『悪魔のいけにえ』ネタバレ感想:名作ホラー映画!唸るチェーンソーの恐怖
映画『悪魔のいけにえ』を視聴しました。だいぶ昔に観た事あるはずなんですが、なんか食卓を囲んでるシーンがぼんやりと記憶にあるだけでほとんど覚えてなかったので、ホラー映画の金字塔としても名高いこの作品をもう一度鑑賞することにしました。
リメイクなども出ていますが、1974年のオリジナル版を視聴しました。トビー・フーパー監督のですね。なぜ、今更1974年の作品を見る気になったかというと、少し前にこの映画のゲームが出たからです。『The Texas Chain Saw Massacre』というゲームで、そもそもこれは映画の原題なんですが、このゲーム実況を見るのにハマってまして。それで、映画をもう一度ちゃんと見てみたくなったのです。ここでゲームの紹介は詳しくはしませんが、非対称型のマルチ対戦ゲームで、めちゃくちゃ映画の再現度が高いですよ。
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あらすじ
1973年、8月。アメリカのテキサス州では墓荒らしが横行しており、遺体の一部が持ち去られるという事件が起きていた。そんな中、サリーと兄のフランクは友人たちと共に墓の無事を確認しがてらドライブ旅行をしていた。道中、怪しげなヒッチハイカーの男を同乗させるが、フランクが男に切りつけられるハプニングが発生。男を車内から追い出して旅を続けるも、恐ろしい出来事に巻き込まれてゆく。
作品情報&予告動画
原題 | The Texas Chain Saw Massacre |
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監督 | トビー・フーパー |
脚本 | キム・ヘンケル トビー・フーパー |
製作総指揮 | ジェイ・パースレイ |
撮影 | ダニエル・パール |
音楽 | ウェイン・ベル トビー・フーパー |
出演者 | マリリン・バーンズ ポール・A・パーテイン |
登場人物&キャスト
サリー・ハーデスティ
フランクリンの妹でジェリーの恋人。墓の無事を確かめがてら、兄や友人達と共にテキサスにドライブしに来ました。演じているのはマリリン・バーンズ。
フランクリン・ハーデスティ
サリーの兄。車椅子使用者で、もどかしい思いを抱えています。演じているのはポール・A・パーテイン。
ジェリー
サリーの恋人。眼鏡をかけた運転者です。演じているのはアレン・ダンジガー。
カーク
パムの恋人でフランクの世話をしています。演じているのはウィリアム・ヴェイル。
パム
カークの恋人。占い好きです。演じているのはテリー・マクミン。
レザーフェイス
本名はババ・ソーヤー。人の顔の皮を剥いで作ったマスクを被った巨漢。チェーンソーを振り回す殺人鬼。人間や動物の骨で家具を作っています。知的障碍者で、子供のような行動を見せることがあります。演じているのはガンナー・ハンセン。
ヒッチハイカー
本名はナビンズ・ソーヤー。レザーフェイスの兄。顔に大きな赤い痣があり、落ち着きがなく、自傷行為や他傷行為を取ります。演じているのはエドウィン・ニール。
コック
本名はドレイトン・ソーヤー。レザーフェイスとヒッチハイカーの兄。バーベキューも楽しめるガソリンスタンドの店主をしています。演じているのはジム・シードウ。
グランパ
ソーヤー家の父。137歳でミイラのような風貌。自力で動くことはできませんが生きており、血を飲んだりします。グランパだからレザーフェイスたちの祖父かと思ってたら父親のようです。テキサスでは年配の男性をグランパと呼ぶ風習があるのだそう。演じているのはジョン・ドゥガン。
ネタバレ感想
チェーンソーの恐怖!でも所々笑える
ドライブを楽しんでいる若い男女5人が人肉を食す恐ろしい殺人鬼一家に遭遇し、女の子一人だけが逃げ延びるという、王道ホラーともいえるストーリーですが、この作品こそがホラー映画の原点なのです。殺人鬼レザーフェイスはチェーンソーを使って殺しを行うので、何ともグロそうなイメージを持つと思いますが、意外にも全然グロくありません。殺害とか解体のシーンはあまり見えないようになってます。なので、グロいの苦手な方でも大丈夫です。でも、グロくないのにしばらく時間が経つとなんかとてもグロいものを見たような気分になります。
サリー以外の4人はレザーフェイスの手によってわりとサクサク殺されていきます。ふかしたチェーンソーを手に追い掛け回される恐怖はサリーが最後の生存者になってから始まります。恐怖はそこからが本番と言ってもいいでしょう。チェーンソーのあの耳障りな音は見てるこちらの恐怖を存分に煽ってくれますし、殺人鬼一家の不気味さは得体の知れない人間への恐怖心をめちゃくちゃ掻き立ててくれます。
サリーの恐怖の演技と異常な殺人鬼たちの演技が素晴らしいです。演者さんたちの精神が心配になってくるし、見てるこっちも頭がおかしくなりそうでした。実際、撮影環境が酷くて地獄だったみたいですが。ドアップのサリーの目玉が恐怖でギョロギョロ動くのも怖かったです。そして、殺人鬼一家から逃げおおせたサリーが、狂ったように高々と笑うのもとても圧倒されました。あの極限の恐怖から逃げ切り、ヒッチハイカーも無惨に死んだし、「勝ちだ!」みたいな笑いなのかな。わからないけど、追い詰められた人間が解放された時に見せた血だらけの迫真の笑顔が、ゾッとする恐怖の一つでした。
そしてこの映画、意外と笑えるのです。「そうはならんやろ!」とツッコミたくなるようなシーンが結構あるからです。例えばサリーが一家の2階から窓を突き破って落下するシーン。骨折してもおかしくないのですが、サリーは服の背中部分が大破してセクシーになった程度でした。何故服が破れる(笑)。バトル漫画の服だけ破れる現象みたいで笑っちゃいました。一昔前のホラーはお色気が欠かせませんからね。私は今でもホラーとお色気は相性いいと思ってますけど。
最後サリーがヒッチハイカーに追いかけられながら家を逃げ出していくシーンも笑っちゃいました。どう見てもヒッチハイカーはサリーに追いついてるのに何故か捕まえない。アハハウフフと追いかけっこしてるカップルみたいです(サリーは必死の形相ですが)。
殺人鬼一家の闇と悲哀
レザーフェイス、ヒッチハイカー、コックは兄弟でグランパは彼らの父だったわけですが、彼らの異常とも言える人格や関係性には憐みを感じてしまいます。特に、兄であるコックに叱責されて子供のように怯えるレザーフェイスを見ると、家族との歪んだ関係や虐待が彼を殺人鬼にしてしまったように思えますから。そして、虐待を受けていたのはレザーフェイスだけではないはず。十中八九グランパは子供たちを虐待してたでしょうし、もしかしたら母親も…。彼らのしたことが許されることはありませんが、どう見てもまともではない家庭環境を考えると、恐ろしいモンスター一家が誕生してしまった背景の悲しさを考えずにおれません。
一家全員が特徴ある異常者なんですが、やはり何と言ってもレザーフェイスはアイコニックな殺人鬼ですね。レザーフェイスが朝焼けの中でチェーンソーを振り回しながら踊るラストシーンはとても印象的でした。一体彼はどんな気持ちであのチェーンソーダンスを舞ったのか。虐待を受けていたのはレザーフェイスだけではないはずと言いましたが、末弟で知的障碍者という最も立場の低い彼が一番苛烈な虐待を受けていたと考えてもおかしくはないでしょう。それでもレザーフェイスにとっては家族だけが全てで、守るべきものだった。ヒッチハイカーを失った上に獲物を取り逃がしたことでコックからは酷く叱責されるでしょうし、警察に通報されて家族はバラバラになってしまう。私はあのダンスから、殺人鬼となってまで守ろうとした歪な世界が崩壊してしまったレザーフェイスの哀愁を感じました。
レザーフェイス、シーンによって装いが変わってるんですよね。解体時には黄色の作業エプロン、家事をする時には料理用のエプロン、食事時にはスーツを着ています。マスクもそれに合わせてちゃんと変えてます。おしゃれさんですよね。そんなところもなんか人間味があって、可愛らしく見えちゃいました。
レザーフェイスの元ネタ?
レザーフェイスにはモデルになった人物がいると言われています。「プレイン・フィールドの屠殺解体職人」の異名を持つエド・ゲインです。女性2名を殺害した他、墓から盗んだ死体の皮膚や骨を使って家具などを製作していたという、恐るべき猟奇殺人鬼。ただ、監督本人が明確にエド・ゲインをモデルにしたと言ったわけではなく、あくまで通説のようです。ですが、特徴的にモデルと考えて差し支えないと思います。エド・ゲインから着想を得た作品やキャラクターは世の中にたくさんあります。
エド・ゲインは母親から非常に厳しく禁欲的な躾を受けていました。彼も虐待されていたんですよね。エド・ゲインの母は狂信的な宗教心を持っていて、その上かなりミサンドリーを拗らせていたそうです。あまりに異常だったり猟奇的だったりする加害者の原因が全て親や家庭環境だとは言えないかもしれませんが、強く影響することは間違いないでしょう。エド・ゲイン事件は、抑圧的すぎたり潔癖すぎる教育は子供を倒錯させ歪ませることを示す有名な事例の一つだと思います。
そして、元ネタとは関係ないのですが、レザーフェイスを象徴するチェーンソー。これ、私の世代だけなのか、若い世代でもそうなのか知りませんが、チェーンソーを使う殺人鬼って言われると真っ先に『13日の金曜日』の殺人鬼ジェイソンが思い浮かぶんですよね。でも、実際はジェイソンはチェーンソーを一度も使っていないそうです。なぜかレザーフェイスと混同されてるらしく、私もしっかり混同しているっぽいです。不思議…。
最後に
「チェーンソーダンスが印象的」とか言いましたけど、昔観た時はそうでもなかったらしく、覚えてませんでしたがね。初見時は食卓囲ってるシーンが印象的だったようです。グロくないからホラー初心者にもおすすめですが、色々なホラーを経験してから改めて見ても面白い作品だと思います。
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