Netflix『殺人鬼との対談 ジョン・ウェイン・ゲイシーの場合』ネタバレ感想:キラークラウンの未公開音声テープ
Netflixのリミテッドシリーズ『殺人鬼との対談 ジョン・ウェイン・ゲイシーの場合』全3話を視聴しました。ドキュメンタリー作品ですね。以前Netflixのドキュメンタリーを見た時、字幕が下と左右に出たりして追うのが大変だったので、吹き替えで見ようと思ったのですが、残念ながら日本語吹き替えはありませんでした…。相変わらず証言者が登場すると一時停止しないと字幕読み切れない程大変でしたが、やっぱりドキュメンタリー作品は面白いですね。
原題は『Conversations With a Killer. The John Wayne Gacy Tapes』になります。
予告動画
ネタバレ感想
全米が震撼したシリアルキラー ジョン・ウェイン・ゲイシー
皆さんはジョン・ウェイン・ゲイシーをご存知でしょうか。1972年から1978年にかけて、33名もの青少年に性的暴行を加え殺害した連続殺人犯です。スティーブン・キング原作の『IT』に出てくるペニーワイズのモデルだと言われています。ゲーム『Dead by Daylight』に出てくる殺人鬼クラウンのモデルでもあるそうです。
ジョン・ゲイシーは表向きにはとても成功した地位のある人物で、建設会社を経営し、地元の青年会議所の有力会員でもあり、慈善活動も行っている名士でした。民主党メンバーでもあった彼は、当時のカーター大統領の妻と握手している写真まであるほどです。そんな人間が裏では少年を自宅に招き入れて性的暴行に及んだ末に殺害し、床下に埋めていたのです。33名の犠牲者の中には未だに氏名が特定できていない方もいらっしゃいます。ジョンの自宅は酷い腐敗臭に満ち、遺体の発掘は有毒ガスが充満する中での地獄の作業だったそうです。
ジョン・ゲイシーはピエロに扮して子供たちを楽しませることが多かったため、キラークラウンと呼ばれています。ペニーワイズやクラウンのモデルだと言われている所以ですね。決して、ピエロの格好で殺しまわっていたわけではありません。
ジョン・ゲイシーは同性愛者でしたが、当時は今よりも同性愛者への偏見が強く差別の対象でした。また、彼の父親はジョンに男らしさを要求しましたが、ジョンが病弱で期待外れだったことから苛烈な虐待を加えるようになり、オカマと罵るなど、酷い仕打ちを与えていたのです。そのような背景から、ジョンは自身をバイセクシュアルだとして、ゲイの男性に対して憎悪や侮蔑のような情を抱いていました。青少年に性的欲望をぶつけているにもかかわらず、自身が同性愛者であることを認めずに歪んだ感情を抱えていた心理は正直理解が難しいです。しかし、異常者扱いして差別を許していた社会や男らしさを求める父親からの虐待が彼の歪みを生み出したのだろうと思うと、なんとも哀れでしたね。
ジョン・ゲイシーは虐待を受けていたにも関わらず、父親を愛していました。父親の期待に応えたいがために相当な努力をし、それに見合うだけの地位や幸福や人望を手に入れたにも関わらず、彼の心は満たされず怒りや不満も収まらなかったのです。人間の心の一番大事な部分って、地位や財産では埋められないのでしょうかね。もしも、同性愛者への理解が今程度にはあったなら、ジョン・ゲイシーはこのおぞましい犯行をせずにいられたのでしょうか。それとも、彼の父親による虐待がある限り、彼の歪みは避けられないものだったんでしょうか。
未公開テープ
このドキュメンタリー作品は、ジョン・ゲイシーが弁護団との間で交わした60時間に及ぶ録音テープを基に、事件を紐解いていきます。ジョンの弁護人や警察・検察、被害者の友人・家族から被害者ご自身まで登場しました。ジョンの誘いに乗って自宅に行ったけど、運よく殺害されずに済んだ方もいらっしゃったのですね。ほんともう、殺されずに済んだのは運としか言いようがない感じでした。
テープを聞けばわかりますが、ジョンは事件について全く反省してませんでした。罪を逃れようと多重人格のふりをしたり、遺族感情を逆撫でするような挑発的なことを言ったり、自分が犯したことを理解していないようなことを口にしています。虐待サバイバーであることや当時の社会的価値観を最大限汲み取ったとしても、一片の同情もできない態度です。被害者の中にはいわゆる男娼もいらっしゃるのですが、ジョンは「自分がお金で買ったモノだから壊しても構わない」というような趣旨の発言もしていました。
やはり、父親が嫌悪していた存在(同性愛者)になってしまったということが、これほどまでに彼を狂わせてしまったのでしょうね。親に強烈に否定されている存在になってしまうことって、辛いですよ。凄惨な事件や猟奇的な事件を起こす犯人って、だいたい家庭環境に深刻な問題が多いですから。肉体的な暴力がダメなのは勿論ですが、抑圧的で厳しすぎる教育(ゲーム禁止とかね)も悪い影響しかないと、私は思っています。
最後に
33人もの男の子たちが犠牲になるまで事件が発覚しなかったことも恐ろしいです。若者の家出として考えられて、あまり捜査されてなかったそうです。
また、ソドミー法なるものがあったと初めて知り、驚きました。「自然に反する性行動」を行うと、刑事罰が科せられたのです。つまり同性間での性交が犯罪行為だったわけです。現代の感覚すると信じられないですね。