『Clair Obscur: Expedition 33』プレイ感想

2025年に発売された『Clair Obscur: Expedition 33』をプレイしました。一周目クリアして、めちゃくちゃ良かったので2周目もプレイしている途中です。フランスのゲーム会社の作品で、JRPGをとてもリスペクトしてくださっているらしく、古き良きJRPGを感じさせてくれながらも、より洗練されて進化したバトルシステム・グラフィック・ワールドマップなどを堪能できました。
最初は読み方すらわからなかったタイトルですが、未だに略し方がわかりません。ナントカ33とか呼ばれているみたいですが。読み方としては「クレール・オブスキュール:エクスペディション33」です。この記事では「エクスペディション33」で呼びます。
製品情報&トレーラー
| タイトル | Clair Obscur: Expedition 33 |
|---|---|
| 開発 | Sandfall Interactive |
| 発売 | Kepler Interactive |
| 発売日 | 2025年4月24日 |
| ディレクター | Guillaume Broche |
| プロデューサー | François Meurisse |
| デザイナー | Guillaume Broche Michel Nohra |
| プログラマー | Tom Guillermin |
| アーティスト | Nicholas Maxson-Francombe |
| シナリオ | Jennifer Svedberg-Yen Guillaume Broche Victor Deleard |
| 音楽 | Lorien Testard Alice Duport-Percier (vocal) |
ネタバレなし感想
ネタバレなしで語れる部分についての感想を書いていきます。未プレイで、このゲームが気になっている方の参考になれば!
バトルについて
このゲームが気になったきっかけは、SNSでFFと比較する声をちらほら見かけたからです。「FFはこのゲームを目指すべきだった」「何でFFはこれができなかったんだ」のような感じの声ですね。ネタバレは見たくなかったのでどの部分を比較しての声なのかなどの詳細は追いませんでした。私はFFをプレイして育ったので、大好きなFFと比較されてるゲーム、気にならないわけがありません!
冒頭でも述べた通り、エクスペディション33はJRPG要素を取り入れていて、ターン制バトルを採用しています。ターン制バトルではありますが、パリィや回避などのアクション要素、フリーエイムシステムでシューティング要素を取り入れています。スキル発動の際にはQTEも求められ、反射神経やリズム感が求められます。
個人的にQTEの難易度は高くないと思いますが、パリィは苦手な人にはかなり難しいと思います。私はパリィ苦手だし正直嫌いなので、エクスペディション33を始めたばかりの時は「無理かも…」と思いました。難易度は「ストーリー(易しい)」「エクスペディショナー(普通)」「エキスパート(難しい)」の三種類あって、いつでも変更可能です。私はエクスペディショナーで始め、プロローグで挫けそうだった時にはストーリーへの変更も頭をよぎりましたが、結局一度も変更することなくエクスペディショナーでクリアできました。
慣れればパリィできるようになるというわけではなく、パリィの成功率がすごく低くてもどうにか勝てるという感じです。そして、パリィが成功した時はめちゃくちゃ気持ち良いです。パリィが成功するとカウンターが発動するのですが、全体攻撃のパリィが成功するとパーティメンバー全員でカウンター攻撃するのがすごくカッコよくて、「きもちーー!!」ってなります。下手なのでたまにしか発動できませんでしたがそれでもすごく楽しかったです。回避はパリィより簡単ですが、気持ち良くなりたいので下手でもパリィ狙ってました。
パリィ下手すぎてどうしても強敵に勝てない!って時は、ピクトスやルミナの構成(ステータス効果やパッシブスキルのこと)を工夫すると案外倒せたりします。短期決戦の火力ビルドとか組めるので、パリィ苦手でも戦闘楽しめるしクリアできるので安心して欲しいです。
スキルやカウンターの演出がカッコいいし、バトルメンバーが全員倒れて控えメンバーが出る時に「第33遠征隊の最後の戦い」って出る演出もカッコイイ。

エクスペディション33のバトルはスタイリッシュで、アクションとのバランスが取れていて、面白くて、気持ちよくなれて、それでいて難しすぎず、ターン制バトルにもまだまだ進化の可能性があるということを見せつけてくれました。
ただまあ、ライトゲーマーや古参の多いFFファンがこのパリィ主体のバトルを求めてるとはあまり思えません。近年のFFはアクションとの融合を目指してる感が強く、バトルシステムが批判されることもあるので、エクスペディション33に刺激されて面白いシステムを編み出してくれることを期待しています。
ストーリーと世界観

ストーリーは一切のネタバレを見ずにプレイするのがおすすめですが、エクスペディション33はゲーム内で用語や設定などの説明があまりありません。事前に世界観のことだけでも頭に入れておくとプロローグの部分がスムーズに理解できると思います。
簡単に世界観を説明すると、年に一度、モノリスにいるぺイントレスと呼ばれる女が目覚めて数字を描きます。描かれた数字は、「抹消」される年齢を意味していて、年々数字はひとつずつ小さくなっています。今年描かれる数字は「33」。つまり、33歳の人が全員消えてしまう。ルミエールの住人はこの抹消の悲劇を終わらせるべく、ぺイントレス討伐を使命とした遠征隊を毎年送っています。それは、二度と帰る事のない決死隊。物語は第33遠征隊の旅を描くのです。
世界観からしてダークなので、「未知の世界を冒険だ!」みたいな明るいノリではありません。謎が絡み合う重厚なストーリーで、映画を見ているような気分になります。映画化が期待できます。そして、重厚なストーリーを彩る音楽が素晴らしい。是非、印象的な音楽の中で紡がれる謎多きストーリーを体験してみてください。物悲しさがあるストーリーが好きな方や考察が好きな方にはおすすめです。
ネタバレあり感想
ここからはガッツリネタバレしていくので、未プレイの方は要注意です。
ACT 1について
私は普通にギュスターヴが主人公だと思ってました。確かに彼はACT 1の主人公でしたが。まさか永久離脱してしまうなんて!レベルアップして、みんな次々新しいスキルがアンロックできるのに、ギュスターヴだけ途中から全然アンロックできなくなっちゃって不思議に思ってましたけど、そのうち主人公覚醒イベントでもきてアンロックされるんだろうと呑気に思ってました(笑)。あのロックだらけのスキルツリーはダミーかよぉ、まんまと騙されたよぉ。
私は美男美女だらけのFF大好き人間なので、エクスペディション33のリアル路線なビジュアルはどちらかというと好みではなく、ギュスターヴのことも主人公のくせに冴えないおじさんだなと思ってました。でもマエルや仲間とのやり取りをずっと見ているとどんどん愛着が湧いてきたし、いなくなるとさみしくてさみしくて。しばらくはきっと後で帰って来るって信じてました。
崖でのシーン、私はたまたま水着を装備させていたせいで、シリアスな場面なのに台無しでしたよ。言ってよ、大事なシーンくるからちゃんとした服着せてって。こんなの視線が股間にいっちゃうよ。

私には最初ギュスターヴとルノワールとヴェルソが全員同じ顔に見えて、一人の人間(或いはクローン的な何か)の壮年期・老年期・青年期だと思ってました。ルノワールとヴェルソは父子だったので似てたのは正解でしたが、ギュスターヴもちょっと似てません…?みんな同じような髭と髪形しててさあ、ややこしいのよ。ギュスターヴが倒れてヴェルソが助けに来た時には「若いギュスターヴが来た!?」って思いました。でも、ヴェルソとギュスターヴが同じ武器を使えたりルミナポイントを継承してたりするのは、二人が全くの無関係ではないような気がしますね。
複雑なストーリー
ACT 2の最後で色々と怒涛のネタばらしのような展開が起きましたが、正直頭が混乱しました。「なるほど~~~~~!?え、どゆこと????」みたいな。全く意味不明なのではなく、わかったようであまり理解できてないという感じ。でもちゃんと面白い。落ち着いて咀嚼して、それでもよくわからないところがあったのでクリアしてから考察とかをいくつか読みました。画家と作家の対立とかわかってなかったデス。まだ謎は色々ありますけど。
情緒のない言い方をすると、夫婦喧嘩・家族喧嘩なんですよね。現実世界のデサンドル一家と、アリーン(ぺイントレス)によって創り出されたデサンドル一家の二つがあって、それぞれの目的が違うから何だか混乱してしまうことがありました。
現実のデサンドル一家も、複製されたデサンドル一家も、誰も悪くなかった。打ち滅ぼすべき悪役というのはいませんでした。息子を失ってキャンバスの世界に閉じこもるアリーンの気持ちも、家族がバラバラになるという危機感からキャンバスを破壊しようとするルノワールの気持ちも、辛すぎる現実から逃避できるキャンバスを守ろうとするマエルの気持ちも、自分の家族を守りたかったルノワール(創作)の気持ちも、創られた存在であることに苦悩し争いに疲弊するヴェルソの気持ちも、全部当たり前だよなあと。
デサンドル家に振り回されるルミエールの人たちは可哀想だけど…。ぺイントレスが消えると自分達も消えちゃうことも知らずに、むしろ自分たちを守ってくれていたぺイントレスを討伐するため毎年遠征隊出してたの、苦しすぎる。しかも、ジャーナル見ると第60遠征隊がそのことに気付いたのに、真実は届かぬまま…。
長女のクレアがかなり現実的で理性的ですよね。ちょっと冷たくすら感じました。ヴェルソとルノワールが父子ならぺイントレスは母親なんだろうとは察しがつきましたが、家族の肖像画が出た時「なんかもう一人いる!?!?」とビックリしました。クレア(創作)とシモンのこともっと詳しく教えて欲しい。シモンは強すぎて倒せなかったので攻略に頼りました。
私にはちょっと複雑でややこしいストーリーでしたが、とても面白かったです。展開の仕方や演出もドラマチックで良かった。
個性的な存在のエスキエやジェストラルのこと、最初は「なんだこれ…」って思いましたが、どんどん可愛く見えてきました。特にエスキエ、大好きです。ヴェルソとの会話が癒しすぎるし、翻訳の言葉選びもすごく可愛かった。

ヴェルソ、主人公格なのにずっと信用ならない感じが凄かったですけど、エスキエとの会話のおかげでめっちゃ好きになりました。それにヴェルソの台詞、結構ユーモアありますよね。

エンディングについて

エンディングの分岐、マエルエンドとヴェルソエンドがありますが、私はヴェルソエンドを選びました。それを見た後すぐセーブデータをロードしてマエルエンドも見ました。最初にヴェルソを選択したのは、ヴェルソでマエルを倒すということはマエルを現実に戻すことになるのだろうし、やっぱり現実世界の人間であるマエルは現実に戻るべきだと思ったからです。
ヴェルソとエスキエとモノコが三人で抱き合い、エスキエとモノコが消えてしまうシーンはめちゃくちゃ切なかったです。あそこがゲーム屈指の美しいシーンだと思います。エスキエもモノコも全部理解してて受け入れて「これでいいんだよ」というような顔で消えていって。この三人の友情が本当に尊くて好きです。シエルとルネはヴェルソを恨んでそうでしたね。裏切りだと感じたでしょう。納得していない様子で消えて行ったのは可哀想ではありました。
現実世界に戻ったマエルは、家族とお墓参り。その顔は晴れやかとまではいきませんが、前を向こうとしている感じはありました。巷で言われているように、私もこちらがグッドエンドだと感じました。ハッピーではないけど、現実を生きなければいけない家族の絆は戻ったように見えるから。
まあ、ヴェルソエンドだとこれまで冒険してきた世界も守ろうとしたルミエールの人たちも仲間も全部消えるので、虚しい感じもありますけどね。あと、アリシアが手紙に書いた希望(マエルならルノワールやクレアとは違う道を見つけるかもしれないという旨のこと)が叶えられてないように思う。マエルエンドでも叶えられてないと思うけど。あと、墓参りの遠景がモノクロにもやっていたのがちょっと気になります。しかもヴェルソのお墓の日付が12月33日と存在しない日付だったそうで。ここも現実ではない示唆なのか、ただ単に別世界だということなのか。

マエルエンドは不穏すぎます。「こんな人生は嫌だ」と言いながら消えるヴェルソ、モノクロ、不協和音、マエルの不気味な顔…。特にヴェルソの散り際の台詞は胸が痛くて痛くて、やべえエンドだと思いました。
マエルがヴェルソを描き直したってことですよね?マエルは消えたいと願っていたアリシア(創作)の願いは叶えたのに、どうしてヴェルソの願いは許さないんだろう。偽物のアリシアに用はないけど、本物ではなくても兄にはいて欲しいということでしょうか。気持ちはわかるけど、ぺイントレスによって創作されたヴェルソの家族はもう誰一人残っていないし(マエルが描き直してない限り)、こんな人生はもう嫌だってなるぐらい疲れちゃってるし、好きなピアノを弾いてても全然幸せそうではないヴェルソがあまりに可哀想でした。
マエルエンドが不穏すぎたからヴェルソエンドの方がいいというのは勿論あるのですが、やっぱり虚構と現実とでは重さの違いを感じるんですよね。ルノワール(本物)の言った「生ける屍」は冷たすぎるけど、画家が描き直せば蘇らせることができたり、不老不死にもなれるなら、それは本当に命(生物)と呼べるのか…って思ってしまう自分がいるのです。大好きなエスキエの存在を否定したくはないし、芸術に命は宿る!とも思うけども。
赤の林にいるネヴロンが「人によってつくられた心は、偽物とみなさなければならないのか」と言っています。ヴェルソも創られた存在であることに複雑な想いを抱えていました。難しい問題です。創られたものが偽物だとは思わないし、創られた存在との絆や経験は本物だし大切。だけど、選択が迫られる場面にぶち当たると現実>虚構になってしまうんですよね。冷たいかな。それに、創造物にとって画家って創造主だし、つまり神様なわけで、対等な関係ではいられない気がする。だから私はマエルエンドがバッドエンドだと感じてしまうのかも。
キャンバスを残したまま長く潜りすぎたりせずにいい距離で付き合っていけるのがベストだと思うけど、それが出来たとしても、奥で絵を描き続けてた本当のヴェルソの魂(描き続けることに疑問を抱いてた少年)は解放されないので、全員ハッピーにはなれないんですよね。どう足掻いても切ない。
ワールドマップ
最初の春の牧草地を出てワールドマップを初めて見た時、あまりの可愛さにテンション上がりました。焦点があってる部分以外がボケてるミニチュア風っぽいグラフィックがすごく可愛い上に、鮮やかな色彩や透明感溢れる水の描画が美しいワールドマップだと思います。今までプレイしたゲームの中で一番好きなワールドマップかも。それくらい可愛くて歩くのが楽しかった。

そして、この美しいワールドマップをエスキエで飛び回れたのが最高に楽しかったです。私もこれは「なんで(最近の)FFにはこれが出来なかった」とつい思っちゃいました。かつてFFと言えば飛空艇だったのに。飛空艇が手に入ってから行ける場所が広がってワクワクが止まらなかった、あの遠い昔の古き良きFF。あの気持ちが久々に蘇りました。こうやってワールドマップを自由に飛び回って新しい場所を発見するのって滅茶苦茶楽しいですよね。もう隅々まで探索したと思ったのに、取りこぼしたジャーナルとかを調べてたら見落としてた場所があってたまげました。
エスキエが乗り物という発想も面白くて好きです。ベッドや城で移動するドラクエの発想も大概ですが。潜れるようになったので海中にも冒険があるのか!と期待したらルミナカラー取れるだけだったのがちょっとしょんぼりでした。

フォトモードが欲しかったなあ~。
耳に残る美しい音楽の数々
印象的な音楽の数々は本当に素晴らしかった。ゲーム終わった後しばらく口ずさんじゃうくらい。コーラス入りの物悲しく美しい旋律が多くて。フランス語は全然何言ってるかわからなかったけど。めっちゃアリシアとかヴェルソとか言ってるように聞こえて気になりました。
公式がサウンドトラックをYouTubeに上げてくれてるの、神です。全曲ですよ。私が好きなのをいくつかご紹介します。
まずは浮遊する水で聞ける戦闘曲「Flying Waters – Goblu」です。これめっちゃ好きです。
「Gustave」も好き。ギュスターヴのテーマ曲。
ルノワール戦の「Une vie à t’aimer」は神曲ですね。
公式のサウンドトラック聞きまくってます。神曲揃いですね。やはり良いゲームは音楽が素晴らしい。白の砂漠で流れる語り?が入るBGMにはビビりましたけど。バグったかと思いました。
最後に
作品の完成度が高くて不満はほとんどなかったですね。方向音痴なのでミニマップが欲しかったのと、ルミナのセットをソロ用とかで記憶させて欲しかったくらいかな。パリィのタイミングがわかる補助機能とかがあれば苦手民にも遊びやすいかなとは思う。
あ、私は寄り道要素などを極力やり終えてからラスダンに向かうタイプなので、強くて勝てないと思ったシモンと試練のいくつかだけ残してルミエールに向かったら、道中の敵もラスボス戦もぬるすぎて秒で終わる羽目になってしまったので、そうならないように上手く誘導して欲しかったかも。
すごく評判がいいし、DLCも期待しています。謎もまだあるし、他の遠征隊とヴェルソがどんな旅をしたかも気になります。かなりやりごたえのあるボリュームでDLC出してくれないかな。作家の存在も気になるし、続編なども期待しています。
