『THE LAST OF US』シーズン1第5&6話ネタバレ感想：出会いと別れ、そして再会
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『THE LAST OF US』のシーズン1第5話と第6話を視聴しました。第5話ではサム&ヘンリー兄弟との出会いと別れまでが描かれましたね。ビルのプロットはゲーム版とかなり変わってましたから、サム&ヘンリー兄弟の結末も違うかもしれないと思いましたが、今回はあまり大きな違いはありませんでした。第6話では第1話ぶりに登場したトミーとの再会が描かれました。
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本ページの情報は2023年2月時点のものです。現在は配信終了している場合もありますので、最新の配信状況は各動画配信サービスの公式サイトにてご確認ください。
あらすじ
トミーのいるワイオミングを目指すジョエルとエリーは、カンザスシティの隔離施設を軍の支配から解放したキャスリン率いるレジスタンスと衝突してしまう。身を潜める二人の前に、キャスリンの兄を軍に密告したことでキャスリンから命を狙われているヘンリーと、その弟サムが現れた。
新たな登場人物&キャスト
ヘンリー
カンザスシティの隔離施設で圧政を敷いていた軍の協力者。愛する弟サムが白血病だったため、その治療薬を得るためにレジスタンスのリーダーだったキャスリンの兄を軍に売り、そのせいでキャスリンから追われています。街から脱出するため、同じくキャスリンから追われているジョエルに接触しました。演じているのはラマー・ジョンソン。
サム
ヘンリーの幼い弟。聾者。スーパーヒーローが好きで、エリーとはすぐに仲良しになりました。演じているのはキーボン・ウッダード。
マリア
ジャクソンにあるコミュニティの町議員の一人。トミーの妻で妊娠しています。演じているのはルティナ・ウェスリー。
ネタバレ感想
兄弟の結末は同じ。けれども、ゲーム版の方が好き
私はこれまでの感想記事でもゲームの内容をあまり覚えてないと述べてきましたが、この兄弟に関してもはっきり覚えていたわけではありません。ただ、弟が死んで兄も自殺するという結末は記憶にあって(ヘンリーが撃ったことは忘れてました…)、悲劇の兄弟というイメージを持った上で第5話を視聴しました。ビルのストーリーが大幅に変わっていましたから、この兄弟の結末も違うかもしれないと頭の片隅で思っていましたが、ほぼ同じでしたね。感染したサムがエリーに襲い掛かったためヘンリーがその手でサムを撃ち殺してしまい、パニックとなったヘンリーが自らの頭を撃ち抜くという悲しい結末。ただこれは、個人的には変えなくて良かったと思います。
エリーとサムが打ち解けて楽しそうに笑っているのを見て、ジョエルもヘンリーとサムが旅に同行するのを認めた矢先の悲劇ですから、ゲームでもドラマでもプレイヤーと視聴者の心に大きな衝撃やダメージを与えてくるんですよね。特に初見は、やるせなさがすごい。ドラマで、サムを撃ったヘンリーが「俺は何をした？」としきりに呟く姿が、本当に胸が苦しくて。誰より守りたかった愛する弟だけど、殺さないといけなかった。殺すしかなかった。もう咄嗟だったんだと思うんです。ジョエルに撃たせなかったのも咄嗟だったと思うんです。愛する弟だからせめて自分の手で、とかそういうことを考えてる余裕もなかった。頭の中は滅茶苦茶だったはずです。そして、現実を受け止めきれなくてその場で自らの頭を撃ち抜いてしまったのではないかな。弟のいない世界を生きる意味がないとか、何かを考えた結果に選んだ自死ではなく、ただもう受け止めきれなかったように思うのです。あっけなさとか無情さとか虚無とか、そういうものがもろもろと伝わってきました。
で、ドラマを見て「良かったなぁ」となりながら、ゲームではどうだったっけ？と思ってまた見返してみたんですよ。そしたら、結末は同じなんですけども受ける印象がちょっと違うんです。まず、結末に至るまでのイベントが違う。ゲームのヘンリー、一回ジョエルのこと見捨ててるんですよね。ハンターが迫って来てて自分とサムも窮地になる仕方ない場面ではあるんですけれど、そんなピンチの中でエリーはジョエルに「一緒だから」って言って危険な場所にいるジョエルの元に戻るんです。このジョエル&エリーの最高に胸熱なシーンがドラマにないのがまずちょっとアレッて感じでした。別の回に入れてくるかもしれませんが、これはサム&ヘンリーと一緒に行動してる時がベストタイミングのような気がするけどなぁ。
話をヘンリーに戻しますが、ジョエルは見捨てられたものの、結局はヘンリーに助けられます。ヘンリーは「ジョエルなら大丈夫だと信じたからだ」的なことを言うわけですが、それは言い訳で、あの場面では見捨てる選択をしたのです。ジョエルを置いて逃げないと自分たちもヤバかったですし、逆の立場ならジョエルも同じことするだろうと言っていますし。つまり、ヘンリーはプレイヤーに「悪い奴じゃないけど、心から信用はできない」という感情を抱かせるんです。この部分、ドラマだと”ヘンリーは弟を助けるために慕われてた人間を軍に売った汚い人間”とすることで伝えてるのかもしれませんが、顔も出てこない人間に対する裏切りを語られるよりジョエルに対する土壇場での裏切りを見せられる方が、こっちとしては信頼のおけなさ度合いがより強くなるんですよね。なので、ゲーム版ヘンリーにはちょっと油断ならない印象が強く、ドラマ版にはそれがなかったです。
また、感染したサムを撃ち殺してパニックになったゲーム版ヘンリーは、ジョエルに「お前のせいだ」と言い出すんですよね。銃口を向けながら。この重たい台詞がドラマだとなくなっていました。恐らくヘンリーは本心でジョエルのせいだと思っているわけではなく、整理のつかない頭と感情が誰かを責めずにいられなかった故の言葉だろうと思います。だからジョエルも「俺のせいじゃない」ではなく「誰のせいでもない」って返すんですけども。これは当然、”ヘンリーのせいでもない”ということですから、ジョエルの言葉選びにはすごく思慮がありますよね。こんな状況で責められたら、ジョエルだって相当傷つくでしょうに。いくら深い悲しみの中にいようと、頭の中がぐちゃぐちゃになっていようと、「お前のせいだ」という言葉を放ってしまったヘンリーに私はすごく嫌な気持ちになった。でも彼のその卑劣さは自分にもあるから、気持ちはわかるんです。そういうこと言っちゃう人間いますよね。前段階では自分たちの命を優先してジョエルを見捨ててますし、ちょっと嫌なキャラとして描かれてる。嫌な奴だけど嫌いにはなれない。ゲーム版ヘンリーはとても人間味溢れるキャラに見えました。結末は同じだけれど、より後味が悪い分キャラの気持ちを深く考えちゃうし、ヘンリーによりリアルな人間臭さを感じた分、ゲーム版の方が好きだなと思いました。ジョエルとエリーの良い描写もあったし。
ドラマはヘンリー達と共に行動する時間が短すぎたかなぁとも思う。でもドラマのヘンリーのあの茫然自失とした表情や絞り出した声には涙が堪え切れなかったし、つまり、どちらも素晴らしいので両方体験するべきです。
サムが聾者キャラに変更された効果はあったのか
ドラマのサムは聾者でしたが、ゲームではそのような設定はありませんでした。また、ゲームではサムとエリーは同い年くらいだったのに、ドラマのサムは年齢が幼くなっています。この設定変更による効果は何かあったでしょうか？
私は特に大きな効果はなかったと思っています。サムが聾者になったからと言ってストーリーに深みが増したと感じる部分もないし、音が聞こえない故のスリリングで新しい戦いが見れたわけでもない。『ウォーキング・デッド』でも数年前から耳の聞こえないキャラが登場して彼女のサバイブを長期間描いてるので、真新しい設定というわけでもありません。
ジョエルとエリーの二人に対しての警戒心が和らぎやすかったとか、結末の悲劇感がより増したとか、そのくらいはあったかもしれませんが、それは年齢を幼くしただけでも得られたことだった気がします。制作陣は意図があって変更したんだと思いますが、私には汲み取れなかったかもしれません。
じゃあこれは意味のない変更だったのか、改悪だったのか。そうも思いません。変わったことで損なわれたと感じることも特にないですから。良くも悪くも、私には効果と呼べるものは感じなかった。でも、聾者が入ったところで特に何も変わらないというのは、結構大事なことだと思いました。ポスト・アポカリプスの世界だろうと障がい者は存在するし、彼らの登場に何か特別な役割や意味を持たせる必要があるわけではないだろうから。物語を創作する時に、意味や目的を持ってキャラの性別や性格や外観を設定することがありますが、単なる好みで決める部分もあると思うんです。そういうノリでサムは聾者設定になったんだとしても、別に良いんじゃないかな。聾者設定になったことで新たに深いテーマを背負わされたり、意味を持たされたり、しなくてもいいんじゃないかな。変更しても伝わる物語に特に変わりがなかったからこそ、そんな風に思いました。ただ、できればキャラ改変はやめてオリジナルキャラでやって欲しいと私は思いますけども。自分の思い入れのある作品で好きなキャラが改変されるの、結果の良し悪しは別として、怖いですからね。
ゲームではエリーとサムって同じ立ち位置にいるキャラでしたが、ドラマだとエリーはサムの良いお姉ちゃんをしていて、守られる立場にいた彼女に守る存在ができた感じでしたね。自分の血を傷口に塗ることではサムを救えなかったという経験が、エリーに何かを背負わせてしまったみたいでした。エリーにも、ゲーム版ジョエルの「誰のせいでもない」という台詞をかけてあげたい。
トミーとの再会
ヘンリー&サム兄弟との悲しい別れから3ヶ月経ち、ジョエルとエリーはジョエルの弟トミーがいるワイオミング州ジャクソンまでやって来ました。トミーはマリアという女性と結婚しており、二人が住むコミュニティはかなり発展していて軍もおらず平和な様子。コミュニティの存在を知られぬよう外部との連絡は断つなどのルールがきっちりあるようで、そのためトミーはジョエルと音信不通となってしまっていたみたいです。あたりはすっかり雪景色で、壮大な山並みが美しかった。道中の水力発電所はゲームにも出てきた記憶があり、やはり見覚えがあるシーンがあるとテンション上がりますね。
エリーを失うことを恐れているジョエルはトミーに全てを話し、自分の代わりにファイアフライの拠点である東コロラド大学までエリーを連れて行くよう頼みます。しかし、それを聞いていたエリーは自分から離れようとするジョエルを責め、そんなエリーをジョエルは突き放してしまいます。ゲーム版だと怒ったエリーが馬を盗んで一人でどっか行ってしまい、ジョエルとトミーが探しに行く流れがあるのですが、そこはバッサリカットされていました。
責めるエリーはジョエルに暗に「私にはあんたしかいない」と言ってるのに、また守れずに失うことが怖くてたまらないジョエルは「俺たちは父娘じゃない」的なことをエリーに言ってしまいます。トミーと再会して嬉しそうなジョエルを寂しそうに見ていたエリーの気持ちを思うと、いくら何でもそんなこと言うのは酷い！とジョエルをぶん殴りたくなりました。大事な人を失っているのはエリーも同じなのに、自分だけが辛いみたいなことを大人に言われたくないと思う。子供にとって、置いてかれる恐怖って途轍もないですよ。
一晩考えたジョエルは馬の準備をしながらどっちと一緒に行くかエリーに選ばせるのですが、エリーは即答でジョエルを選びました。「俺が連れて行く」と言い出せないあたりにまだジョエルの弱気が見えます。ジョエルはエリーが素直だったことに感謝した方が良い。第5話でジョエルとエリーの胸アツシーン出てこなかったし、なんかちょっと二人の距離が縮まってる描写が少ないなと感じていたんですけれど、第6話はエリーがジョエルを信頼していることがよく伝わる回でした。ジョエルは素直じゃないというか言葉が足りないというか。トミーにもツンツンしてたし。ただ普段クールに振る舞ってる分、トミーに本心を打ち明けて涙してる姿が非常に弱々しく見えました。
また二人旅が始まって、ジョエルから銃の使い方を教えてもらうエリーの「銃を妊娠させる気？」って台詞が最高に笑えました。エリーはマリアとのやり取りを見てると、生意気っぷりに拍車がかかってますね。ドラマでもゲームでも共通して思ったことは、トミーも一緒に来てくれて良くない？ってことですね。なぜ3人で行かないのか謎すぎる。
さて、コロラド大学に辿り着いた2人ですが、そこにファイアフライはいませんでした。ソルトレイクシティに移動した様子。キャンパスにサルがいたのはゲームの再現でしたね。ならず者達がやって来たのでこっそり抜け出そうとしたところ、一人の男に見つかってジョエルが腹を刺されてしまいます。馬に乗ってなんとか大学から逃げ出したものの、ジョエルは意識を失って落馬してしまいました。不安がるエリーの目には涙が。腹を刺されて動けなくなった大人の男をどうすればいいかなんて14歳にはわからないですよ。私今この年でもわからないもん、絶対パニックなっちゃいます。第6話は強く気丈な2人が涙を見せる回でしたね。
最後に
5話はちょいちょい展開の粗が気になりました。ジョエルが一人でスナイパーのところへ行くシーンで、スナイパーはジョエルがこっちに向かって来るのを認識してるのに、自分の背後をちっとも警戒せずいつまでも窓の外を向いてたのが奇妙でした。おじいちゃんで慣れてなかったからかな。あと、キャスリンが逃げる3人にわざわざ「待ちなさい！」と声かけてるのも変ですね。殺す気しかないのに、なんですぐ撃たないのか謎。キャスリンの復讐に振り切ってるとこは好きです。〇〇の復讐ってよく言うけど、復讐って結局全部自分のための行為なんですよね。自分の気を晴らすための行為。それがキャスリンを見るとよくわかります。
それにしても、戦闘シーンはほぼカットされてますね。人間ドラマに焦点を当ててるからだろうけど、感染者もハンターも滅多にいないように見えてしまって、外が危険な世界ってことがあまり伝わって来ません。こんなに遭遇しないなら、もっとジャクソン並みに発展した街があってもいい気がしてしまいます。あと、子供であるエリーには徹底的に殺人させないようにしてますね。これは製作陣の配慮なのかな。この先もエリーには殺人させずにいくのか。ジョエルが怪我で倒れたし、エリーの殺人描写はこれからなのかな。
