止してきたため、セシリアは何度もペンを刺して光学迷彩スーツに傷をつけました。透明化が不安定になった透明人間は、セシリアの大切なものを奪うためにシドニーの元へ向かいます。見えない何かに襲われるシドニーを助けたジェームズも遂に透明人間の存在を目の当たりにし、セシリアはジェームズ達の目の前で透明人間を撃ち殺しました。スーツを剥ぐと、死んでいたのはトムでした。

いくら透明化しているとはいえ(傷ついたせいで不安定ですが)、多数の警備員を薙ぎ倒して屈強な警官ジェームズにも勝ったトム、かなり強くないですか。鑑賞中はエイドリアンだと思っていたので、科学者なのに肉体派だなって思いながら見てました。いくら警官のように強くてもやっぱり見えない相手と戦うのって難しいんでしょうね。どこから攻撃飛んでくるかわかんないですし。

警察によって豪邸の地下に縛られたエイドリアンが発見されます。エイドリアンはトムによって支配されていて、全てはトムの仕業だったということになります。しかし、セシリアはエイドリアンこそが犯人であると確信していました。

豪邸でエイドリアンと2人でディナーをとることにしたセシリア。やり直したいと言うエイドリアンに、全ては自分の仕業だったと認めるようセシリアは言います。しかしエイドリアンは頑なに認めず、泣きだしたセシリアに「君を誰よりも理解してる。それは間違いなく事実だよ。サプライズじゃない」と言いました。

セシリアは化粧を直すと言ってトイレへ行きます。ダイニングに残ったエイドリアンは、握ったナイフで突然自分の首を掻っ切りました。戻って来たセシリアは悲鳴を上げ、「恋人が自殺した」と泣きながら救急に連絡します。監視カメラに映らない位置まで移動したセシリアは泣き真似をやめ、死にゆくエイドリアンに「サプライズ」と言いました。

外の車で一部始終を盗聴していたジェームズが慌てて向かうと、光学迷彩スーツを鞄に入れたセシリアが豪邸から出てきました。ジェームズは、セシリアは最初から自白させる気などなく殺すつもりだったことを悟ったのです。しかし、真実は胸にしまうことにしました。

「サプライズ」という言葉は、セシリアがジェームズの家の屋根裏でエイドリアンのスマホを発見した時に受信したメッセージにあった言葉ですね。また、精神病院に収容されたセシリアが透明人間から囁かれた言葉でもあります。つまり、「サプライズ」は透明人間が意味ありげに使っていた言葉なので、ディナーで「サプライズ」と口にしたエイドリアンが真犯人ということでしょうね。彼の口癖だったんじゃないですかね。サプライズ好きなうざい男って感じしますもん、エイドリアン。

セシリアはトイレで光学迷彩スーツを着てエイドリアンを殺害したわけですが、以前豪邸に忍び込んでスーツを見つけた時、持ち帰らずにどこかに隠したのは何でなんだろうと不思議に思っていたら、こういうことだったんですね。ってことは、セシリアは最初からこの家でエイドリアンを殺そうと思ってトイレにスーツを隠しておいたってことなんですか?よく思った通りにことが運びましたね。それと、セシリアがエイドリアンの喉を切ってからトイレから戻ってくるのが早くて、一瞬、別人の犯行かと混乱しました。簡単に着脱できる全身スーツなのかもしれません。

それと、最後に気になった点。監視カメラには確かにエイドリアンが自分の喉を切って自殺するように映ってると思いますが、セシリアはその時トイレにいるはずで自殺を図ったか外部の犯行かどうかは見えてないはずなのに、救急への電話で「自殺を図った」と断言してるのは不審に思われそうじゃないですか?

ちょいちょい気になる点があったからツッコミっぽく書いちゃいましたけど、全体としてめちゃくちゃ面白かったです!

臨場感とエリザベス・モスの演技が凄い

この映画、ストーリー的にはそんなに珍しい捻りがあるわけじゃないと思うんですよ。束縛DV男が透明人間になって恋人の女性にストーカーするけど最後はその女性に返り討ちにされる。単純でめっちゃわかりやすい。

単純だけど、視聴者にも見えない透明人間が本当にここにいるのかいないのか、その臨場感の作り方がすごく上手で見ていてドキドキするし怖いんです。外に出たセシリアの吐く息が白くなって、他に誰もいないのに隣でも白い息がふわっと吐き出されていたり。セシリアが画面から消えた後もずっと映し出されるキッチンには、透明人間の痕跡を探してしまいます。

また、主演のエリザベス・モスの演技力は圧巻でした。Huluドラマの『ハンドメイズ・テイル』で、女性の人権がなくなったディストピアを生き延びる主人公を好演していましたが、抑圧に抗う女性を演じるのが板についてますね。病院に収容される際の鬼気迫る顔や、ウソ泣きをやめて真顔に戻る一連の表情や、エイドリアンから解放されて豪邸を出た後のしたり顔(?)とか…素晴らしかったです。

最後に

透明人間化を実現するとしたら、こういう光学迷彩スーツが一番現実的なんでしょうか。透明人間、なりたいですか?私はなってみたい気はしますが、なって何をするかと考えたらやっぱり犯罪系の発想しか出てこないので困ります。実用化される未来が来たら、碌なことに使われない気がしますね…。