『犬鳴村』ネタバレ感想:有名な都市伝説を題材にしたJホラー!期待していただけに…
(C)2020「犬鳴村」製作委員会
福岡県に実在する最恐心霊スポットとして有名な旧犬鳴トンネル。その近くには政府の統治が及ばない集落「犬鳴村」が存在するという有名な都市伝説を題材にしたホラー映画を『呪怨』の清水崇監督が制作したのを知ってから、すごく楽しみに待っていました!が、ううーーーん、残念。イマイチでしたね。めっちゃわたしの好きなタイプの都市伝説なので期待していただけにガッカリでした。犬鳴村の都市伝説って、若い世代の子は知ってるかわからないですけど、何かで一時期有名になりましたよね?わたしは何で知ったんだろう?アンビリーバボーかなって思ったんですけど、調べたら『杉沢村伝説』とごっちゃになってました。これも地図から消された村とかいう二つ名がついてるし、村へ向かう道路に 「ここから先へ立ち入る者 命の保証はない」という看板があるっていう都市伝説ですね。似てます!
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本ページの情報は2022年7月時点のものです。現在は配信終了している場合もありますので、最新の配信状況は各動画配信サービスの公式サイトにてご確認ください。
あらすじ
臨床心理士の森田奏の兄・悠真と恋人の明菜は、犬鳴村の動画を撮るために旧犬鳴トンネルを訪れる。深夜2時に鳴るという電話ボックスで不思議な電話を取り、トンネルの中を進んでいくと、出口には「この先、日本国憲法通用せず」の看板が。その先を進むと不気味な廃村にたどり着く。そこで恐ろしい目に遭ったふたりは何とか村から逃げ出すが、翌日明菜の様子がおかしくなってしまった。昔から見えないものを見ていたという奏に悠真が相談するが…。
作品情報&予告動画
原題 | 犬鳴村 |
---|---|
監督 | 清水崇 |
脚本 | 保坂大輔 清水崇 |
音楽 | 海田庄吾 滝澤俊輔 |
撮影 | 福本淳 |
編集 | 鈴木理 |
出演者 | 三吉彩花 |
ネタバレ感想
序盤の明菜と悠真が動画撮影しに村に迷い込むところはゾクゾクしていい感じでした。トンネルの中のじめっとした嫌な空気感とか、一瞬何か映った?みたいな演出とか良かったです。ただ、ピークが序盤すぎるというか…明菜が死亡するくらいまではいい感じだったのですが、その後はどんどん盛り下がっていって残念でした。犬鳴だからって安直に犬を絡めなくても良かったんじゃないでしょうかね…。
溺死する人々
明菜ちゃん、よくあんなところのトイレ使えますよね(笑)。怖いのは勿論、絶対汚いでしょ…。夜中の2時に鳴った公衆電話を取り、真っ暗なトンネルを抜けて廃れた村の絶対に汚いトイレでおしっこするなんて一体どれだけ強心臓なんでしょう。そんな強者明菜でしたが、村から帰ってから様子がおかしくなり、謎の歌を歌って不気味な絵を描きだすの、王道的ですが好きな流れです。「犬が西向きゃ尾は東、犬が白けりゃ尾も白い」ってのは、一体何なんでしょう。笑うところだった?鉄塔から落ちてくるシーンは「絶対落ちてくるぞ」ってわかっててもビクッとなりましたが、落ちた後の「ごぼっ」って演出が余計かな~。電話ボックスで溺死した人たちも「ごぼっ」ってしてたけど、あれいらないと思うんですけどね。死がいかにも演出っぽく見えるというか。まあ、明菜は飛び降りたのに溺死なので、「溺死」を暗示したかったんだとは思うんですけど。おじいちゃん先生が亡くなる時も、言葉を紡ぎながらごぼごぼと溺れていく感じでしたもんね。あれは、死んだ後にごぼっと水吐くより異常な死に様に映ってよかったです。
設定は悪くないのに怖くない問題
悠真と康太は犬鳴トンネルで行方不明となり、高島ママは明菜同様におかしくなります。制止する警官をものすごいパワーで吹っ飛ばし、高嶋パパに噛みついてまるで犬のように舌なめずりをし、床に置かれたご飯を貪り食う高島ママ。犬化した高島ママの凄まじさよ。ギリ笑いを堪えることができるラインを攻めてきます。可笑しさと気味悪さの絶妙なラインです。崩壊していく家族を救うために奏は犬鳴村について調べます。幼少の頃からつきまとっていた青年の霊の協力もあり、下記の事実が判明します。
- 犬鳴村はダムの底に沈んだ
- 犬鳴村では山犬を捌いて食していた
- 奏の祖母は犬鳴村の人間で、奏の父(高嶋パパ)の先祖は犬鳴村をダムに沈めた電力会社側の人間だった
- 電力会社の人間はダム建設のため女達を監禁し「犬鳴村の女は犬と交わっている」と噂を流した
怖くなる要素は多分にあるように思うのですが、序盤のゾクゾク感はどこへやら、なんだかどんどん怖さは無くなってしまいます。
肝心の霊があまり怖くないんですよね。ぼや~っとしたエフェクトがかかってて、よくよく顔見てもそんなに怖くないのです。しかも何かすんごい動きが速くて可笑しいんですよね。都市伝説の内容に「村人は異常に足が速い」というのがあるので、それに則ってるのでしょうか。電話ボックスに群がる絵面もなんか滑稽に見えてしまって。車のフロントガラスに突然落ちてきた明菜にはビックリしましたが。あれは完全に油断してました。
また、奏が最終的に犬鳴村に乗り込む時、「ひえ~独りで行くの?勇気ある!こわ~」って思ったのに、何とすぐさま幽霊青年がお供してくれちゃって心許なさが完全になくなってしまいました。幽霊が助けてくれるなんて、人間が同行してくれるより頼もしい感があるじゃないですか…。しかも犬鳴村ではたいした体験がないんですよね。幽霊青年が目的地へ導いてくれますから。これ、ホラー映画としてはやってはいけない事ではないでしょうか…。
せっかく血筋の設定や犬鳴村と電力会社の確執があるのに、犬鳴の霊に殺される条件と言うか規則性がはっきりわからないのもモヤっとします。悠真は犬鳴の血が入ってるから最初助かったのかな~と思いきや、摩耶に殺されますしね。あなたの曾孫よ…。高嶋パパが殺されるならわかりますけど。おじいちゃん先生や悠真の友人たちや明菜が殺された理由もはっきりしません。明菜が殺されたのは村に踏み入ってしまったからでしょうか?妊娠していた設定がどう活きてるのかもよくわからない…。奏たちの村(?)で溺死が頻発してたのは、犬鳴の呪いということですか?おじいちゃん先生と高嶋パパが「次は私たちか…」みたいな会話していたし、電力会社側の血筋が狙われてる?じゃあ友人たちが殺された理由は?うーん。そして犬化するのは女性だけなんでしょうかね。うまく謎が繋がらないので面白みに欠けます。
遼太郎くんの実母
奏が霊現象に遭遇するもうひとつのパートが病院です。奏の患者である遼太郎くんは、実の母親が出産で亡くなってしまい、たまたま同じ病院で死産してしまった夫婦の養子になりました。しかし養母である奥菜恵は遼太郎くんが別の女性の子供であることを知りません。父親と医者が内密に遼太郎くんを養子にしたんですって。えっ、そんなことあるの!?って思わずにいられない設定です。遼太郎くんは亡くなった実母の霊と交流していて、幽霊を見ることができる奏もそれを感じ取ってはいるものの直視するのを拒否している感じです。視界に入り込んでくる黒い存在にはドキドキしますね。「お母さん怖くないよ」という遼太郎くんに促されて、横に立つ実母を直視してしまったシーンはゾワっとしました。しかし、彼らが犬鳴村とどう関係してるのか最後の方にならないとよくわかりません。結局、実母が犬鳴村の人間の血筋ということなんでしょうね。
摩耶(犬女)と遼太郎くんの実母は同じ境遇ってことですね。ふたりともお産で亡くなっていて、子供を他に取られてしまったと。まーしかし、病院パートはいらないような気もする。これ省いてもっと犬鳴村での恐怖シーンを増やした方がよかったんじゃ…。
想像を超えてくる犬女と消化不良を起こすラスト
監禁された摩耶は赤子を産んで絶命し、犬女へと変貌します。一瞬、呪怨みたいな「あ゛あ゛あ゛あ゛」って声出すから、伽椰子と繋がるのかと思いましたよ!奪われた赤子を取り戻すため物凄い速さでトンネルにいた奏たちに追いつく犬女。そして始まる奇妙でスタイリッシュで滑稽な脚上げパフォーマンス。なんですかこれ?これは完全に笑ってしまうラインですよ。お顔には気持ち悪さがあるんですけどね。こんな珍妙な動きをする犬女が出てくるなんて、誰が想像できましょう。しかも、たいして活躍しない。男二人に押さえつけられてすぐおしまいですからね。もっと逃げ惑う攻防みたいなのあってもよかったんじゃないでしょうか。奏たちはずっと棒立ちですしね。変な動き見てないで逃げなさいよ…。だいたい、奏たちは摩耶の子供を助けようとしてくれてるのになぜ攻撃してくるのでしょう。
奏たちが助けた摩耶の赤子こそが奏たちの祖母という、過去と未来が繋がる設定は結構好きです。幽霊青年は「自分と摩耶の子」と言っていましたけど、摩耶と犬の子っていう説も映画としては匂わせてはいるように思います。おぞましいですね。悠真が犠牲になったのに、摩耶たちとお祖母ちゃんが一緒にお墓に入れてよかったね☆な空気があって、ちょっとお兄ちゃんが可哀想です。
そして奏が牙を剥いて口を拭うラストとなるわけですが、えー?なぜ奏が犬化してるの?高島ママは病院から車椅子で出てきてて、無事に正常に戻った様子でしたよね。車椅子に乗るような怪我とか衰弱とかあったっけ?という疑問はありますけど。それでなぜ奏が犬化?んんんん?と、消化不良で終わるのですが、エンドロールに流れてくる実際の犬鳴峠からの犬鳴トンネルの映像はとても不気味で恐ろしい、良いエンドロールだと思います。このゾクゾクを本編で存分に味わいたかったんだよぉ~って気持ちになります。序盤は良いゾクゾクだったんですけどね…。こんな山深いところに現れるトンネル、怖すぎですね。わたしはホラー映画は好きですが、こんな場所実際に行くのは絶対に無理です。
臭いものにはふた
謎の歌のタイトルはエンドロールで判明しますが「ふたしちゃろ」です。高嶋パパの高島ママに対する嫌悪感や恐怖から垣間見えますが、犬鳴村は犬を食していた被差別部落です。そういう不都合で気味の悪い集団を虐げて、ダムごと沈めてなかったことにしてしまいました。
幼少の頃から人には見えないものを見ていた奏に、父も兄もそれに気づいていながら向き合った様子はありません。しかし、事が起きてからは「お前変なもの見えるんだろ」と都合よく利用しようとしたり、あるいは嫌悪感をうっすらと発してきます。
奏自身も、見えているのに視線をすぐそらして見えないフリをしていましたね。
そういう、「見て見ぬフリをする」「臭いものにはふたをする」ということに対する批判を込めてるのかな~とは思うのですが、残念ながらいまいち伝わってきません。最も差別的な態度を露わにしていた高嶋パパが特に何の罰も受けてないのがねえ…。実際の犬鳴トンネルもブロックで塞がれていて、まるでふたをしているみたいですね。
犬鳴村の都市伝説について
犬鳴村の都市伝説について共有しておこうと思います。頭に入れてから鑑賞した方が楽しめるかもしれません!
犬鳴村の都市伝説
犬鳴村とは、旧犬鳴トンネルの近くにあるとされる都市伝説上の村です。都市伝説の内容は概ね以下の内容になるようです。
- トンネルの前に「白のセダンは迂回してください」という看板が立てられている。
- 日本の行政記録や地図から完全に抹消されている。
- 村の入り口に「この先、日本国憲法は適用しません」という看板がある。
- 江戸時代以前より、激しい差別を受けてきたため、村人は外部との交流を一切拒み、自給自足の生活をしている。近親交配が続いているとされる場合もある。
- 入り口から少し進んだところに広場があり、ボロボロのセダンが置いてある。またその先にある小屋には、骸が山積みにされている。
- 旧道の犬鳴トンネルには柵があり、乗り越えたところに紐と缶の仕掛けが施されていて、引っ掛かると大きな音が鳴り、斧を持った村人が駆けつける。「村人は異常に足が速い」と続く場合もある。
- 全てのメーカーの携帯電話が「圏外」となり使用不能となる。また近くのコンビニエンスストアにある公衆電話は警察に通じない。
- 若いカップルが面白半分で犬鳴村に入り、惨殺された。
引用元:犬鳴村伝説 -Wikipedia
もちろんこれらはただの都市伝説で事実ではありません。映画もかなり都市伝説を踏まえているように思いますね。最初の「白のセダンは迂回してください」というのは、最後の「惨殺された若いカップル」が乗っていたのが白のセダンだったことからきているようで、村の入り口には見せしめのようにボロボロの白いセダンが置き去りにされているという伝説があります。
さて、犬鳴村の元になったのではないかと考えられるのが、福岡県宮若市の犬鳴という場所にかつて実在した犬鳴谷村という村のようです。この村は周辺の村と合併をして名称が変わったりしています。合併後の集落の中心地は犬鳴ダムの建設によって湖底に沈んでますが、元居住者は周囲の町へ移転しています。これが犬鳴村じゃん!って思っちゃいそうですが、都市伝説の犬鳴村はこの実在した旧犬鳴谷村とは全く関係していません。
実在する犬鳴トンネル
犬鳴村に通ずる犬鳴トンネル、こちらは実在する最恐心霊スポットです。新旧あるのですが、旧のほうですね。エンドロールでも映りましたがコンクリートブロックで封鎖されていて利用はできません。トンネルに続く道も柵で封鎖されていましたね。この旧犬鳴トンネルでは1988年に凄惨な殺人事件が起きています。少年グループが車を貸してくれなかった20歳の青年をトンネル内で手足を縛ってガソリンをかけ、焼き殺したというのです。また、交通の難所であるため事故も多いなど、事件や事故が重なったために心霊スポットとして定着し、都市伝説まで生まれたのではないでしょうか。トンネルは崩落の危険性があるらしく、トンネルまでの道も危険なので行かないように。旧道入り口には監視カメラが設置されて、許可なく立ち入れば罰せられるようです。
最後に
題材が好みでとっても期待していただけに、本当に残念としか言いようがないです。Jホラー、また盛り上がってほしいんですけどね。数年前の『残穢』の方が面白かったです。あれくらい、謎を解いてく過程が面白かったら良かったのに。『残穢』は映画がよかったので、小野不由美さん原作の小説も買って読みました。「家に置いておくのが嫌」と言われる不気味さがある本です。
『犬鳴村』あまり怖くない、と言いつつ映画館から帰って家でお風呂入る時とかちょっと怖かったですね。ホラー映画見た後はだいたいそうなりますが。
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