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『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』ネタバレ感想:よくわからないという不気味さ

映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は「第二回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞した近藤亮太監督の同名短編映画を長編化した作品になります。『リング』などの数々のホラー映画監督としてお馴染みの清水崇さんが総合プロデューサーを務めています。

ジャンプスケアはなく、グロもない。CGや特殊メイクは使っていないそうです。Jホラーが得意とする静かでジメっとしたホラーが好きな方、考察系ホラーが好きな方にはおすすめの映画だと思います。ただ、すっきり謎が解けないので、そういうのが苦手な方には合わないかもしれません。

劇場入場者特典として、ホラー作家・背筋さんの短編『未必の故意』がついてきました。12ページの小さな冊子ですが、これを読んだ方がちょっと理解がしやすい…かもしれない。どうかな。これで謎が解けるわけでは全くないですけど、なんとなくちょっとわかったような気になれる…かもしれない。

作品情報&予告動画

監督近藤亮太
原案近藤亮太
脚本金子鈴幸
出演者杉田雷麟
平井亜門
森田想
藤井隆

登場人物&キャスト

兒玉敬太 (演:杉田雷麟)

13年前に地元の山で弟の日向が失踪してしまった過去を持つ青年。日向が失踪した時、敬太は一緒にいてビデオカメラを回していました。現在は失踪した人間を探すボランティア活動をしています。

天野司 (演:平井亜門)

敬太の同居人で塾講師。幽霊などが見え、霊感があるタイプです。

久住美琴 (演:森田想)

新聞記者。山で失踪した子供を敬太が発見した事件がきっかけで、敬太の過去に興味を持ち始めます。

ネタバレ感想

結局どういうこと?

本作は終盤になるまでわりとずっと静かです。だから途中ちょっと眠気に襲われたりもしました。終盤も「ぎゃああ!」と叫んじゃうようなどちゃくそに怖い展開があるわけではありません。ゾクッとする感じの恐怖。そして最後まで見終わっても「…え?結局どういうこと?」という感想でした。一緒に鑑賞した旦那も「すっきりしない!モヤモヤする!何もわからない!」と、珍しくその日一日考えてました。

日向が失踪した山ではちょくちょく失踪事件が発生していたらしく、学生たちが失踪した事件では録音テープも残されていて、敬太と日向同様、あるはずのないコンクリート造りの廃墟に足を踏み入れて失踪していました。ちょいちょい失踪事件があるわりに心霊スポットとして有名というわけでもないらしく、そんなことあるか?とちょっと疑問に感じます。地元民はその山がいわくつきの場所であることを知っている様子だし、だからこそ不自然。

宿屋の息子の話の中で、「大人たちはあの山に神様や仏様を捨てに行く」とありました。特典でもらった『未必の故意』を読むとよりわかりやすいですが、信仰が失われたりして行き場をなくした神様たちがあの山にいついているのだそう。そして、あの謎の廃墟はそんな神様たちの住処で、普段は見えないけど何かの拍子で現世に現れたら、足を踏み入れた人間が神隠しに遭ってしまうのだとか。あの山の怪異の謎は、結局これ以上のことは何も判明しません。

地元の人間はそういう場所だと認識していて、子供には山に入らないよう注意しつつ、夜な夜な何やら捨てに行っている。骨壺がたくさん捨てられていることも、地元民は知ってたんですよね。というか、彼らが捨てたのかな。わからないけど、この地元民たちがすごく不気味です。山のことが不自然に秘匿されているのって、彼らがそうしてるんですよね。昔から捨てて来た地元民があの山をそういう場所にしてしまったのでしょうか。

宿屋の息子の話もすごく不気味でしたよね?初潮が来た祖母が山に汚れた下着を捨てたら生理がなくなった話。じゃあ僕や母はどうやって生まれたの、と彼自身戸惑いを見せていましたが、わからないまま。敬太は自分の両親のことを「家族を演じてる」と表現していました。この台詞も山のことと繋がりそうで、でも私には上手く繋げられなくてモヤモヤします。血の繋がりがないってこと?とか考えましたが。なんかもう全てがフワッとしたままでよくわからないけど、とにかくあそこの地元民は敬太も含めてめっちゃ不気味でした。わからないから不気味なのです。共感も同情も何もできないですから。

司が消えた理由

私は映画を見た直後には、神隠しに遭うのが司だった理由がわかりませんでした。視聴後に特典の『未必の故意』を読み、ゆっくり考えた結果辿り着いた私の結論を書いてみます。

『未必の故意』の主人公は断れない性格でした。そして、断らないことで神様から見捨てられないだろうという信仰を持っていました。信仰と呼ぶほど大袈裟なものではありませんが。自分の断れない性格を正当化するための方便だったかもしれません。でも、主人公は最後はあの山の廃墟で「断る」という行動を取ります。つまり、信じ続けてきたものを捨てたのです。

司は敬太の横にいる日向が見えてました。最初からずっと。だから日向が死んでいると知っていました。でも、それを敬太には黙っていました。敬太は、司は霊が見えることを知っていました。そして、司が日向のことを何も言わなかったので、日向がどこかで生きているのではないかと、そんな希望を持っていたのではないでしょうか。日向が生きていると信じてたのです。でも、あの山の廃墟で司は敬太に日向が見えていたことを伝えてしまいます。敬太が信じていたことは、もう捨てざるを得なかった。それはつまり、日向のことを言わないから信じていた司のことを捨ててしまったということ。だから司が消えてしまったのかな、と思いました。可哀想、司…。

日向に何が起きたのか

日向って結局神隠しだったのか事故死だったのか何なのか。私は映画見た時、敬太が殺したのかと思いました。

敬太が日向をちょっと疎ましく思うようなシーンがありましたよね。子供ですから一時的に弟をそんな風に思うのも全然あり得るし、あの廃墟内でかくれんぼしてる時の様子は別に不穏ではなかったですけど、「うっとうしいからいなくなればいいのに」くらいに思っててもおかしくないと感じました。

だからと言って、敬太が日向を突き落として殺したはいきすぎかもしれません。日向が神隠しに遭ったのは、敬太が日向をあそこに捨てたから、の方がしっくりくるかも。「いらない」って思ってしまった敬太の気持ちが作用したんじゃないかなって。どっちにしろ、日向の死(失踪)には敬太が絡んでたんじゃないかなって思います。敬太って不気味なんですよね。だから、司も日向も敬太があそこに捨てたって考える方が怖いなって思います。最後誰もいない部屋に帰ってきて無表情で「ただいま」って言う敬太怖くないですか?

でも、青いレインコートが落ちてたシーンだけ見ると転落した事故死にも見える…。

久住が悩まされていたものは何だったのか

新聞記者の久住って、なんのために施設までついてくるキャラだったのかよくわかりません。でも、彼女に憑いてるものに対して司が何もしなくて良いと判断したってことは、悪いものじゃないということなんでしょうか。

施設に入った久住を掴んだ謎の手は、誰の手だったんでしょう?私は最初司の手なのかと思ったのですが、旦那が「もっとガッシリしてなかった?」と言っていたので、わかりません。でも、あの手は奥に行かないよう久住を引き留めたわけで、守った感じですよね。守護霊?

敬太の父親(既に他界)から彼女に電話があったのも謎ですよね。なぜ敬太の父が久住に息子のことを頼むのでしょう。しかもあのタイミングで。意味不明です。彼女が悩まされていた霊現象の全ては敬太の父の仕業なのでしょうか。あの腕も敬太の父だった?敬太父が久住の腕を掴んで奥に行かせないようにした?そして司が消えて敬太が一人になることがわかってたから久住に電話でよろしく頼んだ?

うーん、久住まわりのことはしっくりくる解釈が見つかりません。

最後に

わからないことはまだまだあります。敬太と失踪学生が発した「2階が怖い?」という台詞がなぜリンクしていたのか。敬太の家族のこともいまいち詳細には語られませんでした。なぜ父親の遺骨は受け取り拒否されたのか。それこそ山に捨てないのはなぜなのか。神様の住処と言われる場所が何であんなコンクリート造りの施設みたいなところなのか。宿屋の息子は消えたのか。

ぽつりぽつりと謎が解明されそうな要素が出て来るのに、結局最後までそれらが上手く繋がらなくて「うーん、わからん!」で終わるのがなんとも怖い映画でした。終わった後もあれこれ考えて、でもわからないから不気味なのです。これが逆に、最後に全ての謎が解けて誰でも理解できるような内容だったら、あまり盛り上がりどころのない映画だったなという感想になりそう。

藤井隆以外の出演者の方々を私はほとんど存じ上げず、期待の新人の皆さまのようですが、淡々とした大袈裟ではない演技が良い感じでしたね。ちょっと素人っぽい台詞読みが逆にリアルに感じました。

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